ジャズ史に輝くハリー・スイーツ・エディソンの名曲とアナログレコード完全ガイド

ハリー・スイーツ・エディソンの名曲について

ハリー・スイーツ・エディソン(Harry "Sweets" Edison、1915年5月10日 - 1999年7月27日)は、アメリカのジャズトランペッターであり、スウィング時代からモダンジャズに至るまで多大な影響力を持つミュージシャンとして知られています。特にエラ・フィッツジェラルドやビリー・ホリデイといった大物ヴォーカリストの伴奏でも知られ、その特徴的な柔らかく温かみのあるトランペットサウンドは、多くのジャズファンを魅了してきました。

彼のキャリアは特に大手のレコードレーベルからのアナログレコード作品によって広く知られており、ここではCDやストリーミング配信ではなく、アナログレコードを中心に彼の代表的な名曲やアルバムについて詳しく解説します。

ハリー・スイーツ・エディソンのトランペットスタイルとその特色

スイーツのトランペットは他のジャズトランペット奏者とは一線を画する特徴があります。彼の演奏は、鋭いアタックながらも決してきつくならず、滑らかでリリカル。特にミュートを多用するスタイルが有名で、これが彼の「甘い(sound sweet)」あだ名の由来でもあります。

このスタイルは彼がジョージ・ガーシュインの映画音楽からの影響を受けるとともに、カウント・ベイシー・オーケストラで培った経験によるものです。彼の奏でるトーンはウィントン・ケリーやミルト・ジャクソンのようなモダンジャズのリズムセクションと実に相性が良く、グルーヴィーで親しみやすいサウンドを作り上げています。

代表的なレコード作品と名曲の紹介

ハリー・スイーツ・エディソンはたくさんのレコードセッションに参加し、リーダーとしても数多く作品を残しています。ここでは彼のトランペットの魅力が最もよく表れた名盤および名曲をいくつか紹介しましょう。

1. “Harry Edison Swings Buck Clayton” (1958年)

この作品はスイーツとバックス・クレイトンという2大トランペッターが競演した名盤として知られています。両者のトランペットが絶妙に絡み合い、スイーツの柔らかいミュート・トーンが一層引き立っています。

  • 「Cute」 — もともとはレスター・ヤングの代表曲ですが、ここでの演奏はスイーツのトランペットが軽やかに躍動し、聴きどころ満載。
  • 「Jim」 — スイーツ流のブルージーでメロディアスなフレーズが味わえます。

このレコードはオリジナルのアナログ盤での評価が高く、モノラルの温かみあるサウンドがトランペットの息づかいをリアルに伝えます。ジャズ専門店やオークションで稀に見かけることがあり、コレクターズアイテムとしても人気の一枚です。

2. “Sweets” (1956年、Clef Records MGC-700)

このアルバムはクリフ・レコード(後のVerve Records)からリリースされ、彼のリーダー作として特に評価されています。全体を通しジャズトランペットの魅力が詰まっており、幅広いレパートリーが楽しめます。

  • 「Candy」 — 甘く柔らかいトーンが直球で表現されている名演。レコードの溝を伝う音の温かさが格別です。
  • 「Jive at Five」 — カウント・ベイシー楽団のヒットナンバーで、スイーツのトランペットがやや控えめながらも躍動感溢れるスウィングを見せてくれます。

このLPはオリジナル盤が特に人気で、マスターカットの状態やプレイグルーヴの深さなどがコレクターの間で評価基準となっています。

3. “Patented by Edison” (1957年、RCA Victor LPM-1383)

スイーツの個性的なフレーズが詰まったこのアルバムは、RCAビクターからのリリースで、特にサウンドのクリアさが際立っています。

  • 「Harriet」 — ミディアムテンポの曲で、彼のトランペットが奏でるメロディがしっとりと染み込む一曲です。
  • 「Siren」 — この曲ではミュートが効果的に使われ、スイーツの持つ「甘さ」が余すところなく表現されています。

オリジナルアナログ盤は録音の良さも手伝い、トランペットの微細なニュアンスまで余すことなく伝えるため、ジャズ・トランペット愛好家の必携アイテムとされています。

4. セッション参加作品

スイーツはビリー・ホリデイやエラ・フィッツジェラルドといった大物ヴォーカリストのサポートでも知られています。特にビリー・ホリデイの「Lady Sings the Blues」、「Songs for Distingué Lovers」などのオリジナルアナログ盤は、エディソンの控えめながらも温かいトランペットが曲の情感を引き立てています。

また、カウント・ベイシー楽団時代のオリジナル12インチLP「The Count Basie Orchestra」シリーズでもスイーツのトランペットソロが多く収録されており、これらのオリジナル盤はレコードファンの間で非常に高い人気を誇っています。

ハリー・スイーツ・エディソンのレコード収集のポイント

現在、アナログレコードの愛好家やコレクターの間でスイーツのオリジナルLPは人気が高く、以下の点に注意して収集するのがおすすめです。

  • レーベルとプレス年を確認する:特に1950年代から60年代のクリフ、RCAビクター、Verveレーベルのオリジナルプレスは音質、保存状態が良いものが多いです。
  • ジャケットの状態:アナログレコードの魅力は音質だけでなく、当時のデザインやアートワークも含まれます。折れやシミが少ないものが望ましいです。
  • モノラル盤の人気:スイーツのアルバムはモノラル盤のほうが当時の雰囲気をより忠実に再現するため、モノラルオリジナル盤の価値が高いです。
  • オリジナルインナースリーブの有無:オリジナルのインナースリーブも保存されているとコレクターズアイテムとしての価値が上がります。

まとめ

ハリー・スイーツ・エディソンはジャズトランペットの歴史の中で欠かすことのできない存在です。彼の音楽はレコードというメディアを通じて多くのファンに愛され、当時のスウィングやモダンジャズの息吹を色濃く残しています。

彼の名曲群をオリジナルのアナログレコードで聴くことは、過去の素晴らしいジャズシーンを体感する上で何物にも代えがたい体験となるでしょう。ジャズの魅力に触れたい方はぜひ、スイーツ・エディソンのオリジナルレコードを手に取って、その甘くしなやかなトランペットサウンドを堪能してみてください。