データベースの種類|目的に合わせた選び方と特徴を解説

はじめに

現代のITシステムにおいて、データベースは欠かせない存在です。
ネットショップの在庫管理、SNSの投稿履歴、銀行口座の取引記録――これらすべてがデータベースによって支えられています。

しかし、ひと口に「データベース」といっても、構造や用途によっていくつかの種類があります。
この記事では、代表的なデータベースの種類と、それぞれの特徴や使い分け方をわかりやすく解説します。


1. リレーショナルデータベース(RDB)

概要

**リレーショナルデータベース(Relational Database)**は、最も一般的なデータベースの形式です。
データを「表(テーブル)」の形で管理し、行(レコード)と列(カラム)によって整理します。

特徴

  • データ同士の関係(リレーション)を「キー」で結びつけられる
  • SQL(Structured Query Language)を使って操作する
  • 高いデータ整合性と信頼性を持つ

主な製品

  • MySQL
  • PostgreSQL
  • Oracle Database
  • Microsoft SQL Server

向いている用途

  • 顧客管理システム(CRM)
  • 受注・在庫管理
  • 会計システムなど「正確なデータ処理」が求められる業務

2. NoSQLデータベース

概要

**NoSQL(Not Only SQL)**とは、「SQLを使わない、または使わなくてもよい」データベースの総称です。
大量データや非構造化データ(画像、テキスト、センサー情報など)の処理に強みを持ちます。

特徴

  • スキーマレス(柔軟なデータ構造)
  • 分散処理に強く、大量データを高速に扱える
  • 種類によってデータ構造が異なる

主なタイプ

タイプ構造主な製品特徴
キーバリュー型キーと値の組み合わせRedis, DynamoDBシンプルで高速な処理
ドキュメント型JSONなどの構造化文書MongoDB, CouchDB柔軟なデータ構造
カラム指向型列単位で管理Cassandra, HBaseビッグデータ分析に強い
グラフ型ノードとエッジで関係を表現Neo4j, Amazon NeptuneSNSやネットワーク解析に利用

向いている用途

  • SNSやECサイトなど、リアルタイム性の高いアプリケーション
  • IoTデータの蓄積・分析
  • AI・機械学習用の大規模データ管理

3. オブジェクト指向データベース(OODB)

概要

オブジェクト指向データベースは、プログラミングの「オブジェクト指向設計」と同じ考え方を取り入れたデータベースです。
データと処理を一体化した「オブジェクト」として管理します。

特徴

  • プログラミング言語(Java、C++など)と親和性が高い
  • データ構造が複雑なシステムに適している
  • 開発者が扱いやすい

主な製品

  • ObjectDB
  • db4o

向いている用途

  • CADシステム、シミュレーション、ゲーム開発など、複雑なオブジェクト構造を扱う分野

4. クラウドデータベース

概要

クラウドデータベースは、インターネット上のクラウド環境に構築されるデータベースです。
自社でサーバーを持たず、クラウドサービスを利用して運用します。

特徴

  • 初期コストが低く、スケール(拡張)が容易
  • バックアップ・セキュリティ管理が自動化されている
  • Webアプリやスマホアプリとの相性が良い

主なサービス

  • Amazon RDS / DynamoDB(AWS)
  • Google Cloud SQL / Firestore(GCP)
  • Azure SQL Database(Microsoft)

向いている用途

  • スタートアップや中小企業のWebサービス
  • サーバーレス構成のアプリケーション
  • グローバルなアクセスを必要とするシステム

5. データウェアハウス(DWH)

概要

**データウェアハウス(Data Warehouse)**は、企業全体のデータを集約し、分析や意思決定に活用するためのデータベースです。

特徴

  • 大量データを長期的に蓄積・分析できる
  • 日常の業務システム(OLTP)とは別に運用される
  • BIツール(データ可視化ツール)と連携して活用

主な製品

  • Amazon Redshift
  • Google BigQuery
  • Snowflake

向いている用途

  • 売上データや顧客データの分析
  • 経営指標の可視化
  • ビジネスインテリジェンス(BI)分析

まとめ

種類特徴主な用途
リレーショナルDB高い整合性・信頼性会計、顧客管理など
NoSQL柔軟で高速SNS、IoT、AI
オブジェクト指向DBプログラムと親和性シミュレーション、ゲーム
クラウドDB運用コスト低・拡張性高Web・モバイルアプリ
データウェアハウス分析特化経営・マーケティング分析

データベースにはそれぞれ得意分野があります。
システムの規模・目的・データ構造に応じて最適な種類を選ぶことで、性能と効率を最大化できます。