ビスミラー・カーン(シェーナイ)完全ガイド:聴きどころとおすすめレコード・名盤の選び方

はじめに

ビスミラー・カーン(Bismillah Khan、1916–2006)は、インド古典音楽におけるシェーナイ(shehnai)の巨匠として世界的に知られています。庶民的で宗教的な場面に深く根ざしたこの楽器を、コンサートホールの正規の演奏ジャンルへと押し上げた功績は計り知れません。本稿では「聴きどころ」と「レコード(盤)おすすめ」を中心に、ビスミラー・カーンをより深く味わうためのガイドをお届けします。

ビスミラー・カーンとは — 聴き手が押さえるべき基礎知識

  • バックグラウンド:生まれはウッタル・プラデーシュ州のベナーラス(ヴァーラーナスィー)。伝統的な宗教音楽の現場で演奏する家系に生まれ、幼少期からシェーナイに親しむ。
  • 栄誉:パドマ・ヴィブーシャンやインド最高位の栄誉であるバラット・ラトナ(2001年)など多数の受賞歴を持つ。
  • 音楽的役割:シェーナイは本来寺院や結婚式などの場で用いられる楽器でしたが、彼はラーガ(raga)を基盤とする印度古典の即興音楽をシェーナイで表現し、楽器の地位を高めました。

音楽的特徴と「聴くときのポイント」

  • ヴィブラートと吐息(ブリージング)の使い方:シェーナイ特有の持続音と繊細なヴィブラートで、声のように「歌う」表現を展開します。フレーズの端での息づかいにも注目してください。
  • ラーガ展開の段取り:ラーガ導入部(アループ)、中盤の展開(ヴィジャイ、アルページョ)、テンポを上げた終盤(ティフラ)といった流れを追うと構造が分かりやすくなります。
  • 即興性:テーマの提示から徐々に装飾を重ね、聴衆とのやり取り(拍手や合図)を受けて変化する即興の妙を楽しんでください。
  • 宗教的・儀礼的要素:彼のレパートリーにはバジャン(宗教歌)やアザーン的な表現もあり、宗教性と純音楽性が混在します。

おすすめレコード(探し方と選び方の目安)

ビスミラー・カーンの音源は戦前〜戦後にかけての78回転盤、EMI/HMV系のLP、70〜90年代のライブ録音、さらに現代のリイシュー・コンピレーションまで多岐にわたります。以下は「初めて聴く人」「コレクター向け」「ライブの魅力を味わいたい人」向けに分けたおすすめのカテゴリと代表的に探すべき盤の特徴です。

  • 入門向け(代表曲とラーガを押さえる)

    • EMI/HMV・Saregama系のカタログにある、代表的なラーガ録音のコンピレーション(“Bismillah Khan — The Shehnai”などのリイシュー名で出回ることが多い)。録音日や演奏曲目(Raga Malkauns, Raga Bhairavi など)を確認して選ぶと良い。
  • ライブ盤(即興性・場の熱気を楽しみたい)

    • ヴァーラーナスィーや宗教的行事でのコンサート音源。録音条件は様々ですが、表現の伸びやニュアンスをそのまま聴けるのでライブ録音は必聴です。レーベル名で探すならMusic Todayや地域放送局のアーカイブ音源のリイシューをチェック。
  • 宗教曲/バジャン系を聴きたい

    • 「Allah Hoo」や各種バジャンを収めた編集盤。祭礼・礼拝の空気感が強く出るので、宗教的な情感を味わいたい人向け。
  • 歴史的録音・コレクション

    • 78回転盤由来の復刻盤や、初期のHMV録音集。音質は古いが史料的価値が高い。オリジナル盤を追うコレクターは録音年・マトリクス番号を確認することを推奨。
  • 海外の“ワールドミュージック”編集盤

    • Smithsonian/Folkways や欧米のワールド・ミュージック・シリーズに収録されていることがある。良質な解説や翻訳が付く場合があるので、入門には便利。

代表的な盤(聴きどころの深掘り)

以下は「どの曲を聴くと彼の魅力が分かるか」を中心にしたガイドです。盤のタイトル表記はリイシューや編集盤で変わることが多いので、購買時は演奏曲目・録音年・レーベルをチェックしてください。

  • ラーガ中心のアルバム(例:Raga Malkauns / Raga Bhairavi など)

    古典的なラーガ演奏を通して、アループ(導入)の静かな歌い出しから、テンポが上がる部分での技巧的展開まで、シェーナイの全音域を堪能できます。初期のゆったりとした即興表現から、クライマックスの華麗な装飾まで聴きどころが明瞭です。

  • ライブ録音(ヴァーラーナスィー/祭礼での演奏)

    宗教的な空気が強く、演奏者と聴衆の一体感がそのまま音に反映されます。息づかい、周囲の声、拍手といった“場”の要素がライブ感を高め、教会やコンセールホール録音では得られない臨場感を味わえます。

  • バジャン/宗教曲集

    ビスミラー・カーンは宗教曲のレパートリーでも名高く、短いフレーズと繰り返しによる瞑想的な効果が特徴です。精神性や伝統的な儀礼感を聴いてみたい人におすすめです。

  • 編集盤・ベスト盤

    複数の時期・会場の音源を集めた編集盤は「彼の変遷」を追いやすい利点があります。音質の違いや解説(ライナーノーツ)で演奏背景が分かることが多く、初学者には便利です。

レコード(盤)を選ぶときの実用的アドバイス(音質・版の見分け方)

  • 録音年とレーベルを確認する:同じタイトルでも録音年やリマスターの有無で音質や演奏が異なります。特に古いHMV録音は歴史的価値が高い一方で音質が古いことがあります。
  • ライナーノーツの有無:解説や曲目の詳細が付いている盤は、ラーガ名や演奏者の編成(伴奏のタブラ、タンプーラなど)を確認できるため理解が深まります。
  • ライブかスタジオか:ライブは即興性や場の空気を重視、スタジオ録音は音質と細部の明瞭さ重視。目的に応じて選びましょう。
  • リイシュー元の信頼性:Saregama(旧HMV)、Music Today、Smithsonian/Folkwaysなど実績あるレーベルのリイシューは、曲名や録音情報が比較的正確で、音質も配慮されている場合が多いです。

聴き方の実践的ヒント

  • 初めて聴くときは1曲をじっくり(15〜30分)通して聴き、導入→展開→終結の流れを追うとラーガ構造が分かりやすい。
  • 同じラーガのスタジオ録音とライブ録音を比較すると、即興の幅や表現の変化がよく分かる。
  • 歌(ボーカル)で馴染みのあるメロディがあれば、シェーナイの“歌う”フレージングに注目してみる。ビスミラーの表現力が直に伝わってきます。

まとめ

ビスミラー・カーンのレコードを楽しむコツは、「何を聴きたいか」を明確にすることです。古典的なラーガの深みに浸るのか、宗教的な情感を味わうのか、ライブの即興性を楽しむのかで最適な盤が変わります。Saregama/EMI系の信頼できるリイシューや、ライブ録音を中心に探すと、彼の幅広い魅力を体系的に楽しめます。

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