リッジ回帰とは?仕組み・特徴・使いどころをわかりやすく解説
リッジ回帰は、データ分析や機械学習で使用される「正則化手法」のひとつで、特に多重共線性(説明変数同士の相関)が強い場合に効果を発揮します。
通常の回帰分析ではうまくいかない場面でも、リッジ回帰を使うことで安定した予測モデルを作ることができます。
本記事では、リッジ回帰の意味、仕組み、効果、適したケースまでをわかりやすく解説します。
リッジ回帰とは?
リッジ回帰(Ridge Regression)とは、
回帰分析に「ペナルティ(罰則項)」を加えることで、過学習を防ぎつつ安定したモデルを作る手法
のことです。
このペナルティは回帰係数の大きさを抑える効果があり、次の2つを実現します。
- モデルが複雑になりすぎるのを防ぐ
- データにノイズが含まれていても安定する
リッジ回帰は、特に説明変数が多い場合や、相関の強い変数がある場合に有効です。
リッジ回帰の仕組み
通常の線形回帰(最小二乗法)は、
誤差(残差)の二乗和を最小にする
という考え方でモデルを作ります。
一方、リッジ回帰ではこれに追加して、
回帰係数の二乗和にペナルティ(λ)をかける
という項を加えます。
式で表すと次のようになります。
- 最小二乗法:
誤差の二乗和を最小化 - リッジ回帰:
誤差の二乗和 + λ ×(係数の二乗和)を最小化
このλ(ラムダ)はペナルティの強さを表し、値が大きいほど係数は小さく抑えられ、モデルはシンプルになります。
なぜペナルティを加えるのか?
データにノイズが多いと、最小二乗法だけでは「データに過剰にフィットしたモデル(過学習)」ができてしまいます。
しかしリッジ回帰は、
- 係数を極端に大きな値にしない
- 複雑になりすぎないようにする
という性質があるため、ノイズに強く、より再現性の高いモデルになります。
リッジ回帰が効果的なケース
多重共線性がある場合
説明変数同士が似た動きをする(相関が強い)と、通常の回帰分析では係数が不安定になってしまいます。
リッジ回帰はこれを緩和し、安定した係数を提供します。
説明変数の数が多い場合
特徴量が多いデータセットでは、通常の回帰分析よりもリッジ回帰のほうが安定しやすくなります。
ノイズの多いデータを扱う場合
観測誤差が大きいデータほど、リッジ回帰の正則化効果が有効です。
リッジ回帰とラッソ回帰の違い
リッジ回帰と同じ正則化手法に「ラッソ回帰」がありますが、それぞれ特徴が異なります。
リッジ回帰
- ペナルティ:係数の二乗(L2正則化)
- 特徴:係数は小さくなるが、完全にゼロにはならない
- 向いている場面:多重共線性の強いケース
ラッソ回帰
- ペナルティ:係数の絶対値(L1正則化)
- 特徴:不要な係数が「ゼロ」になる → 変数選択が可能
- 向いている場面:特徴量を減らしたい場合
両者を組み合わせた「Elastic Net(エラスティックネット)」も存在します。
リッジ回帰のメリット
- 多重共線性に強く、安定したモデルが作れる
- 過学習を防ぐ
- 多くの説明変数を扱っても破綻しにくい
- 実装が簡単で計算コストも比較的低い
リッジ回帰の注意点(デメリット)
- 不要な変数の係数がゼロにならない(変数選択ができない)
- λ(正則化パラメータ)のチューニングが必要
- 直感的に理解しにくい部分もある
リッジ回帰を理解すると、より強い予測モデルが作れる
リッジ回帰は、データ分析における「安定性向上」のための強力な手法です。
特に、説明変数が多い・共線性が高い・ノイズが多いといった難しいデータで威力を発揮します。
機械学習のモデル作成にも広く使われるため、回帰分析をさらに深めたい人にとって、必ず押さえておきたい技術です。
参考文献
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