タラップとは?建築・土木現場での意味・種類・設置基準を徹底解説
タラップとは?基本の意味と役割
タラップ(英語:ladder または gangway)とは、人が高低差のある場所を安全に昇降するための梯子(はしご)状の設備のことです。
建築現場や土木構造物、工場、ビル設備、さらには船舶・飛行機など、幅広い分野で使用されています。
特に建築・土木の分野では、屋上・塔屋・地下ピット・水槽・煙突などに出入りするための「固定式タラップ」が多く設けられています。
非常用や点検用の通路として設置されることが多く、安全性と耐久性が重視される設備です。
タラップの構造と基本仕様
タラップは、基本的に「支柱」と「踏桟(ステップ)」で構成される単純な構造ですが、用途によって形状や材質が大きく異なります。
主な構成要素
- 支柱(サイドレール):人の体重を支える縦方向の部材。
鋼管やアルミ、ステンレスなどの金属製が主流です。 - 踏桟(ステップ):足を掛ける水平部材。
丸鋼やフラットバーで作られ、間隔は通常250〜300mm程度。 - 安全金具(安全帯掛け):昇降時に命綱を掛けるための金具。
- 保護かご(安全囲い):一定高さ以上のタラップに設置される転落防止のための円形ガード。
建築基準法や労働安全衛生規則に基づいて、これらの寸法や構造は明確に規定されています。
タラップの種類と用途別分類
1. 固定式タラップ
建物や構造物に恒久的に取り付けるタイプで、最も一般的です。
屋上、塔屋、煙突、地下ピット、マンホール、機械室などの出入り用として使用されます。
材質には以下の種類があります。
- 溶融亜鉛メッキ鋼製:防錆性が高く、屋外での長期使用に適する。
- ステンレス製(SUS304など):水槽・食品工場・下水処理施設など、耐腐食性を重視する現場向け。
- アルミ製:軽量で施工性に優れ、仮設や軽構造物に多い。
2. 移動式タラップ
必要なときに設置・撤去できる可搬式の梯子。
現場作業や点検時に使われ、脚部には滑り止めゴムやキャスター付きのものもあります。
3. 折りたたみ式タラップ
天井点検口や屋根裏への昇降に用いられるタイプ。
住宅やオフィスビルで多く採用され、使用時のみ引き出す構造です。
4. 船舶・航空機用タラップ
船や飛行機への乗降用に設置されるスロープ状の通路。
「舷梯(げんてい)」とも呼ばれ、建築土木分野とは構造が異なります。
建築現場・土木施設でのタラップの使用例
| 設置場所 | 主な用途 | 材質の例 |
|---|---|---|
| 屋上・塔屋 | 設備点検・避難 | 溶融亜鉛メッキ鋼製 |
| 地下ピット・槽内 | 機器点検・清掃 | ステンレス製 |
| 水槽(受水槽・高架水槽) | 点検用 | SUS304・SUS316 |
| 煙突・サイロ | 点検・補修作業 | 鋼製+保護かご付 |
| ダム・下水処理施設 | 保守・点検 | ステンレス製・FRP製 |
これらの場所では、安全帯の取付金具や保護かごの設置が必須とされ、転落事故を防止するための構造基準が厳格に定められています。
タラップの設置基準(労働安全衛生規則・JIS規格)
基本寸法の基準(労安則 第519条ほか)
- 踏桟の間隔:250mm〜300mm以内
- 支柱の内側幅:400mm以上
- 壁からの離隔:150mm以上
- 支柱の強度:1人あたりの体重(約100kg)に十分耐えられる構造
- 8mを超える場合:**途中に踊り場または安全囲い(保護かご)**を設ける
材料と仕上げ
- 屋外用は防錆塗装または溶融亜鉛メッキ処理
- 水槽・薬品槽ではステンレス製またはFRP製を採用
- 滑り止め加工(ローレット、グレーチング式ステップなど)を施すことが望ましい
これらはJIS A 4309(建築用鋼製タラップ)やJIS G 3452(SGP鋼管)などの規格にも準拠しています。
安全対策と点検のポイント
タラップは、設置後も定期点検・補修を行う必要があります。特に屋外では腐食・サビ・ボルト緩みなどが多発するため注意が必要です。
点検ポイント
- 支柱・踏桟の腐食・変形・亀裂の有無
- 溶接部やボルト接合部の緩み・剥離
- 防錆塗装やメッキの剥がれ・サビ
- 保護かごや安全帯金具の損傷・欠損
- 周囲の障害物・落下物リスクの有無
安全対策の例
- 昇降時には安全帯の使用を義務化
- 高所作業では2人1組で行動
- 危険箇所には「昇降禁止」などの明示ラベルを設置
特にビル管理や公共施設では、年1回以上の安全点検が推奨されています。
タラップと階段の違い
| 項目 | タラップ | 階段 |
|---|---|---|
| 構造 | 垂直または急勾配の梯子状 | 傾斜角が緩やかな段構造 |
| 主な用途 | 点検・保守・避難 | 通常の人の移動 |
| 設置スペース | 小さい | 広い |
| 安全性 | 転落リスクあり(要安全帯) | 比較的安全 |
| 法的扱い | 設備附属物 | 通路構造物 |
タラップは常用ではなく、点検・避難用の補助設備として設計されるのが一般的です。
材質別の特徴と選定ポイント
| 材質 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 鋼製(SGP・STK) | 強度・耐荷重に優れる。コストも安い。 | 一般建築・屋外設備 |
| 溶融亜鉛メッキ鋼 | 防錆性が高く屋外向き | 屋外塔屋・煙突など |
| ステンレス(SUS304・316) | 耐食性抜群。高価だが長寿命 | 水槽・下水施設・食品工場 |
| アルミ製 | 軽量で扱いやすい | 仮設・軽量構造物 |
| FRP製 | 絶縁・耐薬品性あり | 下水処理場・化学プラント |
用途環境(屋外/屋内、水分・薬品の有無)によって最適な材質を選ぶことが重要です。
まとめ:タラップは“縁の下の安全設備”
タラップは、建物や施設のメイン設備ではありませんが、点検・保守・避難などの安全を支える縁の下の力持ちです。
建築・土木・設備いずれの現場でも、構造基準や安全対策を遵守した正しい設計・施工・点検が求められます。
近年では、FRPタラップやアルミ製軽量タラップ、さらには防錆性能を強化したメンテナンスフリータイプも登場しており、環境に合わせた最適な選定が進んでいます。
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