【ケニー・ドーハムの名曲徹底解説|代表作「Blue Bossa」から希少ヴィンテージレコードまで】
ケニー・ドーハムの名曲についての深堀りコラム
ジャズ・トランペット奏者のケニー・ドーハム(Kenny Dorham、1924年―1972年)は、モダンジャズの黄金時代を支えた重要なミュージシャンの一人です。彼はマイルス・デイヴィスやチャーリー・パーカーといった巨匠たちとも共演し、ビバップからハードバップ、さらにはラテンジャズの領域においても多彩な表現を見せました。ここでは、特に彼の名曲に焦点を当て、その音楽的特徴やレコードで入手可能な情報を中心に解説します。
ケニー・ドーハムの音楽的背景と特徴
ケニー・ドーハムはニューヨーク生まれのトランペット奏者で、1940年代中期から活躍を始めました。ビバップ的な速弾きもこなしますが、そのプレイは非常にメロディアスで叙情性豊かなところが特徴です。彼のトランペットは、クリフォード・ブラウンのようなパワフルさよりはむしろ、繊細でくっきりとした輪郭を持ち、独特の温かみを帯びています。
またラテンジャズへの関心も高く、多くの作品でカリビアンリズムやパーカッションを効果的に用いています。この点が、他のビバップ・トランペッターとは一線を画しており、彼のサウンドに豊かな色彩とリズムの多様性をもたらしました。
代表的な名曲とそのレコード情報
以下に、ケニー・ドーハムの代表的な名曲と、その楽曲を含むレコードの情報をまとめます。
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“Blue Bossa”
ケニー・ドーハムの代表曲として最も有名なのが「Blue Bossa」です。この作品は1960年代のラテンジャズとハードバップの融合を象徴する曲で、穏やかなボサノヴァのリズムに乗せて、シンプルかつ魅力的なメロディが展開されます。
この曲は、彼の1963年のアルバム『Una Mas』(Jazzlandレーベル)に初めて録音されました。レコード盤としては、Jazzland JLP 64が有名で、ジャケットはケニー・ドーハムの写真と青を基調にしたデザインが印象的です。盤面のコンディションが良いものは高価格で取引されています。
「Blue Bossa」はその後、多くのジャズメンにカバーされるスタンダード曲となっており、このレコードはジャズの名盤として広く認知されています。
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“Una Mas”
「Una Mas」はタイトル曲としての役割も果たす一曲で、ラテンリズムを楽しめるアップテンポのナンバー。ケニー・ドーハム自身が作曲し、複雑ながらもキャッチーなメロディとリズムが魅力です。
こちらも『Una Mas』(Jazzland JLP 64)に収録されています。同アルバムは西海岸のジャズ・シーンを反映し、フレッド・クーパー(ピアノ)、ジョー・ハバード(ドラム)といった当時注目されていた若手と共演しています。オリジナル盤を探すファンも多く、米国のオリジナルプレスは特に希少価値が高いです。
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“Whisper Not”
この曲はドーハムの作曲ではありませんが、彼の演奏の中で特に名演が残されています。ベニー・ゴルソン作のスタンダードで、ケニー・ドーハムはセロニアス・モンク、ソニー・クラークなどと共演しながらこの曲を独自解釈で表現しました。
注目のレコードとしては、1956年のアルバム『Round About Midnight at the Cafe Bohemia』(Blue Note Records)があり、このライブ録音で聴く彼の「Whisper Not」はスウィング感と高度な即興の両立が見事です。ブルーノートのオリジナル1stプレスはアナログLPコレクターにとってコレクションの宝となっています。
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“Afrodisia”
タイトル曲としてアルバム名にもなっている「Afrodisia」は、ソウルフルでリズミカルな作風の曲です。アフリカンリズムとジャズの融合が楽しめる作品としてファンに愛されています。
こちらは1961年録音の『Afrodisia』(Epic Records、LN 3212)に収録されており、サム・ジョーンズ(ベース)、アル・ヒース(テナーサックス)がメンバー。エピック・レーベルのオリジナル盤は比較的見つけやすいですが、音質が非常に優れているためヴィンテージ盤での鑑賞がおすすめです。
レコードを通じて感じるケニー・ドーハムの魅力
ケニー・ドーハムのレコード作品は、当時のジャズシーンの流れをつぶさに映し出しながら、彼独特の繊細かつ情熱的な音楽世界を形成しています。特にアナログレコードはその温かみのある音質とともに、ミュージシャンの息遣いやライブ感を強く伝えてくれるため、CDやサブスク配信とはまた異なる体験が得られます。
例えば、『Una Mas』のLPは、ビニール特有の微かなノイズを伴いながらも力強いトランペットの響きが特徴で、当時のオーディオ機器との相性も良いです。また、『Afrodisia』のオリジナルエピック盤は音の深みと空間の広がりが抜群で、ジャズの“ライブ感”を自宅で味わうには最適な一枚です。
ジャケットやライナー・ノーツ、初版ならではのプレス仕様を含め、レコードで聴くケニー・ドーハムの作品は単なる音楽鑑賞以上の、歴史的なアートピースとしての価値を持っています。オリジナル・レコードを収集しながら名曲に耳を傾けることは、ジャズファンならずとも一度は経験しておきたい醍醐味と言えるでしょう。
まとめ:ケニー・ドーハムをレコードで楽しむ意味
ケニー・ドーハムの名曲群は、彼の多面的な音楽性とジャズの発展を象徴しています。特にラテンジャズやハードバップの枠組みで独自の世界を築いた「Blue Bossa」や「Una Mas」は、ジャズ・トランペットの歴史における一里塚的存在です。
これらの名作をオリジナルレコードで鑑賞することは、単なる音楽鑑賞を超え、当時の音楽文化や制作環境、ジャズミュージシャンの息づかいまでを体感できる貴重な体験です。サブスクやCDでも名曲は楽しめますが、ヴィンテージ・レコードならではの音の厚みと臨場感は唯一無二。ぜひ機会を見つけて、ケニー・ドーハムの偉大な音楽世界をアナログで味わってみてください。


