アラン・トゥーサン(Allen Toussaint)必聴レコードガイド:名盤・代表曲・収集のコツ
アラン・トゥーサン(Allen Toussaint) — おすすめレコード深堀コラム
アラン・トゥーサンはニューオーリンズを代表するピアニスト、作曲家、編曲家、プロデューサー。1950〜70年代を中心にローカル・ヒットから世界的ヒット曲の源流となる楽曲を多数生み出し、ニューオーリンズ・サウンドの形成に決定的な役割を果たしました。自身のソロ作はもちろん、他アーティストへの提供曲やプロデュース作品にも名盤・名シングルが多く、レコード収集の対象としても魅力的です。本稿では「音楽的観点」でおすすめ盤を深掘りし、各盤の聴きどころを解説します。
トゥーサンを知るための基本的な見取り図
- 立ち位置:ニューオーリンズR&Bの作曲家・編曲家/スタジオの才人。自ら歌手というより“裏方”として多くのヒットを支えた。
- 代表的な仕事:エルニー・K・ドー(Ernie K-Doe)「Mother-in-Law」やリー・ドーシー(Lee Dorsey)「Working in the Coal Mine」などのプロデュース/作曲。
- 音楽的特徴:軽やかなピアノ・プレイ、独特のスウィング感、洗練されたホーン/リズム・アレンジ。ニューオーリンズの土着性とソフィスティケイトされた都会感の両立。
おすすめレコード(ソロ作・代表盤)と聴きどころ
Toussaint(1971/しばしば「Allen Toussaint」表記)
トゥーサン自身のソロ作の中で「彼のソングライティングとアレンジ力が最もまとまって聴ける」アルバムの一つ。R&B、ソウル、ファンク、ニューオーリンズ・グルーヴがバランスよく混ざり、彼の鍵盤とプレゼンスが前面に出ます。特に歌もの/インスト両面での仕上がりが良く、ソロ作入門として最適。
聴きどころ:ピアノのフレーズ、ホーンの緻密な編曲、トゥーサン作の持つ“スナップ”感。
Southern Nights(原曲の印象が大きい楽曲は有名。トゥーサンのオリジナル音源を収める盤)
「Southern Nights」はトゥーサン作の名曲で、グレン・キャンベルによるカバーで大ヒットしました。トゥーサンの自演版を含むアルバム/シングルは、彼のオリジナル・アレンジとニューオーリンズ的な温度感がよく伝わります。カバーとの比較で聴くと、彼の原曲の色付け(スローな揺らぎ、コード選び)がよく分かります。
聴きどころ:原曲ならではのニュアンス、ローカルなグルーヴの描写。
Life, Love and Faith(初期〜70年代期のソウル色の強い作)
トゥーサンがソングライター兼アレンジャーとしての力量を発揮しているアルバム。ソウルフルでありながら随所にニューオーリンズ特有のリズム感があり、トータルで聴いたときのまとまりが素晴らしい。彼のヴォーカルをフィーチャーした曲もあり、“作り手”としての視点が強く出ています。
聴きどころ:ヴォーカルの表現、楽曲ごとのアレンジの転換、暖かいリズム隊。
The River in Reverse(Elvis Costelloと共作、2006)
ハリケーン・カトリーナ後のニューオーリンズを背景に、エルヴィス・コステロとトゥーサンが組んだ共作アルバム。震災の傷跡や復興への思いが楽曲ににじみ出ており、トゥーサンのキャリア後期での表現力が光ります。長年のシーンで培った音楽的深みと、ポップ/ロック的な感覚が融合した傑作です。
聴きどころ:歌詞に込められた社会性、温度感のあるピアノ、コステロとの化学反応。
シングル群(プロデュース/提供曲) — コレクションの価値
トゥーサンを語る上で欠かせないのが「他人に提供したヒット曲」。レコード収集では彼が作り・プロデュースした60年代のシングル(Ernie K-Doe「Mother-in-Law」、Lee Dorsey「Working in the Coal Mine」など)を物理媒体で追うことで、ニューオーリンズ・スタジオ・ワークの息づかいを感じられます。
聴きどころ:スタジオ・ワーク(コーラス、ホーンのミックス、アクセントの入れ方)、楽曲の即効性。
代表曲ピックアップ(必聴トラック)
- Mother-in-Law — Ernie K-Doe(作曲/プロデュース:アラン・トゥーサン)
- Working in the Coal Mine — Lee Dorsey(作曲/プロデュース)
- Fortune Teller — (トゥーサン作。後にロック勢にも広くカバー)
- Southern Nights — アラン・トゥーサン作(グレン・キャンベルのカバーで有名)
- Everything I Do Gonna Be Funky — トゥーサン自身の楽曲でファンキーな面を示す1曲
- Yes We Can Can — トゥーサン作(ポインター・シスターズ等の代表曲として知られる)
レコード収集の楽しみ方(音楽的な視点での選び方)
- オリジナルのアレンジを見る:トゥーサンは他人に提供した曲を自分でも録音していることがあるため、「提供曲のオリジナル/被カバー曲」を聞き比べるとアレンジの差が面白い。
- セッション・メンをチェック:ニューオーリンズの名手たち(のちにザ・ミーターズなどに繋がる面々)が参加している盤は、リズムのグルーヴ感や演奏の“間”が特に魅力的です。
- 時代ごとの音作りを楽しむ:60年代のシンプルなR&B〜70年代のソウル/ファンク、2000年代の復帰作まで、録音/編曲のアプローチが変化しているので時代ごとの比較ができる。
- シングル中心に掘る:トゥーサンの最重要楽曲の多くはシングルとしてリリースされたため、7インチ中心に集めると“ヒット”のリアルな現場感が得られます。
どのレコードから買うべきか(初心者向けプラン)
- まずはソロ作の代表盤(上記「Toussaint」や「Southern Nights」のようなアルバム)で彼自身の演奏・作曲を把握。
- 次に、Ernie K-Doe「Mother-in-Law」やLee Dorsey「Working in the Coal Mine」などのプロデュース/提供曲のオリジナル7インチを聴いて“裏方”としての力量を知る。
- さらに、Elvis Costelloとの共作「The River in Reverse」など近年作でキャリア全体の文脈を追うと、トゥーサンの音楽的厚みが見えてきます。
まとめ:アラン・トゥーサン盤を聴く価値
トゥーサンのレコードは「ニューオーリンズの土着性」と「洗練されたアレンジ力」が同居しており、1枚ずつ聴くごとに発見があります。ソングライター/編曲者/ピアニストとしての多面性を通じて、ポップス史やR&B史における彼の重要性を実感できるはずです。レコード収集の観点では、ソロアルバム、提供曲のオリジナル・シングル、そして共同制作盤をバランスよく揃えることをおすすめします。
参考文献
- AllMusic — Allen Toussaint Biography
- New York Times — Allen Toussaint obituary
- Rolling Stone — Allen Toussaint dies
- NPR — Allen Toussaint: A Legend Of New Orleans R&B
- Discogs — Allen Toussaint discography
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