ルー・リード完全ガイド:まず聴くべき名盤10選とアルバム別おすすめ曲・聴きどころ
はじめに — ルー・リードという存在
Lou Reed(ルー・リード)は20世紀後半のロック/アートミュージックの重要人物です。The Velvet Undergroundの中心人物としての前衛的な出発から、ソロになってのポップ志向、劇的なコンセプト作、実験的ノイズまで、常に境界を越える挑戦を続けました。本稿では、ルー・リードの「まずこれを聴いてほしい」レコードを厳選し、それぞれの背景・聴きどころ・推奨曲や聴き方のヒントを深掘りして紹介します。
The Velvet Underground & Nico(1967)
The Velvet Undergroundのデビュー作。プロデューサー/パトロン兼メンターとしてAndy Warholが関わり、バナナのジャケットはあまりにも有名です。本作は60年代ポップとは一線を画し、都市の暗部やドラッグ、性的マイノリティを等身大で描いた歌詞と、シンプルかつ反復的な演奏が山場を作ります。
- おすすめ曲:“Sunday Morning”, “Heroin”, “Venus in Furs”, “I'm Waiting for the Man”
- 聴きどころ:John Caleのミニマルなアレンジ、Reedの語りのような歌唱、ニコのコーラスが生む陰影。歌詞と音像のリアリティが衝撃を与えます。
- 入門ポイント:ロックの“暗いリアリズム”を知るには最適。史的価値が高く、複数のリマスター/プレスがありますが、オリジナルの温度感を味わいたければ初期プレスや良音のアナログ盤を探す価値あり。
White Light/White Heat(1968)
デビュー作の延長線上で、より荒々しく実験的になった2作目。ノイズやディストーション、即興的なパフォーマンスの比重が高く、時に聴く者を突き放すような強度を持ちます。
- おすすめ曲:タイトル曲“White Light/White Heat”、“The Gift”、“Sister Ray”
- 聴きどころ:特に“Sister Ray”の長尺即興は、ロックにおける“解体と再構築”を象徴するトラック。暴力的なエネルギーと即興の美学を体感できます。
Loaded(1970)
メンバー脱退や変化を経た後の作品で、メロディとポップ性を強めた一方、街の物語を描くリリックは健在。バンド解体前の“総括”的な要素を持ちつつ、ヒット志向の曲も多く収録されています。
- おすすめ曲:“Sweet Jane”, “Rock & Roll”, “Oh! Sweet Nuthin'”
- 聴きどころ:ギターリフとシンプルなコーラスが印象的。ラジオ寄りの曲も多く、Velvetの“入り口”として聴きやすい。
Transformer(1972)
David BowieとMick Ronsonがプロデュースしたソロとしての代表作。商業的にも成功し、ルー・リードの名を広く知らしめたアルバムです。都会の孤独やアウトサイダーの視点をポップかつエレガントに描いた名盤。
- おすすめ曲:“Walk on the Wild Side” (代表曲)、“Perfect Day”, “Satellite of Love”
- 聴きどころ:Bowieのプロデュースによるアレンジと、Ronsonのギター/ストリングの豪華感。ルーの語り口がポップ・ソングと見事に融合しています。
- 聴くシチュエーション:歌詞の細部を追いたければ静かな環境で。特に“Walk on the Wild Side”はコーラスやベースラインのディテールが楽しい。
Berlin(1973)
従来のシンプルなロック路線を離れ、劇的で悲劇的なコンセプト作に挑んだ作品。ブライアン・イーノやBowieの時代とは異なる、ルー独自の「暗い物語」を展開します。発売当時は賛否両論でしたが、深いドラマ性と哀しみが胸に残ります。
- おすすめ曲:“Berlin”, “Men of Good Fortune”, “Caroline Says”
- 聴きどころ:音楽的には緻密なアレンジとストリングス、悲劇的な物語を語るLouの表現力。初回の評価に惑わされず、通して聴くことで全体の構成美が見えてきます。
Rock 'n' Roll Animal(1974)
ルーのライブ盤の代表作。スタジオ音源とは趣を異にし、ハードロック寄りのアレンジで名曲群が再構築されています。ライブ・ギターワークが目立つので、ロック的ダイナミズムを味わいたい人に。
- おすすめ曲(ライブでの聞きどころ):“Sweet Jane(~Jump into the Fire メドレー)”, “Heroin”
- 聴きどころ:Steve HunterやDick Wagnerらのギターが炸裂するアレンジで、曲の別側面を見せてくれます。ステージでの演出力に驚くはずです。
Metal Machine Music(1975)
賛否両論の“ノイズの2枚組”で、名義はルー・リード。ギターのフィードバックやループを延々と積み上げる実験作です。音楽における“破壊”や“挑発”としてのアートを体現しています。
- おすすめの聴き方:好奇心を持って“実験”として通してみる。普通の曲を期待すると裏切られるため、前知識を持って臨む方が良いです。
- 聴きどころ:反音楽的ともいえる構成が、彼のアーティストとしての自由さを示している点に注目。
New York(1989)
1980年代末、政治・社会をストレートに扱った傑作。毒気とユーモア、怒りが同居した歌詞は、成熟した視点と鋭い観察力に満ちています。ソロ期の再覚醒とも言える作品です。
- おすすめ曲:タイトル曲“New York”、“Romeo Had Juliette”
- 聴きどころ:歌詞のメッセージ性が非常に強いので、歌詞を追いながら聴くのが良い。ルーの語り口がニュースのように街を描き出します。
Magic and Loss(1992)
死と喪失をテーマにした深いアルバム。親しい人々の死を受けて作られ、静かな悲しみと祝祭的な瞬間が交差します。ルーの中年期の傑作と評されることが多い作品です。
- おすすめ曲: “Magic and Loss – The Summation”, “What We Are Saying”
- 聴きどころ:感情の機微や時間の流れを繊細に捉えた歌詞。静かな曲が多いので、集中して聴くと深く刺さります。
Songs for Drella(with John Cale, 1990)
元VelvetメンバーJohn Caleとの共作。Andy Warhol(通称“Drella”=Dracula+Cinderella)を追悼するコンセプト・アルバムで、二人の視点が交錯します。Velvetの歴史とWarholとの関係性を追うには重要な一枚。
- おすすめ曲: “Small Town”, “Hello It's Me”
- 聴きどころ:ReedとCaleの異なる声と作風が並ぶ対話形式。Velvet時代の記憶を反芻する感覚が味わえます。
聴きどころ総論 — ルー・リードを深く味わうためのヒント
- 歌詞を読むこと:ルーは物語性/描写力に長けているので、歌詞の一行一行が重要です。和訳でも良いので注目してください。
- 時代背景を押さえる:60年代のアンダーグラウンド、70年代前半のグラム/アートロック、そして80〜90年代の政治性と個人的題材の成熟。各期ごとの文脈が理解を深めます。
- コラボレーションに注目:David BowieやJohn Cale、Mick Ronson、後期ではMetallicaまで、共演者がルーの音楽性を変えることが多いです。誰と作ったかで“顔”が変わるのも魅力。
- 一枚丸ごと聴く習慣:コンセプト作やドラマ性の高い作品(Berlin、Magic and Lossなど)は通しで聴くと真価が分かります。
まとめ
Lou Reedは単なる“パンクやオルタナの先駆者”という枠を超え、ロックを通じて語る文学者のような存在でした。ここで挙げたアルバムは代表作であると同時に、それぞれに異なる顔を持つため、どの作品から入っても新たな発見があります。まずはVelvetの出発点とTransformerの“人気曲”、そこからBerlinやMagic and Lossの深みに踏み込む──という流れがおすすめです。
参考文献
- Lou Reed — Wikipedia
- Lou Reed | AllMusic
- Lou Reed: 40 Greatest Songs — Rolling Stone
- The Velvet Underground & Nico — Wikipedia
- Transformer (album) — Wikipedia
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