アル・ジャロウ完全ガイド:代表曲解説・歌唱テクニックとおすすめ名盤・聴き方

アル・ジャロウ(Al Jarreau)とは

アル・ジャロウはアメリカ出身のジャズ/ポップ/R&Bシンガーで、独自のスキャットや声の多彩な表現で知られます。ジャンルの垣根を越えた活動でポップ・チャートにも食い込み、グラミー賞を複数受賞するなど幅広い評価を得ました。歌唱の柔軟性とリズム感、インプロヴィゼーションの巧みさが彼の大きな魅力です。

代表曲の深掘り

以下では、アル・ジャロウの代表曲をピックアップし、それぞれの楽曲が持つ音楽的特徴、歌唱技法、制作上のポイント、ライブでの聴きどころなどを詳しく解説します。

  • We're in This Love Together

    • 概要:アル・ジャロウの代表的なポップ・ヒットのひとつで、親しみやすいメロディと滑らかなグルーヴで幅広いリスナーに届きました。

    • 編曲・プロダクション:ポップ寄りのアレンジでストリングスやコーラス、洗練されたギター/キーボードの間奏が効いています。プロフェッショナルなスタジオワークによりラジオ向けにも最適化されたサウンドです。

    • 歌唱のポイント:ジャロウの特徴である“語りかけるようなフレージング”と、サビやブリッジでの柔らかなフェイク(即興的な装飾)が印象的。決して大声を張らず、ニュアンスとタイミングで感情を伝える典型です。

    • ライブでの聴きどころ:原曲通りの美しい歌唱に加え、ラストでのスキャットやフェイクがより即興的に展開されることが多く、スタジオ録音とは違ったスリルが味わえます。

  • Breakin' Away(表題曲/アルバムの代表曲)

    • 概要:アル・ジャロウがポップ/フュージョンのリスナーにも広く届くきっかけとなった楽曲やアルバムの中心曲。歌とバンド全体が一体となって軽やかに前へ進む感覚を作ります。

    • ハーモニーとリズム:ジャズ的なコード進行を基盤にしつつ、ファンクやポップのリズム感を取り入れたクロスオーバー・サウンド。複雑さを感じさせずに洗練された和声進行が聴けます。

    • 歌唱のポイント:テンポ感の取り方と英語詩の母音処理でメロディを滑らかに歌い上げる技術が光ります。フレーズ終わりの“抜き”や細かなヴァイヴレーションが感情を強めます。

    • 制作面:スタジオ・ミュージシャンとの息の合ったインタープレイが鍵。アンサンブルの隙間にジャロウの声が柔らかく溶け込みます。

  • Mornin'

    • 概要:ポジティヴで爽やかな朝の情景を歌ったナンバー。ソウルフルでありながら軽やかなグルーヴが特徴です。

    • 表現技法:アタックの柔らかさ、息のコントロール、楽器群との呼吸を合わせるセンスが際立ちます。楽句の始まりや終わりを“ほんの短く”伸ばしたり縮めたりして、人間味あるルーズさを生んでいます。

    • ライブの魅力:観客とのコール&レスポンスや、イントロの即興で場の空気を一気に温めることが多く、セット中のハイライトになりやすい曲です。

  • Moonlighting(テレビ『ムーンライトニング』のテーマ)

    • 概要:テレビドラマのテーマ曲として知られ、短い時間でメロディと世界観を印象づけるコンパクトな名作。メディア楽曲としての成功例です。

    • 楽曲設計:短い中にフックが凝縮されており、歌詞の語り口とメロディの組み立てが明快。劇的な効果を狙ったダイナミクス設計がされています。

    • 歌唱のポイント:限られた時間でキャラクターを見せるため、ディクション(言葉の明瞭さ)と感情の切り替えが重要になります。ジャロウはその点で非常に巧みでした。

  • Spain(チック・コリア作のカバーでの名演)

    • 概要:チック・コリアの名曲「Spain」をボーカルで解釈したライブ演奏は、ジャロウのインプロヴィゼーション能力とスキャットの凄さがよく分かる名場面です。

    • 即興性の見せ場:器楽曲をボーカルで表現する際、ジャロウは楽器的なフレーズのコピーに留まらず、独自のフレージングやリズム・変化を加えて“声で楽器を演奏する”ように聴かせます。複雑なリズムやコード進行に対しても的確に反応する高度な耳と声の統御が求められます。

    • 聴きどころ:ソロ部分でのスキャットの語彙(音色やアーティキュレーションの多様さ)、拍の内外を行き来するリズム感、曲のクライマックスでの表現拡張などが際立ちます。

歌唱テクニックの解説(アル・ジャロウの“核”)

  • スキャットと声の“模倣力”:楽器を模した音色や、パーカッション的な発声を混ぜる独自のスキャット術。声色を自在に変えてメロディやリズムの“役割”を演じ分けます。

  • フレージングと“息づかい”:歌詞の語尾やフレーズの終わりにおける“抜き”や“ため”を多用し、感情の輪郭を出すのが特徴。

  • ジャンル横断のアプローチ:ジャズ的即興、R&Bのグルーヴ、ポップのフック感を自然に組み合わせるスキル。これによりライブでもレコーディングでも幅広い聴衆に訴えかけられます。

名盤(入門盤・押さえておきたいアルバム)

  • Breakin' Away:ポップ/フュージョンとしての到達点。代表曲とともにジャロウの魅力が分かりやすく出ています。

  • 初期〜70年代の作品群:ジャズ寄りの表現やライブでの即興性が色濃く出ている時期の音源は、歌の技術と感性を知るうえで有益です。

  • ライブアルバム・映像:即興やスキャットの真髄はライブでこそ発揮されるため、コンサート録音や映像は必聴です(「Spain」などの名演が収められている場合が多い)。

聴き方・楽しみ方の提案

  • スタジオ録音は「楽曲=完成形」を味わうのに最適。アレンジや細部のプロダクションに注目すると新たな発見が出ます。

  • ライブ音源は即興の自由さとリスクを楽しむために最適。特にスキャットやセッションの応酬を聴くと、ジャロウの表現力の幅がよく分かります。

  • 歌詞とフレージングを別々に追ってみる:歌詞の意味と、それをどう声で表現しているか(ニュアンス、間の取り方)を比較すると彼の“技”が見えてきます。

まとめ

アル・ジャロウは声という“楽器”を最大限に生かしてジャンルを横断した表現を行った稀有なアーティストです。代表曲のスタジオ録音で制作の妙を味わい、ライブ音源で即興性とスキャットの妙技を堪能する――両者を行き来することで彼の全体像が見えてきます。初めて聴く方はまず代表的なヒット曲から入り、そこからライブ演奏やカバー曲へと広げていくことをおすすめします。

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