Al Jarreau名盤おすすめガイド|代表作と聴きどころ・ボーカル技法を徹底解説

イントロダクション:Al Jarreauとは何者か

Al Jarreau(アル・ジャロウ、1940–2017)は、ジャズを出自としながらもポップ、R&B、ソウルまで自在に横断したボーカリストです。独特のスキャット、声色の多彩さ、リズムへの高度な感覚を武器に、ジャンルの枠を超えて多くのリスナーとミュージシャンに影響を与えました。本稿では「名盤」を切り口に、その音楽性と聴きどころを深掘りしていきます。

キャリアと音楽的特徴の概観

ジャロウのキャリアは、大学時代にコーラスとジャズに親しんだことから始まり、70年代のソロ始動以降、ジャズ寄りの作品からポップ指向の作品へと幅広く展開しました。特徴としては次の点が挙げられます。

  • 語り口的なフレージングとスキャット(即興的な声楽奏法)の高度な融合
  • 声色の変化を楽器的に使う(鼻に抜ける音、ファルセット、胸声の太さなど)
  • ビート感覚が強く、ジャズのリズム感とポップ/R&Bのグルーヴを同時に表現する能力
  • カバー曲からオリジナルまで、曲ごとに歌唱スタイルを変える「物語る」歌い方

名盤深掘りガイド

We Got By(1975) — ソロ初期のスタンスが見える作品

説明:ソロ・デビュー作。ジャズ的素養とソウル/ポピュラー感覚が混ざり合い、ジャロウの音楽的基盤がはっきり現れるアルバムです。

  • 聴きどころ:スキャットを含む即興的なやり取り、曲ごとの声色の使い分け。
  • おすすめトラック:ジャロウの声のレンジとコントロールがよくわかるナンバーを中心に。
  • 聴く際のポイント:アレンジよりも「歌の表現力」に注目。小編成の伴奏に対する声の返し方を聴くと、彼の音楽的出自がよく分かります。

Glow(1976) — 初期の洗練とポップ感の橋渡し

説明:前作からさらにポップな味付けが加わった作品で、メロディ重視の曲が目立ちます。ジャズ的な色合いは残しつつ、より広いリスナーに届く仕上がりです。

  • 聴きどころ:メロディラインの歌い回し、コーラスワーク、ポップとジャズのバランス。
  • おすすめトラック:ヴォーカルのニュアンスやブレス使いに注目できるナンバー。
  • 聴く際のポイント:音楽が「親しみやすく」なった過程を追うことで、後のクロスオーバー路線の前段階が見えます。

This Time / Breakthrough期(1980–1981) — クロスオーバーの成功、代表作「Breakin' Away」へ

説明:1980年代初頭、ジャロウはポップ/AOR的アプローチを強め、より広い商業的成功を得ます。なかでも「Breakin' Away」は彼の代表作で、ラジオやテレビで広く流れた楽曲を含みます。

  • 聴きどころ:キャッチーなフレーズと職人的な歌唱の融合。バンドとのアンサンブルの洗練。
  • 代表曲:ここから生まれたシングル群は、彼をポップ・シーンへ確実に押し上げました。特に聞き覚えのあるメロディやフックに注目。
  • 聴く際のポイント:編曲やプロダクションに耳を傾けつつ、ジャロウがどのように「歌で楽曲の核」を作っているかを追ってみてください。

Jarreau期(1983〜1986あたり) — グローバルな活動と多様化

説明:メジャーシーンで成熟した時期。R&Bやポップに加え、世界音楽的な要素や洗練されたスタジオワークが見られます。コラボレーションも増え、幅広い音楽家との交流が作品に反映されています。

  • 聴きどころ:スタジオならではのレイヤー感、エレクトロニクスと生楽器の融合、複雑なハーモニー。
  • おすすめトラック:コラボレーション曲やアレンジが凝っている楽曲を中心に聴くと、当時の音楽シーンとの接点が見えます。
  • 聴く際のポイント:プロダクションの変化を意識して聴くと、ジャロウが時代とどう向き合ってきたかが分かります。

テレビ/映画関連、後期作品 — 「ムーンライティング」などのポップカルチャー的足跡

説明:ジャロウはテレビドラマのテーマ曲(例:Moonlighting)でも広く知られており、ポップカルチャーへの影響も大きいです。晩年にかけては再びジャズ寄りの表現に回帰する面も見られます。

  • 聴きどころ:短いフレーズで強い印象を残すポップな表現力と、ライブでの自由な即興性の両立。
  • 聴く際のポイント:代表的なタイアップ曲とアルバム曲を並べて聴くことで、商業性とアーティスト性のバランスが見えてきます。

ボーカル技法とアレンジの見どころ(名盤を聴く際の視点)

名盤を深く味わうための具体的な着眼点を挙げます。これらを念頭に置くと、アルバムの聴き方が変わります。

  • イントロの声の入り方:ジャロウは曲ごとに「入りの一声」で世界観を決定づけます。最初のフレーズに注目してください。
  • フレーズの終わり方(エンディングの処理):フレーズを切るのか伸ばすのか、ビブラートの種類などで感情が表現されます。
  • スキャットの役割:単なる見せ場ではなく、楽器との対話/アンサンブルの一部として使われます。
  • 音色のレイヤー:ダブルトラックやコーラス処理による厚みの付け方、声を楽器的に使う工夫に注目。

アルバム別:おすすめの聴き方(プレイリスト化の提案)

初めてジャロウを体系的に聴くなら、次の順序がおすすめです。初期のジャズ感、クロスオーバーの華やかさ、そして成熟期の表現をバランスよく体験できます。

  • We Got By — ジャロウの原点を掴む
  • Glow — ポップ的親和性を確認
  • Breakin' Away(代表作) — 商業的成功と表現の融合を見る
  • 代表的なシングル(例:ムーンライティングのテーマなど) — ポップカルチャーでの役割を体験
  • 晩年のジャズ寄り作品やライブ録音 — 即興性と円熟味を味わう

後世への影響と評価

ジャロウはボーカリストとしての技術だけでなく、ジャンルを横断する姿勢で多くの後進に影響を与えました。ポップ/R&Bシーンのシンガーにとどまらず、ジャズ・ボーカルの教科書的存在として評価される側面もあります。複数の主要音楽賞を受賞するなど、公的な評価も高く、音楽史上における「声の魔術師」としての地位を確立しました。

まとめ:Al Jarreauの名盤をどう楽しむか

Al Jarreauの名盤群は、単に「良い曲」が集まっているだけでなく、ボーカル表現の教科書でもあります。アルバムごとの制作背景や時代性に目を向けつつ、以下の点を意識して聴くとより深く楽しめます。

  • 声そのものを「楽器」として聴く(発音、色合い、息づかい)
  • 曲ごとに変わるアプローチ(ジャズ即興→ポップな表現→R&B的グルーヴ)を比較する
  • 代表的な楽曲だけでなくアルバム全体の流れ(曲順や間)を味わう

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