オノ・ヨーコのレコード入門:厳選7枚の名盤と聴きどころガイド
はじめに — 音楽家オノ・ヨーコという存在
オノ・ヨーコは、前衛芸術家としての出自を音楽に持ち込み、ロック/ポップの枠を超えた表現で世界的に知られるアーティストです。Fluxus 的な実験精神、フェミニズムや平和へのメッセージ、そしてジョン・レノンとのコラボレーションを通した社会的発信。レコードを手に取るとき、その一枚には戦後美術からの影響、実験音楽の衝動、ポップの産業性への抵抗といった複層的な文脈が詰まっています。本コラムでは、聴きどころ・背景・どのように楽しむか、を中心にオススメのレコードを深掘りして紹介します。
オノ・ヨーコの音楽的特徴(簡潔に)
- 前衛/実験音楽とポップ・ソングの混在:叫びやノイズ、断片的なヴォーカル表現がメロディと共存します。
- 政治性とパーソナル性の併存:平和やフェミニズムを歌う一方で、個人的な喪失や愛を直截に表現します。
- コラボレーション志向:ジョン・レノン、Plastic Ono Band をはじめ、後年のリミックスやゲスト参加作でも新しい聴き手を獲得。
- 形式への挑戦:普通のポップ曲に見えるものでも、構造や演出で意表を突くことが多いです。
おすすめレコード(名盤・入門編からコアな一枚まで)
Yoko Ono/Plastic Ono Band(1970)
オノが本格的に音楽活動の場で存在感を示した初期の重要作。前衛的な表現とバンド編成によるロック的手法が融合しており、当時のアヴァンギャルド・シーンとロックの接点を体現しています。生々しいヴォーカル、断続的なノイズ、ミニマルな伴奏が交互に現れる構成は、当時のリスナーに強烈な印象を与えました。
- 聴きどころ:即物的な感情表現と実験的サウンドの併置。アート作品としても評価される力作。
- どんな人にオススメか:前衛音楽や60〜70年代の実験的ロックに興味がある人。
Fly(1971)
より多様なサウンドスケープと構成の実験がなされた作品。弦や木管などのアコースティックな要素と、前衛的なヴォーカル表現が混ざり合い、情緒的な断片が時間軸の中で浮遊します。アート・ミュージックとしての深みが強調される一枚です。
- 聴きどころ:叙情性と破壊性のバランス。曲によっては詩的で静かな瞬間も現れます。
- どんな人にオススメか:伝統的な歌ものと前衛表現の「狭間」を楽しみたい人。
Approximately Infinite Universe(1973)
ポップで歌もの寄りのアプローチを多く含み、メロディとメッセージが前面に出た作品です。歌詞は社会批判や女性の立場を正面から扱うことが多く、オノの言葉の鋭さが際立ちます。実験だけではない、ソングライターとしての顔を強く感じられるアルバムです。
- 聴きどころ:キャッチーな部分と皮肉が同居する楽曲群。歌詞に注目して聴くと新たな発見があります。
- どんな人にオススメか:メッセージ性のあるロック/ポップを求めるリスナー。
Season of Glass(1981)
ジョン・レノンの死後に発表されたアルバムで、悲嘆と怒り、そして生への希求が混ざり合う重厚な作品。ポップな側面と暗く切実な感情表現が共存し、個人的な喪失を通して世界に問いを投げかける作りになっています。ジャケットや曲ごとの演出まで含め、アーティストとしての強い発言が感じられます。
- 聴きどころ:悲しみとユーモアが交錯する表現—声の取り扱い方に注目。
- どんな人にオススメか:歌詞の重層性やアーティストとしての「声明」を重視する人。
Walking on Thin Ice(シングル、1981)
1981年に発表され、ジョン・レノンがミックス作業を終えた直後に彼が射殺されたため、歴史的にも象徴性の高いシングルです。ダンスビートとエッジの効いたギター、そしてオノの強いヴォーカルが融合した作品で、商業的にも成功しつつアーティスティックな切迫感を残します。
- 聴きどころ:緊張感あるアレンジと即物的な歌唱の力強さ。
- どんな人にオススメか:ダンス・ビートのあるオノ像を知りたい人、シングル・ナンバーで彼女のダイナミズムを体感したい人。
Rising(1995/1996)
90年代の復帰作で、政治的メッセージや怒り、希望を一貫して提示する力作。騒音やアグレッシブなギター、重厚なリズムが前面に出ており、プロテスト・ソングとしての側面が強調されています。長年のキャリアを経たあとの鋭さが詰まった一枚です。
- 聴きどころ:怒りと救済のダイナミクス。詩的なフレーズとノイズの対比に注目。
- どんな人にオススメか:社会的なテーマを持つロックやアヴァンギャルドな音像が好みの人。
Yes, I'm a Witch(2007)
多数の現代アーティストがオノの楽曲をリワークしたリミックス/トリビュート集。Bjork、Peaches、The Flaming Lips などが参加し、オノの楽曲が様々な解釈を受けて生まれ変わる様子を見ることができます。原曲のエッセンスが別の文脈でどう響くかを体験するには最適です。
- 聴きどころ:原曲とリワークの比較。世代を超えたコラボレーションの面白さ。
- どんな人にオススメか:現代的なリミックス/コラボを通じてオノの楽曲世界を再発見したい人。
代表曲(キャリアを俯瞰するためのキーワード的リスト)
- Walking on Thin Ice — 歴史的にも象徴的なシングル。
- Don't Worry Kyoko(Mummy's Only Looking for Her Hand in the Snow) — 初期の激しいパフォーマンス曲として有名。
- Yang Yang — 言葉の鋭さとリズム感が際立つ楽曲(1970年代の代表作のひとつ)。
- Kiss Kiss Kiss — ポップかつエモーショナルな側面を示すナンバー。
初めてオノ・ヨーコに触れる人へのガイド
- 入門:まずは「Approximately Infinite Universe」や「Yes, I'm a Witch」を。前者は歌ものとして入りやすく、後者は現代アーティストによる解釈で親しみやすい。
- 実験性を体験したいなら「Yoko Ono/Plastic Ono Band」や「Fly」を。アート的ショックを受ける可能性がありますが、それも作品の重要な側面です。
- 歴史的背景を理解する:ジョン・レノンとの関係や1970年代の前衛シーン、80年代以降の社会的発言を知ると聴き方が深まります。
聴くときの楽しみ方・注目ポイント
- 声の使い方に注意:オノは「歌唱」と「声の表現」をあえて曖昧にすることが多く、叫びや囁きも含めて楽曲の一部です。
- 歌詞の直截性:短いフレーズに強いメッセージが凝縮されることがあるため、歌詞カードや訳詞を確認すると理解が深まります。
- 比較して聴く:原曲とカバー/リミックスを並べて聴くと、曲の普遍性や可塑性がよく分かります。
まとめ
オノ・ヨーコは「前衛」と「ポップ」の間を自由に行き来する稀有なアーティストです。レコード一枚一枚がその時代の思想や表現の試みを映しており、単なる音楽作品を超えたアートピースとして楽しめます。入門作から実験作、リミックス集まで幅広く揃えることで、彼女の多面的な魅力を堪能できるでしょう。
参考文献
- Yoko Ono — Wikipedia
- Yoko Ono/Plastic Ono Band — Wikipedia
- Fly (Yoko Ono album) — Wikipedia
- Approximately Infinite Universe — Wikipedia
- Season of Glass — Wikipedia
- Walking on Thin Ice — Wikipedia
- Rising — Wikipedia
- Yes, I'm a Witch — Wikipedia
- Yoko Ono — AllMusic
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