ザ・ブルーハーツのアナログ・レコード完全ガイド:希少盤から復刻盤まで

1985年に結成された伝説的パンク・バンドTHE BLUE HEARTS(ザ・ブルーハーツ)は、日本のパンク・ロックシーンを牽引し、多くの名曲と名盤を生み出しました。インディーズ時代にはライブ会場限定のソノシート(フレキシブルディスク)『1985』など貴重なレコードを制作し、1987年のメジャーデビュー以降は1stアルバム『The Blue Hearts』からラストアルバム『PAN』まで、計8枚のオリジナル・アルバムを発表しています。特に3rdアルバム『TRAIN-TRAIN』はオリコン週間3位を記録し、「TRAIN-TRAIN」「青空」などの代表曲を収録した人気作となりました。ブルーハーツのアナログ盤には初回プレス限定の特殊パッケージやレア盤が多く存在し、近年では復刻盤のリリースも相次いでいます。本稿では、希少盤(初回プレス、限定シングル、非売品プロモ盤など)から復刻盤(再発盤、重量盤、カラーヴァイナル仕様など)まで、ブルーハーツのアナログ・レコードを網羅的に解説します。代表的アルバムの初回盤の特徴やプレミア価格のついたアイテム、公式復刻盤のリリース歴と現状の流通状況、そしてファン・コレクター目線での楽しみ方や選び方のコツについて、見出しを追って紹介していきましょう。

インディーズ期の希少レコード

メジャーデビュー前のインディーズ時代、ブルーハーツはごく限られた枚数のレコードを自主制作し、ライブ会場などで配布・販売していました。その代表格が**ソノシート『1985』**です。1985年12月24日に東京・都立家政スーパーロフトで開催されたクリスマスライブで、約200枚限定で無料配布された7インチのフレキシブルディスクが『1985』でした。このソノシートには当時ドラマーだったエンジニア英竜介が参加しており、バンド初期の音源として非常に貴重なアイテムです。片面録音・45回転の仕様で生産数もごく少なかったため、現在では中古市場で高額取引される伝説的レコードとなっています。

また、インディーズ期には自主レーベルから以下の7インチ・シングル盤を限定プレスで発表しています。

  • 『人にやさしく / ハンマー(48億のブルース)』 – 1987年2月、自主制作シングル。ライブ定番曲「人にやさしく」を収録したブルーハーツ初期の代表的ナンバー。
  • 『ブルーハーツのテーマ / チェルノブイリ / シャララ』 – インディーズ時代のシングルで、DIY精神あふれるジャケットデザインが印象的。収録曲「チェルノブイリ」は反核を題材にした社会的メッセージソング。
  • 『リンダリンダ / 僕はここに立っているよ』 – 後にメジャーデビュー曲となる「リンダリンダ」のインディーズ盤。パンク・アンセムとして今なお愛される名曲で、クラブヒットにもなりました。

これらインディーズ盤は主にライブ会場で手売り・配布されたため流通数が少なく、現在では入手困難な超希少盤として知られます。メジャーデビュー後にリリースされた公式シングルとは一線を画す手作り感あふれるジャケットや音源は、当時の熱気をそのまま封じ込めたコレクター垂涎のアイテムです。状態の良いオリジナル盤は市場で高値で取引されることが多く、特に未開封品や完品(歌詞カードやインサート付属)はプレミア価格が付きやすい傾向にあります。

メジャーデビュー後のアルバムLP初回盤

1987年にメジャーデビューを果たしたブルーハーツは、以降1995年の解散までに8枚のスタジオアルバムを発表しました。そのうち1980年代にリリースされたアルバム(1st~3rd)は当時アナログLP盤でも発売されており、初回プレス盤にはレコードならではの特徴的な仕様が見られます。ここでは代表的なアルバムの初回盤アナログ・レコードについて、その仕様やデザイン上のトピックを解説します。

1stアルバム『The Blue Hearts』(1987年)

メジャーデビューアルバム『The Blue Hearts』は1987年5月21日にメルダック(Meldac)レーベルからリリースされました。全12曲を収録したセルフプロデュース作品で、「リンダリンダ」「終わらない歌」など今なお色褪せない名曲がずらりと並んでいます。ジャケットにはメンバー4人のモノクロ写真が大胆に配置され、一目でバンドの熱量が伝わるデザインです。オリジナル初回盤LPは厚手のダンボール紙スリーブ仕様となっており、耐久性のあるざらついた質感のジャケットが特徴でした。また初回盤には**「ブルーハーツ」オリジナルの紙製ステンシル(型抜きシート)**が付属しており、ファンには嬉しいおまけとなっていました。このステンシルは未使用のまま現存していれば貴重度がさらに増し、コレクター間では評価が高いです。初回盤のレーベル面はメルダック独特のオレンジ色箔押しラベルが使用されており、その意匠からも当時の雰囲気を感じ取ることができます。

2ndアルバム『YOUNG AND PRETTY』(1987年)

2枚目のアルバム『YOUNG AND PRETTY』は、1stの勢いを受け継ぎつつポップな要素を強化した作品で、1987年11月21日に発売されました。ジャケットカバーには珍しくバンドメンバー自身が登場しており、躍動感あふれる写真とカラフルなタイトルロゴが印象的です。初回プレスのLP盤では1stと同じメルダックから発売され、レーベル面にはメルダックのオレンジ色箔押しラベルが採用されました。このラベルは光の角度で浮かび上がるような箔プリントが施され、高級感のある仕上がりです。収録曲には「チェルノブイリ」「キスしてほしい」などライブで盛り上がるナンバーが含まれ、アルバム全体でバンドの勢いと多彩な魅力を示しています。2ndアルバムの初回盤LPも現在では数が少なくなっており、中古市場では状態によって数千円~1万円以上で取引されることがあります。

3rdアルバム『TRAIN-TRAIN』(1988年)

3rdアルバム『TRAIN-TRAIN』は1988年11月23日にリリースされ、ブルーハーツ最大のヒット作となりました。表題曲「TRAIN-TRAIN」や名バラード「青空」などのシングル曲を収録し、オリコン週間チャートで3位を獲得した人気アルバムです。ジャケットデザインはバンド名「THE BLUE HEARTS」のロゴを全面に配し、スピード感と勢いを感じさせるビジュアルに仕上がっています。初回盤アナログLPでは通常のブラックビニール盤のほかに、限定ピクチャー・ディスク仕様も存在しました。ピクチャーディスク版はレコード盤自体にジャケットアートがプリントされたコレクターズアイテムで、生産数が限られていたため現在では非常に希少です。ピクチャー盤は音質面では通常盤に若干劣ることもありますが、その視覚的インパクトとコレクション性から高値で取引される傾向にあります。3rdアルバムの成功により、ブルーハーツは名実ともにトップバンドの仲間入りを果たし、このレコードも80年代ジャパニーズ・ロックを代表する一枚として語り継がれています。

4thアルバム『BUST WASTE HIP』(1990年)

1990年9月10日に発売された4thアルバム『BUST WASTE HIP』(バスト・ウエスト・ヒップ)は、ブルーハーツが大手レーベル(ワーナー/イーストウエスト・ジャパン)に移籍後初めてリリースした作品です。シングル曲「情熱の薔薇」「首つり台から」を収録し、バンドにとって初のオリコンチャート1位を獲得した記念碑的アルバムでもあります。サウンド面ではパンク一辺倒だった初期から幅を広げ、新たな音楽的アプローチ(ブルースやロックンロール的要素の導入)が見られる転換期の作品となりました。ジャケットはメンバー4人のイラストがポップアート風に描かれたユニークなデザインで、タイトルの語感同様に遊び心があります。初回版(初回プレス)のLPには特典として折り畳みポスターが封入されており、当時のファンはこれを部屋に貼って熱狂したものです。もっとも、1990年当時は既にCDが主流となりつつあったため、このアルバムのアナログ盤は流通数が限られていました。長らくオリジナルLPは入手困難でしたが、後述する2017年の復刻再発によりアナログ盤で蘇り、再び高い注目を集めています。

5thアルバム『HIGH KICKS』(1991年)

5thアルバム『HIGH KICKS』は1991年12月21日にリリースされ、ブルーハーツにとって極めて重要な作品となりました。収録曲「TOO MUCH PAIN」ではインディーズ時代からのレパートリーが初めて正式音源化されるなど、新旧の魅力が詰まったアルバムです。この作品はバンド初のオリコンチャート1位を飾ったとも言われ(※実際には当時の週間最高位は3位でしたが、それだけ人気と話題性が高かったことを示しています)、ブルーハーツの知名度を決定的なものにしました。初回生産のLPレコードは、なんとジャケットサイズが通常の12インチではなく7インチ・シングル風の特殊サイズで作られました。LP盤でありながらジャケットがシングルレコードのようなコンパクト仕様というユニークなデザインで、コレクター心をくすぐる作りになっています。曲順の都合で2枚組LP(片面3曲ずつ収録)となっており、音質面でも余裕のあるカッティングが施されていました(重量盤仕様)※。結果として『HIGH KICKS』のオリジナルLPは非常に珍しい存在となり、中古市場では高額取引されることがあります。なお、このアルバムも2017年に初めて公式復刻アナログ盤が発売されており、オリジナルを手に入れられなかったファンにも再び門戸が開かれました。

(※備考:当時のLPが重量盤(180g)であったかは定かではありませんが、近年の復刻盤では音質向上のため重量盤が採用されるケースが多いです。)

6th以降のアルバムについて

ブルーハーツの6thアルバム『STICK OUT』(1993年)、7thアルバム『DUG OUT』(1993年)、8thアルバム『PAN』(1995年)は、いずれもCD全盛期に発売されたため当時はアナログ盤が製造されませんでした。ファンの間では長らく「幻のアナログ盤」とされてきましたが、2017年以降の公式プロジェクトによって初めてLP化が実現しています。この復刻については次章で詳述します。

復刻盤のリリース歴と現行の流通状況

近年、アナログ・レコードの復権ブームも追い風となり、ブルーハーツのオリジナルアルバムやシングルが公式復刻盤として続々とリリースされています。特に2017年7月19日には、結成30周年を記念して全スタジオ・アルバム8作品のアナログ盤一挙再発が行われ、大きな話題となりました。この復刻プロジェクトでは、4th『BUST WASTE HIP』以降の5作品(4th~8th)は今回が初のアナログレコード化となり、長年LPで聴けなかった後期アルバムが晴れてレコードで楽しめるようになったのです。また同日にはギター真島昌利(マーシー)のソロアルバム2作品(『夏のぬけがら』『Happy Songs』)も初アナログ化され、ファン待望のラインナップとなりました。

復刻盤の仕様にも注目です。各作品ともオリジナル発売時のデザインや特典を可能な限り再現しており、たとえば6th『STICK OUT』の復刻LPでは初回限定CD版に付属した白い紙ケース(凸マーク入り)がアナログ用ジャケットとして復刻されています。続く7th『DUG OUT』でも初回限定CD版の青い紙ケース(凹マーク入り)が再現され、2作品で対になる凸凹の意匠が楽しめるよう工夫されています。8th『PAN』についても初回限定盤のA式ダブルジャケット(見開きジャケット)が忠実に復刻されており、CD時代の作品ながらLPサイズで迫力あるアートワークを堪能できます。

肝心の音質面も、最新リマスター音源をもとにした高品質カッティングが施されています。ワーナー期の復刻盤ではJVCケンウッドの名匠・小鐵徹氏がカッティングを担当し、オリジナルマスターテープの魅力を余すところなくアナログ盤に刻み込んでいます。重量盤仕様のしっかりとしたプレスにより、低音から高音までクリアで迫力のある再生音が得られると好評です。デジタル世代に制作された作品がアナログで甦ることで、新たな質感や奥行きが加わり、古くからのファンも新鮮な体験ができるでしょう。

復刻盤の入手難易度ですが、初回生産限定という性格上新品は発売直後に完売してしまうケースが多くなっています。例えば2017年の再発LPも各タイトル限定数で、市場在庫は少なめでした。そのため現在新品で手に入れるのは難しく、主に中古レコード店やネットオークション、フリマアプリで探す形になります。ただし再発から年数が浅いため、中古でも比較的良好なコンディションで出回ることが多く、価格もオリジナル盤に比べれば手の届きやすい場合があります。一方、EP(シングル)盤の復刻も見逃せません。2017年12月にはアナログEP盤17枚組ボックス・セットが発売され、大きな反響を呼びました。このBOXには前述の幻のソノシート『1985』からメジャー期シングルまでを網羅する内容で、初EP化となる曲も多数含まれています。未発表写真満載の豪華フォトブックやEP盤用アダプター、限定Tシャツ応募券など特典も充実しており、ブルーハーツのシングルコレクション決定版としてファン垂涎のアイテムとなりました。こちらも数量限定生産ゆえに現在は入手困難ですが、中古市場では高額ながら取引され続けています。

現状、レコードショップ店頭や大手通販サイトで新品として常時流通しているブルーハーツのアナログ盤は多くありません。しかし中古市場は非常に活発で、専門店やネット上で常に何らかのタイトルを見つけることができます。リリースから年月が経ったオリジナル盤のみならず、比較的新しい復刻盤であっても限定数ゆえに発売直後からプレミア価格が付く傾向が続いています。レコード人気の高まりもあり、ブルーハーツのアナログ盤は今なお根強い需要があると言えるでしょう。

コレクター市場と価値:楽しみ方・選び方のコツ

ブルーハーツのアナログ・レコードは、音楽的価値はもちろんのことコレクターズアイテムとしての側面も非常に強いです。まず、オリジナル盤の希少性についてはこれまで述べた通りです。初回プレスのLPは生産数が限られていたため国内外で高値で取引されており、状態が良いものや付属品完備のものはさらにプレミアが付きます。例えば1stアルバムの初回盤(段ボールジャケット+ステンシル付)や、3rd『TRAIN-TRAIN』のピクチャーディスク仕様は、中古市場で常に高い需要があり数万円単位の値が付くケースもあります。また、限定仕様として近年人気なのがカラーヴァイナル盤です。ブルーハーツ公式では多くありませんが、海外盤や企画盤でカラーレコードが存在する場合、視覚的な美しさと限定性から希少価値が高まります。加えて、前述のピクチャーディスクや変形ジャケットなどもユニークなコレクターズアイテムとして評価されています。

忘れてはならないのが非売品のプロモーション盤です。レコード店やラジオ局向けに配布された見本盤や宣伝用レコードが存在し、一般販売されなかったこれらのアイテムは現存数も少ないためマニア垂涎です。例えば「人にやさしく」のプロモーション用7インチシングル盤(非売品EP)などが確認されており、オークションサイトでは高額で取引されることがあります。ジャケットに「見本盤」表記があったり、レーベルにプロモ専用の刻印が入っているものなど、通常盤との違いを探すのもコレクターには楽しみのひとつでしょう。

一方で、海外盤の存在も見逃せません。ブルーハーツは海外でも評価されており、アメリカで限定リリースされたLPコンピレーション『Blast Off!』はその代表例です。現地でのプレス数が少なく入手困難なため、海外のパンク・コレクターからも注目されるレア盤となっており、中古市場で高値が付いています。帯やインサートの違いなど、日本盤との比較を楽しむのもマニアックな魅力でしょう。

では、ファンやコレクターはどのようにブルーハーツのレコードを楽しみ、選べば良いのでしょうか。まず、「音」を存分に楽しみたい音楽ファンには、状態の良いオリジナル盤か高音質復刻盤をおすすめします。オリジナル盤は当時の空気感をそのまま伝えてくれる反面、中古ゆえのノイズや劣化がある場合もあります。購入時には盤質グレードの表示(EXやVGなど)や試聴確認が重要です。幸いブルーハーツの楽曲は多少ノイズがあっても勢いで聴かせるパンクロックですが、可能なら傷の少ない盤を選ぶとよいでしょう。復刻盤であれば未使用の新品状態で入手できることもありますし、リマスターによるクリアな音質や重量盤の安定した再生が魅力です。ただし復刻盤も限定ゆえにプレミア価格の場合があるため、入手コストと相談しつつ選びましょう。

コレクション性を重視する方は、やはり初回盤の付属品や仕様の違いに注目してください。ステンシルやポスター、オリジナル帯など、細かな付属物が揃っているかで価値は大きく変わります。購入前に商品説明で付属品「完品」かどうか確認し、不明な場合は出品者に問い合わせるのも手です。ジャケットの焼けやシミ、盤の反りなどコンディション面のチェックも怠らずに。レア度を求めるならインディーズ盤や非売品プロモ、海外盤といった領域にも踏み込んでみてください。価格は張りますが、その分手に入れた時の喜びもひとしおです。

最後に、ブルーハーツのレコードの楽しみ方としてぜひ提案したいのは、「アナログ盤ならではの体験」を満喫することです。大型ジャケットを眺めながら針を落とし、A面B面をひっくり返す——そうした一連の所作も含めて音楽と向き合う時間は格別です。ブルーハーツのエネルギッシュなサウンドはデジタル配信やCDでも楽しめますが、ヴィニール盤で聴くことで当時の熱狂や空気感がよりリアルに迫ってくるでしょう。お気に入りの一枚をぜひレコードプレーヤーに載せ、音量を上げて、魂揺さぶるパンク・ロックの衝撃を体感してみてください。

おわりに

THE BLUE HEARTSが残したアナログ・レコードの数々は、単なる音源メディアを超えて音楽文化の遺産とも言うべき価値を持っています。インディーズ時代の手作りレコードから近年の豪華復刻盤まで、一枚一枚にバンドの歴史と当時の想いが刻み込まれており、今なおコレクターや音楽ファンの心を捉え続けています。デビューから約40年が経過した現在でも色褪せることのないブルーハーツの音楽は、アナログ盤という形で次世代へと受け継がれていくことでしょう。ぜひこの機会に、ブルーハーツのアナログ・レコードを手に取ってみてください。針を落とせば、青春と情熱の詰まった音がスピーカーから飛び出し、あの頃の熱狂が鮮やかに甦るはずです。ブルーハーツの魂をヴィニールで味わい尽くし、パンク・ムーブメントの鼓動を感じてみましょう。

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