ポップ・アイコンの深化──Cyndi Lauper『She’s So Unusual』完全解析

Cyndi Lauperのソロデビューアルバム『She’s So Unusual』は、1983年10月14日にPortrait Recordsからリリースされ、世界で1,600万枚以上(米国内700万枚超)のセールスを記録した大ヒット作です。
本作からは「Girls Just Want to Have Fun」「Time After Time」「She Bop」「All Through the Night」の4曲がBillboard Hot 100トップ5入りを果たし、女性アーティストのファーストアルバムからのトップ5シングル4曲獲得は史上初の偉業となりました。
リリース直後から商業・批評ともに高評価を受け、27thグラミー賞で最優秀新人賞と最優秀女性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞を受賞。さらに2019年にはLibrary of CongressのNational Recording Registryに「文化的・歴史的・美的に重要」として選出され、今日に至るまでポップ・ミュージックの金字塔とされています。
背景
Lauperは1978年に結成したロックバンドBlue Angelでデビューを果たすも、商業的成功を得られずバンドは解散。破産状態に陥りつつも、ニューヨークのナイトクラブでの歌唱活動を続ける中でマネージャーDavid Wolffと出会い、Portrait Recordsとソロ契約を締結しました。この転機が、独自のファッションと歌声を武器に新たなポップ像を打ち立てる道を開きました。
録音と制作
アルバムは1983年5月から6月にかけてニューヨークのRecord Plantスタジオで録音され、Rick Chertoffがプロデューサーを務めました。Chertoffは当初持ち込んだ楽曲案をLauperに委ね、彼女自身がアレンジや作詞・作曲に積極的に参加。Rob HymanやEric Bazilian(The Hooters)もクリエイティブチームに加わり、ニュー・ウェイヴとアートポップ、シンセポップを融合した革新的なサウンドを構築しました。
ジャケット写真はAnnie Leibovitzが撮影し、Lauperのカラフルな個性を象徴的に表現。ビジュアル面でもMTV世代を牽引しました。
楽曲分析
ダンスチューンの躍動感
Girls Just Want to Have Fun
女性の自主性を歌ったアンセムで、Billboardで最高2位を記録。ミュージックビデオはJeff Steinが監督し、色とりどりの衣装と振付が話題を呼びました。
She Bop
「女性の自己表現と性」をテーマにしたポップチューン。歌詞の過激さからPMRC(Parents Music Resource Center)の「Filthy Fifteen」に選出され、一部州でラジオ放送禁止措置が取られるなど論争を巻き起こしました。
バラードの情感
Time After Time
Lauper自身が共作に名を連ねたバラードで、Billboardで初のNo.1を獲得。レコーディングはほぼファーストテイクに近い形で行われ、その瑞々しい演奏と歌声が高く評価されました。
All Through the Night
Eurythmicsのカバー曲を清潔感あふれるアレンジで披露。オリジナルとは異なる温かみのあるサウンドが、Lauperの多才さを際立たせました。
注目のアルバム・トラック
「Witness」ではスカ・ポップとロックを融合し、Policeへのオマージュが感じられるリズムパートを展開。「Money Changes Everything」や「When You Were Mine」も力強い演奏とソウルフルな歌唱で、アルバムに深みを与えています。
ミュージックビデオとプロモーション
MTV黄金期を象徴するビデオクリップの数々は、プロモーションにおいて不可欠でした。Lauperの鮮やかなファッションと表情豊かな演技が視覚的インパクトを生み、世界中の視聴者を魅了しました。特に「Girls Just Want to Have Fun」のヒットがアルバム全体の認知度を大幅に押し上げました。
商業的成功詳細
Billboard 200では最高4位を記録し、65週にわたってトップ40圏内を維持。米RIAA認定では1984年5月にプラチナ(100万枚)、1997年には6×マルチプラチナ、最終的に7×プラチナを達成しました。また、英国チャートでも6位、オーストラリアでは1位を獲得。日本のオリコンではアルバムチャート初登場10位を記録し、黒澤作品のサントラ盤と並ぶロングセールスを記録しました。
批評的評価と受賞歴
Rolling Stone誌「史上最高の500枚」ランキングでは、2003年版で494位、2020年改訂版で184位に大きくランクアップし、その評価の高まりが顕著です。Pitchforkでも8.0点の高評価を獲得し、「MTV時代のフェミニズムを体現する作品」と評されました。27thグラミー賞では最優秀新人賞と最優秀女性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞を受賞し、計6部門にノミネートされました。2019年にはLibrary of CongressのNational Recording Registryに選出され、米国の音楽遺産として永久保存が決定しました。
ツアーとライブ
アルバムリリース後、Lauperは1983年11月から1984年12月まで「Fun Tour」を展開。北米・欧州・日本など世界30以上の都市で公演を行い、色鮮やかなステージ衣装と観客参加型のパフォーマンスで熱狂を生み出しました。
再発盤とコレクターズアイテム
2014年3月にリリースされた30周年記念盤『She’s So Unusual: A 30th Anniversary Celebration』は、デモ音源やリミックス、未発表ライブトラックを収録し、新装アートワークも話題に。初回プレス盤やカラーヴァイナルなどの限定仕様はコレクターの間で高値取引される人気アイテムとなっています。
レガシーと現在の影響
Lauperのカラフルなファッションと自由奔放な表現は、当時の音楽シーンに新風を吹き込み、後続の女性アーティストに多大な影響を与えました。また、「Girls Just Want to Have Fun」は世代を超えてフェミニズム・アンセムとして愛され続け、映画やCM、カバー作品でも頻繁に引用されています。
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