Stevie Wonder入門:70年代の名盤6枚と必聴トラック&聴き方完全ガイド

Stevie Wonder — イントロダクション

Stevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)は、幼少期にモータウンと契約し、ソウル/R&Bを基盤にポップ、ファンク、ジャズ、ゴスペル、実験的シンセサイザー音響を融合させ続けた20世紀後半を代表するアーティストの一人です。1960年代後半から1970年代中盤にかけて発表した一連のアルバム群は「アーティストとしての完全覚醒期(golden period)」と評され、音楽史に残る名作を多数生み出しました。

なぜこれらのレコードを聴くべきか

  • 楽曲の完成度:メロディ、ソングライティング、アレンジのクオリティが高く、ポップ性と実験性のバランスが取れている。

  • プロダクション革新:T.O.N.T.O.などの大型シンセや、クラーク・ヴォーカル以外の多楽器プレイによる一人多重録音など、当時としては先進的な音作りが行われた。

  • 社会的・人間的メッセージ:政治・人種問題、愛、自己肯定、スピリチュアルなテーマなど、内容の幅が広い。

  • 影響力:後続のR&B、ファンク、ヒップホップ、ポップ/ロック系アーティストに与えた影響が大きい。

おすすめレコード(厳選解説)

1. Talking Book(1972)

概要:Stevie Wonder の「完全覚醒期」の初期を飾る名盤。ソウル/ポップのメロディセンスとシンセサイザー/クラヴィネットを駆使したプロダクションが明確に打ち出された作品です。

  • 代表曲:”Superstition” — クラヴィネットのリズムが特徴的。ファンクとポップの融合を象徴する一曲。

  • 聴きどころ:メロディの即効性とグルーヴ、ヴォーカルの表現力。シンプルな編成ながら音像が凝縮されている点。

  • 制作のポイント:Robert Margouleff & Malcolm Cecil といった当時のエンジニア/プロデューサーチームとの協業により、シンセの利用法が飛躍的に進化しました。

2. Music of My Mind(1972)

概要:Talking Book と同年に近い時期に発表されたアルバム。より実験的でパーソナルな側面が強く出た作品で、Stevie が自身の音楽的世界を構築していく過程がわかります。

  • 代表曲:”Love Having You Around”、”Superwoman (Where Were You When I Needed You)” など。

  • 聴きどころ:シンセやフェンダーローズ、ハーモニカにおける多重録音で、Stevie 自身がほとんどの楽器を演奏しているトラックが多い。

3. Innervisions(1973)

概要:政治的なメッセージや社会批評が色濃く出た傑作。都市生活や差別、薬物問題などをテーマにしたリアリティあるリリックと、洗練されたプロダクションが高く評価されます。

  • 代表曲:”Living for the City” — 都市の不正義を描いた劇的な長編。/ “Higher Ground” — 福音性とグルーヴを融合したナンバー。

  • 聴きどころ:曲ごとにドラマ性とエモーションがあり、コンセプトアルバム的なまとまりを感じられる。

  • 影響:ソウルやR&Bの枠を超え、社会的メッセージと大衆音楽の融合例として現在でも参照される作品。

4. Fulfillingness' First Finale(1974)

概要:Innervisions の流れを受けつつ、より抑制の効いた成熟したサウンドを作り上げた作品。抒情性と内省的なテーマが目立ちます。

  • 代表曲:”Boogie On Reggae Woman”、”Creepin'” — 幅広い表現と落ち着いたアレンジが特徴。

  • 聴きどころ:音数を絞り、余白を活かしたアレンジから聞こえる繊細さ。

5. Songs in the Key of Life(1976)

概要:Stevie Wonder のキャリアハイライトとされる超大作(2枚組+EP)。ジャンルを越えた多様な音楽性、豊かなアレンジ、社会性と個人的感情のバランス、すべてが詰まっています。

  • 代表曲:”Sir Duke”、”I Wish”、”Isn't She Lovely”、”As”(デュエット)など多数。アルバム全体が名曲揃いと言っていい内容。

  • 聴きどころ:ポップなダンスナンバーからソウルフルなバラード、ジャズやゴスペルの要素まで幅広くカバー。曲間の流れも含めた「アルバム体験」が強力。

  • 意義:商業的成功だけでなく、音楽的完成度の面でStevie の到達点と見なされることが多い作品です。

6. Hotter than July(1980)

概要:1970年代の集大成的な要素と1980年代的なポップ性が混じったアルバム。よりダンス寄りかつメッセージ性も併せ持つ作品。

  • 代表曲:”Master Blaster (Jammin')”、”I Ain't Gonna Stand for It” など。

  • 聴きどころ:カリブ/レゲエへの接近や、ポップ寄りの楽曲構成が目立つ。

必聴トラック(短めのガイド)

  • Superstition — クラヴィネット/ファンクの代表。

  • Living for the City — 社会派ソングの金字塔。

  • Isn't She Lovely — 私的な感情を普遍化したポップバラード。

  • Higher Ground — スピリチュアルかつダイナミックなグルーヴ。

  • I Wish — 懐古的なグルーヴと切れ味の良いアレンジ。

聴き方のヒント(レコードや音源そのものの物理的メンテナンス以外)

  • アルバム単位で聴く:特に1970年代の作品はアルバム全体でテーマや流れがあるため、曲を断片的に聴くより通して聴くことをおすすめします。

  • 歌詞に注目する:ポリティカル/社会問題を扱う曲が多いので、歌詞を読みながら聴くと深みが増します(日本語訳や注釈を用意して聴くと理解が深まります)。

  • 楽器構成を追う:クラヴィネット、ローズ、モーグ/TONTO 系のシンセ、ハーモニカなど、Stevie の多彩な楽器使いを意識すると発見が多いです。

  • 時代背景を意識する:70年代初中盤のアメリカの社会情勢(公民権運動後の展開、都市問題など)を踏まえると歌詞の重みが増します。

名盤が持つ現代的な意味

Stevie Wonder の70年代作品は、単に名曲・名盤が多いだけでなく、「アーティストが音楽的実験とポピュラー性を両立させ、社会的メッセージを普遍的なポップフォームに落とし込む」ことの一つの完成形を示しています。現代のR&B/ポップメイカーたちが参照するべき教科書的録音でもあり、初めて聴く人にも向く親しみやすさと、深掘りするほど味わいが出る層の厚さが同居しています。

入門〜深掘りのおすすめ順

  • 入門:Songs in the Key of Life(多彩さで一気にStevieを理解)

  • 次に:Talking Book(ファンク/クラヴィネットの名曲群)→ Innervisions(社会派の深みを体験)

  • さらに深掘り:Music of My Mind、Fulfillingness' First Finale(制作の変遷と内省的側面を確認)

参考文献

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