フォークソングの起源と多様性:伝承から革新まで
フォークソングは、文字に頼らない口承伝統を通して世代を超えて受け継がれ、匿名性とシンプルな旋律構造を特徴とする音楽形式です(フォークソングはもともと口承で伝えられるものとされる)(口承は知識・芸術を伝える主要手段である)。旋律には教会旋法に由来するモードが用いられ、単純な反復構造が共通点とされます。世界各地で英雄譚や労働歌、プロテストソングへと発展し、アメリカではカーター・ファミリーやボブ・ディランらによる第二次リバイバルが1960年代に頂点を迎えました(カーター・ファミリーは初期の商業録音で大衆化に貢献)。一方日本では、1960年代の学生運動と結びついたプロテスト・フォークが若者文化を牽引し、1970年代以降は吉田拓郎や井上陽水らシンガーソングライターが個人の詩的世界を打ち出しました。現代ではフォークロック、フォルトロニカ、ネオフォークなど多彩なサブジャンルが生まれ、文化的アイデンティティの表現および次世代への継承が進行中です。
定義と起源
定義
- 口承伝承:フォークソングは読み書きに頼らず、村落や小さな集団を中心に伝えられる音楽として定義される。
- 匿名性:作者不詳の作品が多く、創作過程の匿名性こそが伝統音楽の重要な基準とされた時期もある。
- シンプルな旋律構造:旋律はモード(教会旋法)に基づき、比較的狭い音域と反復パターンを特徴とする。
起源
フォークソングの起源は、文字の普及前に人々が祭礼歌や労働歌、戦時歌などを口から口へと伝えたことにあるとされる。共同体の儀礼や日常の労働、戦争などに機能的に結びつき、情報伝達や団結の手段として用いられてきた。
特徴
- 口承による変奏
時代・地域・歌い手によって歌詞や旋律が自然発展的に変化し、固定化されない流動性を持つ。 - モードと楽器
中東やバルカンの影響を受けた小刻みな音階や簡素な和声進行が見られ、多くの場合ギター、マンドリン、バンジョーなどの撥弦楽器が伴奏に用いられる。 - テーマの多彩性
愛、労働、旅路、海、抗議歌など地域の歴史や社会問題を映し出し、叙事詩的バラッドや戦争歌、プロテスト・ソングへと多様に展開する。
世界のフォークソングの多様性
ヨーロッパのバラッド
中世以来伝承される長詩形式のバラッドは、英国や北欧で英雄譚や悲劇を語り継ぐ主要歌唱スタイルであり、 archaic modes(古式旋法)を伴う(バラッドは中世に結晶化し、現代まで語り継がれている)。
アメリカのフォークリバイバル
1940年代から始まったアメリカのフォークリバイバルは、カーター・ファミリーやウディ・ガスリーらをルーツに、1960年代のボブ・ディラン、ジョーン・バエズ、ジュディ・コリンズらが「カレッジフォーク」を牽引し、社会運動と結びついたプロテスト歌を広めた。
その他伝統の例
- 韓国「アリラン」:600年以上の歴史を持ち、約3,600のバリエーションが存在し、南北共同の文化的シンボルとされる。
- ボスニア「セヴダリカ」(Balkan Blues):16世紀起源の抒情愛歌で、2024年にUNESCO無形文化遺産に登録され、歴史と共同体記憶を伝える。
日本のフォークソングの発展
流行の幕開けと学生文化
日本で「フォークソング」が定着したのは1960年代前半のモダンフォーク・リバイバル期で、大学生たちがコピーを通じて流行を拡大させた。
学生運動とプロテスト・フォーク
1960年代後半、安保闘争やベトナム反戦運動の高まりを背景に、岡林信康、高田渡、遠藤賢司、高石友也、中川五郎、加川良らが社会問題を歌うプロテストソングで共感を集めた。
シンガーソングライターからニューミュージックへ
1970年代以降、吉田拓郎や井上陽水、泉谷しげるなどシンガーソングライターが個人的視点の詩世界を重視し、音楽的にもロックやR&Bを取り込んだ多彩な表現が主流となった。
現代の多様化
近年は以下のようなサブジャンルが登場し、フォークの枠を広げています。
- フォークロック:1960年代中期に英米で誕生し、エレクトリック楽器を取り入れたフォークの融合を示す。
- フォルトロニカ:アコースティック楽器とエレクトロニカの混合ジャンルで、パトリック・ウルフやフォー・テットらが代表例。
- インディーフォーク/ネオフォーク:従来のフォークをインディや前衛的に再解釈し、多様な声部や実験的サウンドを伴う。
文化的意義
フォークソングは、地域や国のアイデンティティを映し出し、文化的アイデンティティを形成・強化する重要な表現とされる。また、リバイバルと革新を通じた次世代への継承が活発化している。
フォークソングは、口承の柔軟性と多彩な主題性を土台に、地域や時代とともに形を変えながらも、その核心として「人々の声」を反映し続けている。今後も伝統の継承と革新の相克を通じて、世界中で新たな息吹を吹き込まれることだろう。
参考文献
- https://en.wikipedia.org/wiki/Folk_music
- https://en.wikipedia.org/wiki/Carter_Family
- https://www.britannica.com/topic/Becoming-Dylan-Bob-Dylans-Rise-to-Fame-in-Pictures
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