メンフィスで刻まれた魂—忌野清志郎『Memphis』徹底解説
忌野清志郎のソロ・アルバム『Memphis』は、1992年3月25日に東芝EMIのEASTWORLDレーベルからリリースされた彼の2枚目のソロ作である。録音は1991年5月から10月にかけて、スタックス・レコードの本拠地テネシー州メンフィスで行われ、元ブッカー・T&ザ・MG’sのメンバーと共に制作された。プロデューサーにはギタリストのスティーヴ・クロッパーを迎え、本場のサウンドを日本語ロックに融合させた点が大きな特徴である。リリース直後のオリコンチャートでは最高5位を獲得し、累計18.1万枚のセールスを記録した。
概要
『Memphis』は忌野清志郎がRCサクセション活動休止後に発表した2枚目のソロ・アルバムである。収録時間は46分49秒、全11曲を収録しており、初回はCDとカセットテープの2形態で販売された。レコーディングは1991年5月にブルース・ブラザーズ・バンド来日公演の司会を務めた縁で、長年ファンだったブッカー・T&ザ・MG’sのスティーヴ・クロッパー、ドナルド“ダック”ダンらとデモ録音を行った後、正式にスタジオ入りして行われた。
レコーディングの背景
プロジェクト発端
1991年5月、忌野はブルース・ブラザーズ・バンドの来日公演で司会を担当し、その際ブッカー・T&ザ・MG’sと接触したのが本プロジェクトのきっかけであった。当初はツアーの提案もあったが、忌野自身が「ツアーをするならアルバムを作るべきだ」と発言し、ソロ・アルバム制作へと話が進んだ。
メンバーと制作環境
録音にはアル・ジャクソンJr.を除くMG’s主要メンバーと、ブッカー・T・ジョーンズ、メンフィス・ホーンズなど、スタックス・レコードを支えた顔ぶれが参加した。滞在中、忌野にはメンフィス市から名誉市民の称号が贈られ、その熱意が制作の原動力となった。
音楽性と楽曲分析
『Memphis』はロックを基調としつつも、ソウル、R&B、ゴスペルの要素を大胆に取り入れた作品である。特にリードトラック「Boys」は、スタックス・ソウルのリズムに乗せた言葉遊びが光るナンバーであり、メンフィス録音ならではのグルーヴを感じさせる。
名曲“雪どけ”と“彼女の笑顔”
“雪どけ”は南部ソウルの深い情感を日本の四季へと重ねたスローバラードで、抑制された歌唱から宇宙的な広がりを見せる構成が特徴的である。“彼女の笑顔”は数行の叙情的な歌詞で反権力と愛を同時に謳い上げる力強い楽曲で、ブルース調のアレンジに一瞬の崩壊力を宿している点が高く評価されている。
その他の収録曲
他にも、1970年代初期の楽曲をリメイクした先行シングル「世間知らず」や、NHK「みんなのうた」に採用された「ぼくの目は猫の目」、社会風刺を含む「高齢化社会」など、多彩な楽曲が並び、全編を通じて一貫したソウル志向を貫いている。
リリースと反響
発売当初、『Memphis』はオリコンチャートで最高5位を獲得し、全9週にわたりチャートインを果たした。累計売上は18.1万枚に達し、忌野のソロキャリアの重要なマイルストーンとなった。同年6月24日には、本作を手掛けたMG’sとのツアーを収録したライヴアルバム『Have Mercy!』がUSMジャパンよりリリースされている。
再発・リイシュー情報
2006年1月25日にはデジタルリマスター盤がCDで再発され、音質が刷新された形で蘇った。さらに、2023年12月13日には180g重量盤のアナログLPが初LP化され、写真集付属の豪華仕様で発売された。アナログ化により、忌野の温かな歌声とスタックス・サウンドの温度感がより一層際立つ評価を得ている。
影響とレガシー
『Memphis』は、日本のロックシーンに本格的なメンフィス・ソウルの真髄を持ち込み、その後のソウル・R&B志向の作品群に大きな影響を与えた。また、本作はMG’s再結成のきっかけともなり、日米音楽交流の歴史に新たな1ページを刻んだ名作として評価され続けている。
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