エリス・レジーナをレコードで聴く完全ガイド:おすすめLP・オリジナル盤の見分け方と音質・保管のコツ
はじめに — エリス・レジーナとレコードの愉しみ
エリス・レジーナ(Elis Regina)は1945年生まれ、1982年に急逝したブラジルを代表する歌手で、MPB(ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ)の象徴的存在です。卓越した表現力と緻密なフレージングでブラジル国内外に多大な影響を与えました。本稿ではCDや配信ではなく、あえて「レコード(アナログLP)」を中心に、エリスの代表作やレコード収集のポイント、プレス違いによる音質や価値の違い、購入・保管のコツまで詳しく解説します。レコードで聴くことが、彼女の声の温度や音楽の空間性をより豊かに伝えてくれる理由を実感していただければ幸いです。
レコードで聴くメリット — なぜLPなのか
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音像の自然さ:アナログ盤は高域の人工的な鋭さが抑えられ、歌声の息遣いや残響が自然に再現されやすい傾向があります。エリスのようにダイナミックレンジとニュアンスが勝負の歌手には適しています。
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マスター由来の差:オリジナル・マスターから作られた初期プレスは音色やダイナミクスに独自性があり、再発リマスターとは違った魅力を持つことがあります。
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ジャケット・アートの存在感:LPはアートワークやライナー、紙質など物理的な情報量が多く、当時の制作背景を楽しめます。
おすすめレコード(LP)と聴きどころ
以下は特にアナログで手元に置きたい代表作品を選び、収録曲のハイライトとレコード選びのアドバイスを添えます。購入時は盤面・ジャケットの状態(VG, VG+, EX, Mなど)を必ず確認してください。
1. Elis & Tom(Elis Regina & Antônio Carlos Jobim/1974)
概要:トム・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)と共演した名盤。曲作り、アレンジ、演奏すべてが洗練されており、"Águas de Março"(三月の雨/Waters of March)など名演が収められています。ボサノヴァ/MPBの豊かなアンサンブルにエリスの歌が溶け込む名作です。
レコード選びのポイント:オリジナルのブラジル・プレス(Philipsや同社系列のラベル表記)を探すと、温かみある音と空気感が強く出ます。一方で日本の高品質再発(帯つき国内盤や高音質LP)もマスター由来やプレスの良さで人気が高いので、入手可能性や盤質を考慮して選びましょう。
2. Dois na Bossa(Elis Regina & Jair Rodrigues/1965)
概要:テレビ番組「O Fino da Bossa」から生まれたコラボ盤。若きエリスのエネルギーと、ジャイル・ロドリゲスとの掛け合いが楽しく、1960年代ブラジルのポップ/サンバ感を色濃く伝えます。
レコード選びのポイント:60年代中盤のオリジナル・プレスはコレクター的価値があり、ジャケットの保存状態が価格に直結します。音質は盤質に依存するため、スクラッチやノイズに注意して選んでください。
3. Falso Brilhante(1976)
概要:1976年リリースのアルバムで、後に代表曲となる「Como Nossos Pais」などを含むアルバム(※作曲者はベルシオールなど)。ステージ作品を元にした選曲とエリスの成熟した表現が魅力です。
レコード選びのポイント:この時期のブラジル盤はハイファイとは言い切れない面もありますが、演奏や歌唱の臨場感は生々しく残ります。マトリクス番号やレーベル表示(ブラジル・オリジナルか国内再発か)を確認しましょう。
4. Live/ライヴ盤(複数)
概要:エリスはライブパフォーマンスでも高い評価を受けており、いくつかの公式・非公式ライブ盤があります。ライブ録音はスタジオ録音とは違う即興的な表現やアレンジが聴けるため、コレクションに加える価値があります。
レコード選びのポイント:ライブ盤はマスターの品質にばらつきがあるため、リリース元(公式かブートか)を確認。公式盤のオリジナルLPを狙うのがベストです。
オリジナル盤と再発盤の見分け方
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レーベル/カタログ番号を確認:ブラジル・オリジナルは「PHILIPS」や「Philips/PolyGram」表記、カタログ番号が割り振られています。再発は海外(日本/欧州)のレーベル表記やリマスターのクレジットが付くことが多いです。
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マトリクス(runout)をチェック:盤縁の刻印(runout/matrix)はプレスの世代やマスター元を示す重要な手掛かりです。ディスコグス(Discogs)等で該当リリースの画像や情報と照合しましょう。
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ジャケットの仕様:内袋の有無、帯(日本盤の場合)、ライナーノートの言語と印刷品質なども再発判別に有効です。
音質を上げるための再生環境とメンテナンス
良い盤を見つけても再生環境が整っていないと本来の音は出ません。以下は特に効果的なポイントです。
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カートリッジと針:コンプライアンスや出力などトーンアームとマッチしたカートリッジを選ぶこと。エリスの声を滑らかに出すにはシェルリード(MC)か高品質なMMを検討。
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ターンテーブルの設置:水平出し、回転数安定、振動対策(スパイクやインシュレーター)を行いましょう。
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盤のクリーニング:ウエットクリーニング(レコードクリーナー)で表面の汚れを落とすとノイズが激減します。帯電防止も重要です。
購入時の注意点 — 偽物・表記のトリックに気をつける
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「オリジナル風」リイシュー:近年はリマスター・リイシューが多く、初出年表記をあえて大きく表示するものがあります。盤質とマトリクス確認を忘れずに。
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非公式(ブート)盤:市場には非公式なライブ録音LPも流通します。音源品質や権利関係に問題がある場合があるため、購入目的(コレクションか鑑賞か)を明確にしましょう。
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ジャケの再生産:ジャケット自体が復刻されたケースもあるので、紙質や印刷の差、背表記の有無で見分けます。
コレクションの保管と売買のコツ
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保管:直射日光や高温多湿を避け、立てて保管。内袋はアシッドフリーのものに替えるとジャケットの劣化を防げます。
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ランク付け:盤とジャケットを別々に評価する習慣をつける(例:盤=VG+, ジャケット=EXなど)。売買時の信用にも繋がります。
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相場把握:Discogsや国内の中古レコードショップの出品をこまめにチェックして相場感を養うこと。
入手方法の実務的アドバイス
日本国内での入手は、中古レコード店、オークション(ヤフオク!)、オンラインマーケット(Discogsのマーケットプレイス、eBayなど)や専門の中古盤通販が中心です。海外オリジナル盤は送料や税金がかかるため、状態と総費用を比較して判断してください。
まとめ — レコードで味わうエリスの世界
エリス・レジーナの歌は、声の細かなニュアンスやフレージングの揺らぎを含めて「空間で鳴る」タイプの音楽です。レコードはその空間性を活かして聴ける媒体であり、オリジナル盤や良好な再発盤を手に入れることで、より深い鑑賞体験が得られます。選盤の際は盤質とプレス情報を重視し、可能ならば複数の版を聴き比べて違いを楽しんでください。
参考文献
- Elis Regina — Wikipedia (English)
- Elis & Tom — Wikipedia (English)
- Dois na Bossa — Wikipédia (Português)
- Elis Regina — Discogs 検索結果
- Elis Regina — AllMusic
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