オリジナル盤とファースト・プレス:レコード識別ガイド

中古レコード市場では、「オリジナル盤」や「ファースト・プレス(1stプレス)」という言葉が、音質や希少性を語るうえで欠かせないキーワードになっています。
どちらも「その作品が最初に世に出たときのレコード」を指しますが、使われ方や範囲には微妙な差があり、定義もコレクターによって少しずつ解釈が異なります。

この記事では、

  • オリジナル盤・ファーストプレスの一般的な定義
  • 国別オリジナルの考え方
  • マトリクス番号やレーベル仕様、帯などによる見分け方
  • 偽プレス・海賊盤への注意点

といったポイントを整理しながら、レコード収集の実践に役立つ基礎知識を解説します。


1. オリジナル盤とは

1-1. 基本的な定義

一般的に「オリジナル盤」とは、そのアルバムやシングルが最初に発売された時期に製造されたレコードを指します。
英語圏では “original pressing” や “original issue” などの言い方がされ、

  • 初回リリースに対応するラベルデザイン
  • 当時のジャケット仕様
  • その時期のカタログ番号・マトリクス

などを合わせて「オリジナル」と判断するのが基本です。

一方で、コレクターによっては、

  • 再発盤(リイシュー)と明確に区別できる範囲を広く「オリジナル盤」
  • その中でも最初期のロットのみを「ファースト・プレス」

と区別して使うこともあります。定義にはグラデーションがある、という前提を押さえておくと混乱が少なくなります。

1-2. 国別オリジナル盤の考え方

レコードは多くの場合、作品が制作された国発売元レーベルの拠点で最初にリリースされ、その後に各国盤が出ます。

  • アメリカのレーベル作品 → US盤オリジナル
  • イギリスのレーベル作品 → UK盤オリジナル
  • 日本で独自発売された作品 → 国内盤オリジナル

といった形で、国ごとのオリジナル盤という言い回しも日常的に使われます。

さらに日本盤は、

  • 帯(OBI)の有無
  • 解説ライナーの内容
  • 日本独自のジャケット・曲順差し替え

など独自の魅力を持っているため、「日本盤オリジナル帯付き」は海外コレクターからも特別な評価を受けています。

1-3. オリジナル盤の魅力

オリジナル盤が好まれる理由は、主に次の3点です。

  1. 作品発表当時の音に近いとされること
    発売当時に使われたマスターやカッティング方針が反映されているため、「当時の空気感に最も近い」と感じるコレクターが多いです。ただし、後年の丁寧なリマスターや高品質な再発盤の方が音質的に優れている例もあり、「オリジナル=必ず最高音質」ではない点には注意が必要です。Amazon+1
  2. アートワークやテキストのオリジナリティ
    初版ジャケットやオリジナルのライナーノーツ、インナースリーヴは、その時代のデザインや言葉がそのまま残った資料的価値の高いアイテムです。
  3. 希少性と市場価値
    時間の経過とともに良好な状態のオリジナル盤は減っていきます。そのため市場では、同じタイトルの再発盤に比べて高値が付きやすくなります。

2. ファースト・プレスとは

2-1. 定義とオリジナル盤との関係

「ファースト・プレス(1st press)」とは、そのタイトルの最初の製造ロットを指す言葉です。
工場側でいう「最初のスタンパーからプレスされた盤」や「最初期のラッカー/マスターからプレスされた盤」に相当しますが、実務上は次のような捉え方をされることが多いです。mootzproductions.com+1

  • 多くのコレクター →
    「オリジナル盤のうち、もっとも早い版(初回仕様)」
  • 人によっては →
    「A-1 / B-1 など、最初期マトリクスの組み合わせの盤のみ」

つまり、オリジナル盤 ⊃ ファースト・プレス という関係になりやすい、と考えると理解しやすくなります。

2-2. 音質面の一般的な傾向

ファースト・プレスは

  • マスターに近い世代のラッカーからカッティングされている
  • スタンパーの摩耗が少ない時期のプレスである

という理由から、「鮮度感が高い」「ダイナミックレンジが広い」と評価されることが多いです。特に50〜60年代のジャズやロックでは、後年の再発と比べて音の厚みや切れ味に明確な差が出るタイトルもあります。

ただし、これも絶対ではありません。

  • 後年の高音質リマスター
  • 45回転重量盤
  • オリジナルとは別ミックスの決定版的再発

などによって、ファーストプレスより好まれる盤が存在することも珍しくありません。

2-3. 市場価値と希少性

初期ロットは、特に

  • デビュー作なのに当時は売れなかったタイトル
  • 一度きりの限定プレス
  • ジャケットや曲順が後に変更される前の仕様

といった条件が重なると強い希少性を持ち、オークションや専門店で高値を付けます。
ビートルズ、マイルス・デイヴィス、ブルーノートのジャズ作品などは、ファーストプレスかどうかが価格に大きく影響する代表例です。


3. 見分け方のポイント

3-1. マトリクス番号(デッドワックスの刻印)

盤の内周(ラベル近くの無音部分=デッドワックス)には、マトリクス番号やカッティング情報が刻まれています。これは、

  • どのマスター/ラッカーからカッティングされたか
  • どの工場でどのスタンパーが使われたか

といった情報を示す「製造履歴」のようなものです。

一般的には、

  • A-1 / B-1、A//1 / B//1、1A / 1A など
    「そのタイトルで最初期とされる番号の組み合わせ」が、
    ファーストプレスまたは極初期盤の有力候補になります。

ただし、注意したいのは、

  • マトリクス番号はレーベルや工場ごとにルールが異なる
  • 1カット目(cut 1)が必ずしも製品化されるとは限らない
  • 同じオリジナル仕様の中で複数のカッティングが存在するタイトルもある

という点です。

そのため、マトリクス番号だけでファーストプレスかどうかを断定するのは危険であり、必ずレーベルデザインやジャケット仕様など他の要素と組み合わせて判断する必要があります。

3-2. レーベルやジャケットの仕様差

オリジナルと再発では、

  • レーベルのロゴ変更(例:住所表記・社名・版権表示の違い)
  • フォントや色味の差
  • ジャケットのラミネート有無、厚紙か薄手か
  • スパインの形状・印刷位置

など、細部に違いが出ることがよくあります。

特に60〜70年代のメジャーレーベルは、レーベルデザインの変遷がよく研究されているため、専門書やオンラインデータベース(Discogsなど)と照合することで、

  • どのラベルが初版仕様か
  • どの時期から再発ラベルに切り替わったか

をある程度まで追うことができます。

3-3. 帯付き日本盤の確認

日本盤特有の「帯」は、

  • 被せ帯(巻き帯)
  • 背帯・半掛け帯
  • 差し込み帯

など様々な形態があり、初回帯と後年の再発帯が別デザインというケースも一般的です。

帯の要点としては、

  • 表記価格・税表記の種類
  • レーベルロゴの変遷
  • キャッチコピーや写真構成

などが挙げられます。初回帯付きは同タイトルのなかでもっとも高く評価されることが多く、帯単体が高額取引されるケースもあります。

正確な判別には、ディスコグラフィ本や専門カタログとの照合が有効です。

3-4. 実際に聴いて確かめる

紙の情報だけでなく、実際に針を落として聴くことも非常に重要です。

  • ノイズの少なさ
  • 低域の量感や締まり
  • 高域の伸び
  • 全体のダイナミックレンジ

などを複数プレスで聴き比べると、そのタイトルにおける「良盤」がどれか、体感的に理解しやすくなります。

また、曲順ミスや誤植ジャケット、レーベルの印刷ミスなどは、初回ロット特有の特徴として語られることがありますが、これもタイトルごとに事情が異なるため、あくまで「手掛かりのひとつ」として扱うのが無難です。


4. コレクター視点の注意点

4-1. 海賊盤・ブートレグへの注意

人気タイトルになるほど、

  • ラベルやジャケットを本物そっくりに作った海賊盤
  • デッドワックス刻印を真似た偽プレス

が出回るリスクが高まります。

対策としては、

  • 信頼できるショップ・ディーラーから購入する
  • 公式/権威あるディスコグラフィ情報と照合する
  • 不自然に状態が良すぎる古いタイトルには一度疑いの目を向ける

といった基本を徹底することが大切です。

4-2. コンディション(保存状態)の重要性

たとえファーストプレスや真のオリジナル盤であっても、

  • 深いキズ
  • 反り
  • カビ・変色
  • ジャケットの破れや日焼け

が激しいと、コレクション価値・市場価値は大きく下がります。

査定では、

  • 盤質(再生ノイズの有無)
  • ジャケット・インナー・ライナーの状態
  • 付属品(帯・ポスター・カード類)の有無

が総合的に評価されます。オリジナル盤を購入・保管する際は、内袋の変更や湿度管理、直射日光の回避なども意識したいところです。

4-3. 再発盤との比較で“耳”を鍛える

オリジナル盤/ファーストプレスの理解を深める一番の近道は、実物を複数比べてみることです。

  • 同じタイトルで、オリジナル盤と高品質再発を聴き比べる
  • 国別オリジナル(US・UK・日本)の違いを体験する
  • マトリクス違いで音の印象が変わるか検証する

といった作業を繰り返すことで、「自分がどんな音を好むか」「どの要素に価値を感じるか」が明確になっていきます。

結果として、

  • 音重視で再発盤を選ぶ
  • 歴史的資料性を重視してオリジナル盤を追う
  • その両方をバランスよく集める

など、自分なりのコレクション方針が自然に見えてきます。


5. まとめ

オリジナル盤とファーストプレスは、中古レコード収集の世界で最も重要で、かつ奥深いテーマのひとつです。

  • オリジナル盤 … 作品が最初に世に出た時期のプレス群
  • ファースト・プレス … その中でも最初期ロット、またはもっとも早い仕様

という大枠を理解したうえで、

  • マトリクス番号
  • レーベルデザイン
  • ジャケット仕様
  • 帯の種類とデザイン
  • 実際の音の違い

といった多角的な視点から盤を見ていくことが、コレクターとしての楽しみを大きく広げてくれます。

細部を見分ける知識と、実際に音楽を楽しむ感性、その両方を大切にしながら、ぜひ自分だけの“究極の一枚”を探してみてください。


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