Tangerine Dreamレコード完全ガイド — Phaedra/Rubycon/Ricochetの初回プレスとコレクター向け選び方
はじめに — Tangerine Dream とレコードというメディア
ドイツの電子音楽集団 Tangerine Dream(タンジェリン・ドリーム)は、1960年代末から現在に至るまで、シンセサイザーとシーケンサーを駆使した「ベルリン・スクール」と呼ばれるサウンドを発展させてきました。その音世界はアルバムごとに変貌を遂げ、1970年代のアナログ機器による実験的な長尺曲群から、1980年代以降の映画音楽やポップ性を帯びた楽曲まで幅広く含みます。
本稿では代表的な楽曲/作品を中心に、その音楽的な位置づけやレコード(アナログ盤)にまつわるリリース史、コレクター向けの注目点を深掘りします。CD や配信ではなく、あくまでレコードに関する情報を優先し、初期プレスや音質・マスタリング、ジャケット差異などの観点から解説します。
Phaedra(1974) — タンジェリン・ドリームの転換点
「Phaedra」はグループの商業的・芸術的な飛躍を象徴する作品で、アルバム・タイトル曲は長大な構成とシーケンサーによる反復が特徴です。リリース当時、アナログ・シンセサイザー(ミニモーグやARP系)、アナログシーケンサー、エコー/リバーブ等のエフェクトが駆使され、これまでの即興路線から構築的なスタイルへと舵を切りました。
- 初期のレコード流通:欧州では Virgin(英)からのリリースが知られ、オリジナルのUKプレスはヴァージンの初期レーベル・デザイン(いわゆる“渦巻き”ラベル)が目印になることが多いです。
- ジャケットと仕様:初回プレスは一般に厚紙ジャケットで、見開き(ゲートフォールド)ではないことが多く、内袋の有無や帯(日本盤)などがプレス毎に差異を生みます。
- 音質面の注目点:オリジナル・アナログ・マスターが使用された初回プレスは、現代のリマスターとは異なる温かみのあるアナログ感を残しているため、コレクター人気が高いです。
Rubycon(1975)とRicochet(1975) — 連作とライヴの評価
「Rubycon」は Phaedra に続くスタジオ作品で、2トラック(Side A / Side B)の長尺構成による高密度なシンセ演奏が続きます。アルバムは「Phaedra の深化」と評され、オリジナルのアナログ・プレスはミックスやカッティングの違いで音質差が出やすいのが特徴です。
一方で「Ricochet」は1975年録音のライヴ盤。ライブならではの即興性とスタジオ作品とは異なるダイナミクスを捉えた名盤で、ヴァージン盤の初回プレスはファンにとって重要なコレクターズアイテムです。ライヴ盤はカッティング時の音圧とイコライジングの差が顕著に出るため、良好なオリジナル盤は高値で取引される傾向があります。
Stratosfear(1976)・Force Majeure(1979) — メロディー性の導入とアナログ機器
「Stratosfear」以降、タンジェリン・ドリームはよりメロディアスな要素を取り入れ始めます。ギターやピアノ(エレクトリックピアノ)など生楽器の導入が進み、アナログ・レコードで聴くとそれらの楽器の生々しさや空間表現が強く感じられます。
「Force Majeure」にはロック的なドラムやリズムが加えられ、アナログLPの帯域特性を活かした低域の再現性が聴きどころです。こうした作品の良好なアナログ盤は、マスター・テープに近い音像を残す初回プレスや良好なラッカーカッティングがポイントになります。
映画音楽とシングル扱いの楽曲 — Sorcerer/Risky Business ほか
Tangerine Dream は映画音楽でも著名で、1977年の「Sorcerer」や1983年の「Risky Business(リスキー・ビジネス)」サウンドトラックは特に知られています。映画音楽として制作された楽曲は、劇伴の性格上アルバム曲と異なる編集版や別ミックスが存在し、映画公開当時のサウンドトラックLP(オリジナル・シネサウンドトラック)と後年のコンピレーション/拡張盤では内容が異なることが多いです。
代表曲としてポピュラーになった「Love on a Real Train」は Risky Business のサウンドトラックで広く知られますが、この曲のヴァイナルを探す際は映画サントラ初版(オリジナル・サウンドトラックLP)と、後年のベスト盤やリミックス盤での差異を確認することが重要です。オリジナルLPは収録テイクや長さが最も“オリジナル”であることが多く、コレクター価値が高めです。
レコードコレクターの観点:初回プレスの見つけ方と見分け方
- レーベルとプレス国を確認:早期作品はドイツのOHRレーベル、1970年代中盤以降は英国のVirginが重要。国ごとにマスターやカッティング、ジャケット印刷の質が異なります。
- ラベル差異:Virginの初期は“渦巻き”ラベルなど、時期によるラベル・デザイン違いがあるので、写真と照合して初回ラベルを見極めます。
- マトリクス/ランアウト刻印:レコード溝の外周に刻まれるマトリクスは初回プレス特有の刻印が残る場合があり、コレクターの重要な識別点です(刻印内容はタイトルやカッター、マスター番号等を示すことが多い)。
- ジャケットの仕様:見開きの有無、内袋(紙 or プラス)、帯(日本盤)やステッカーの有無で版を判別できます。
- プレスの音質:初回オリジナルが必ずしも最良とは限りませんが、オリジナル・アナログ・マスターに基づく初期プレスは機材感や空間表現が豊かで評価されることが多いです。逆に再発のカッティングが良好な場合もあるため、音質の比較試聴が有効です。
リイシューと海賊盤に注意
タンジェリン・ドリームは人気が高いため正規リイシューが多数ありますが、海賊盤や非公式編集のアナログ盤も市場に混在します。ジャケット印刷のクオリティ、レーベル面の表記(©表記・ライセンス表記の有無)、マトリクスの不整合などで判断できます。また、近年のアナログ復権でリマスター再発が増えていますが、マスター音源の出典(オリジナル・テープかデジタルからの再生成か)を確認すると良いでしょう。
おすすめのヴァイナル盤(初心者〜中級コレクター向け)
- Phaedra(オリジナル・1974年プレス) — グループの代表作。オリジナル・アナログの空間表現は一聴の価値あり。
- Rubycon(オリジナル・1975年プレス) — シーケンサーの美学を堪能できる一枚。
- Ricochet(ライヴ・オリジナル) — ライヴの臨場感を求めるならオリジナル盤。
- Risky Business(サウンドトラック・オリジナルLP) — 「Love on a Real Train」をオリジナルで体験したいならこちら。
いずれも状態(盤質・ジャケット)で価格が大きく変わります。プレイヤーとカートリッジのコンディションも音質に影響するため、視聴や返品ポリシーのある店舗での購入を推奨します。
保管・再生に関する実践的アドバイス
- 保管:直射日光・高温多湿を避け、立てて保管。ジャケットのカビや変色に注意。
- 再生:良好なトーンアームと針(MM/MC適切なカートリッジ)を用いると、アナログの深みが引き出されます。特にシンセ主体の音源は高域の伸びや微細な残響が再生品質に左右されます。
- クリーニング:静電気除去とレコード洗浄は必須。埃やチリのノイズはシンセの繊細な残響を損ないます。
まとめ — レコードで聴く Tangerine Dream の魅力
Tangerine Dream の音楽はアナログ機器で生まれた背景を持つため、レコードで聴くことで機材の温度感、シーケンスのアナログな揺らぎ、残響の空間性などが体感しやすくなります。オリジナル盤は単なるコレクターズアイテムではなく、当時の制作背景や音響美学を直接伝えるメディアでもあります。購入時にはレーベルやプレス国、マトリクス刻印、ジャケット仕様を確認し、できれば視聴のうえで音質優先の盤を選ぶことをおすすめします。
参考文献
- Tangerine Dream 公式サイト
- Discogs — Tangerine Dream(ディスコグラフィ)
- Wikipedia — Tangerine Dream
- AllMusic — Tangerine Dream
- Discogs — Phaedra(リリース詳細)
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