Brian Eno入門:アンビエントとポップを紡ぐ必聴アルバムと聴きどころガイド

Brian Eno — サウンドの冒険家を聴く

Brian Eno(ブライアン・イーノ)は、ロック/ポップの枠を越え、アンビエント音楽の創始者の一人として知られるイギリス出身の作曲家・プロデューサーです。1970年代のソロ作やコラボレーション、プロデュースワークを通じて、音づくりの発想や「環境としての音楽」という概念を広めました。本コラムでは、Eno のキャリアを代表するおすすめレコードをピックアップし、それぞれの聴きどころと背景を深掘りします。

聴き始めの1枚:Here Come the Warm Jets(1974)

特徴:グラム・ロック的な派手さと実験精神が混ざり合ったソロ・デビュー作。ロックの枠組みを残しつつ大胆なサウンド処理やユーモラスな歌詞が光ります。

  • なぜ聴くべきか:Eno が「ソロ・アーティスト」としての出発点を示したアルバムで、プロデューサー/音響職人としての側面がボーカル曲にも反映されています。ポップと実験の境界がどのように曖昧にされるかを体感できます。
  • 聴きどころ:煌びやかなギターやサウンドコラージュ、独特のボーカル表現。エネルギーのある曲と不可思議な短編的トラックが混在します。

実験的な歌もの:Taking Tiger Mountain (By Strategy)(1974)

特徴:物語性や演劇性を持つ歌ものアルバム。歌詞に登場する不思議な人物や情景、そしてサウンドメイクの実験性が同居しています。

  • なぜ聴くべきか:Eno のソングライティングのユニークさが表れた作品。音響的なトリートメントが歌の語り口を変貌させ、ロック/アート・ポップの掟をいくつも破ります。

転換点:Another Green World(1975)

特徴:歌ものとインストルメンタル(アンビエント寄り)の中間を行き来する傑作。情景を描くインストゥルメンタルと抑制されたポップ曲が混在しており、「Eno 的」な世界観が明確になります。

  • なぜ聴くべきか:ソロ作の中でも評価が高く、以降のアンビエント路線やテクスチャ重視の制作に繋がる重要な作品です。メロディと音色の配置が示す「風景としての音楽」を理解する助けになります。
  • 聴きどころ:静謐なインストパートと粒立つ音色のコントラスト、空間の取り方。歌もののフレーズ自体がサウンドの一部として扱われます。

アンビエント創造:Discreet Music(1975) と Ambient 1: Music for Airports(1978)

特徴:実験的なプロセスと目的を前面に出した2作。特に「Music for Airports」はアンビエント音楽の定義書とも言える作品で、意図的に“環境”に溶け込むよう設計されています。

  • Discreet Music:手法(プロセスミュージック、テープループや段差)を実験的に提示する作品。音の生成や反復が持つ美学を示します。
  • Music for Airports:空港という公共空間のためにデザインされた音楽というコンセプトが画期的。時間の流れに寄り添うような穏やかな音響は、背景としても能動的にも楽しめます。
  • なぜ聴くべきか:音楽が「流れる風景」として機能する可能性を体感できます。忙しい現代におけるサウンドデザインの原点の一つです。

映画/風景音楽の深まり:Music for Films(1978) と Apollo: Atmospheres and Soundtracks(1983)

特徴:映像と密接に結びつくようなアンビエント作品群。短いスケッチや場面音楽的なトラックが多く、映画やドキュメンタリーのための音の作り方を提示します。

  • Apollo(Harold Budd とともに):宇宙的で浮遊感のあるテクスチャが特徴。「An Ending (Ascent)」のような楽曲は映画やドキュメンタリーでも頻繁に使われました。
  • なぜ聴くべきか:映像と結びついた音楽がどのように「感情」を補助するか、また環境音楽の表現幅を知るうえで示唆に富みます。

ポップと実験の融合:Before and After Science(1977)

特徴:ポップ・ソングの構造に実験的な音色やアレンジが溶け込んだ作品。歌もの中心ながら、アンビエント的な間やサウンドスケープの扱いが随所に見られます。

  • なぜ聴くべきか:Eno の「ポップと実験の折衷」を理解するのに最適。メロディアスな面と先鋭的な音響処理がバランス良く配されています。

プロデューサーとしてのEno(聴き方のヒント)

Eno自身の作品だけでなく、彼がプロデュース/共同制作したアルバムを聴くことでその影響の広がりがより鮮明になります。特に以下は必聴です(Enoの作曲作品ではないが、音の処理や制作哲学が色濃く反映されています)。

  • David Bowie(Low、"Heroes" などのベルリン三部作に大きく関与)
  • Talking Heads(More Songs About Buildings and Food、Fear of Music、Remain in Light など)
  • U2(The Unforgettable Fire、The Joshua Tree における初期の共同制作)

これらを自分の好きな順で混ぜて聴くと、Eno の「プロデューサー視点」がどのようにアーティストの音楽性を拡張しているかが見えてきます。

聴き方の提案(初〜中級リスナー向け)

  • 入門:Here Come the Warm Jets → Another Green World → Before and After Science の順で、Eno の歌もの〜実験性の変遷を追う。
  • アンビエント入門:Music for Airports → Discreet Music → Apollo の順で、環境音楽としての機能と表現の違いを体感する。
  • 発展:Eno がプロデュースした Bowie や Talking Heads、U2 を挟んで聴くと、彼のサウンドメイキングが多様な文脈でどのように働くかがわかる。

Eno の音楽をより深く楽しむために

Eno の面白さは「何が音楽か」「音楽はどのように生活や環境と結びつくか」を常に問い続けている点にあります。初見でわかりやすいメロディを期待する作品もあれば、何度も聴き返すことで構造やテクスチャの妙が見える作品もあります。気負わずに流してみる、あるいは集中して細部を聴く、双方の聴き方を行き来するのがおすすめです。

参考文献

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