フリッツ・ヴィンデルリッヒを聴く:モーツァルトとリートの名盤ガイドと聴きどころ
フリッツ・ヴィンデルリッヒとは
フリッツ・ヴィンデルリッヒ(Fritz Wunderlich, 1930–1966)は、ドイツが生んだ稀有なリリック・テノールです。短い生涯で遺した録音は数こそ限られるものの、その声の純度、フレージングの自然さ、ドイツ語の明晰な発音と詩情の表現力で現在も多くの聴き手を惹きつけています。特にモーツァルトのテノール・ロール(タミーノやベルモンテ)やドイツ・リート(シューベルト、シューマン、ヒューゴ・ヴォルフなど)の解釈で高い評価を受けています。
おすすめレコード(名盤ガイド)
モーツァルト:アリア集/オペラ・ハイライト集(Wunderlich Sings Mozart)
ヴィンデルリッヒのモーツァルト解釈は、声の透明感と均整の取れたレガートが魅力。オペラ・アリアや重唱の名場面を集めた編集盤は入門にも最適です。彼の語法の自然さとドイツ語の明瞭さが、モーツァルトの音楽に非常に親和します。
「魔笛」(タミーノ役)収録の録音
中でもタミーノのアリア「Dies Bildnis ist bezaubernd schön」は彼の代表的な名唱のひとつ。清らかな高音と抑制された感情表現で、物語の純粋さを見事に伝えます。フル・オペラ録音で聴くと、共演陣との対比からも彼のテノールの特質が際立ちます。
ドイツ・リート集(シューベルト/シューマン/ヴォルフなど)
ヴィンデルリッヒはリート歌手としても一流で、短いフレーズの中に物語を込める能力に長けていました。シューベルトやシューマンの抒情的な作品、ヴォルフの詩曲などを収めたリサイタル盤は、歌詞への深い理解とピアノ伴奏との対話性が魅力です。
オペラ・アリア集(ベッリーニ、ロッシーニ等のレパートリー含む)
モーツァルト以外にも、イタリアン・レパートリーやドイツ物のアリア集があり、ベルカント的な柔らかい高音や繊細なポルタメントを聴くことができます。短いフレーズでの表現力や色彩感が楽しめる一枚です。
ベスト/ハイライト編集盤(ベスト・オブ盤)
初めてヴィンデルリッヒに触れるなら、名場面を集めた編集盤が便利です。代表的なアリアやリートをコンパクトに楽しめるため、彼の「声の特色」「表現の傾向」を短時間で掴めます。
全集・コンプリート・ボックス(全集盤)
既に彼の魅力を知って深掘りしたい方には、全集や大判のボックスセットがおすすめです。スタジオ録音だけでなくラジオ録音やライブ音源、未発表トラックなどを含む編集も多く、音楽的な全体像と成長の軌跡が見えてきます。
代表曲ピックアップ(聴きどころ)
Dies Bildnis ist bezaubernd schön(『魔笛』より)
清澄な高音と感情の押し引きのバランスが秀逸。ヴィンデルリッヒの代表的なアリアで、声の輝きと歌詞解釈の融合が堪能できます。(シューベルト/シューマン等のリート集)
短い曲でも物語を語るように歌う点が魅力。詩の内面を丁寧に掬い上げる歌唱は、リート入門にも最適です。モーツァルトのオペラ・レパートリーの抜粋
タミーノやベルモンテといった役でのアリアは、技巧と詩情が同居しており、モーツァルトの人物造形を音楽で具現化する力量が感じられます。
レコード(録音)を選ぶときのコツ(演奏/編成面の視点)
スタジオ録音とライブ/放送録音の違いを意識する
スタジオ録音は音質と均整が整い、表現が「研ぎ澄まされて」います。一方、放送やライブ録音には即興的な色彩や臨場感があり、別の魅力があります。曲や気分に応じて使い分けてください。伴奏者・指揮者・共演者を見る
ピアノ伴奏者や指揮者のスタイルによって歌唱の提示の仕方が変わります。リート集では伴奏者と歌手の「対話」が重要なので、伴奏者名もチェックしましょう。編集盤か全集か、自分の目的に合わせる
入門なら編集盤、研究や全集収集が目的ならボックスセットを。編集盤は名場面だけを短時間で味わえる利点がありますが、全集は解釈の幅や希少音源に出会える楽しみがあります。リマスターの有無に注目する
再発盤の多くはリマスター済みで音の明瞭度が向上しています。音質にこだわるなら、近年のデジタル・リマスター盤を検討すると良いでしょう。
聴きどころのヒント(表現の楽しみ方)
ヴィンデルリッヒの魅力は「声そのもの」だけでなく、フレーズの自然な呼吸(ブレス)や言葉の語り口にあります。できれば歌詞を見ながら聴くと、表現の細やかさがより伝わります。
短いリートでは特に「語る」ことが大事。詩の一語一語がどのように音に織り込まれているかを意識してみてください。
オペラ・アリアでは役柄の心理描写に注目。ヴィンデルリッヒは人物像を押しつけず、音の線で人物を立ち上げるタイプの歌手です。
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参考文献
- Fritz Wunderlich — Wikipedia (英語)
- Fritz Wunderlich — Encyclopaedia Britannica
- Fritz Wunderlich — AllMusic
- Deutsche Grammophon(検索結果:Fritz Wunderlich)


