AWSとは|主要サービス・料金・セキュリティ・移行戦略を初心者にも分かりやすく総まとめ
AWSとは──概要と位置づけ
AWS(Amazon Web Services)は、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービス群の総称です。コンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワーク、セキュリティ、分析、機械学習、アプリケーション統合など、多種多様なサービスをオンデマンドで提供し、企業や開発者が物理サーバーの管理や大規模な初期投資なしにインフラを利用できる点が特徴です。AWSは“クラウド”という概念を実務で広く普及させた代表的な事業者の一つで、グローバルに多数のリージョンとアベイラビリティゾーンを展開しています。
歴史と成長の背景
AWSは2006年に商用提供を開始しました。当初はストレージ(S3)や計算(EC2)などの基本サービスから始まり、年々サービスの拡充と専門化を進めています。企業がオンプレミス中心のITからクラウド中心に移行する流れと相まって、AWSは幅広い業種・規模での採用を獲得してきました。エコシステム(サードパーティー製品、パートナー、学習資料、認定資格など)も成熟している点も、採用の後押しになっています。
主要サービスの分類と説明
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コンピューティング:Amazon EC2(仮想サーバー)、AWS Lambda(サーバーレス関数)、ECS/EKS(コンテナオーケストレーション)、AWS Fargate(サーバーレスコンテナ)など。
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ストレージ・データ管理:Amazon S3(オブジェクトストレージ)、S3 Glacier(アーカイブ)、EBS(ブロックストレージ)、EFS(共有ファイルストレージ)、Amazon RDS(リレーショナルDB)、DynamoDB(NoSQL)など。
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ネットワーク・配信:Amazon VPC(仮想ネットワーク)、Elastic Load Balancing、Route 53(DNS)、Amazon CloudFront(CDN)など。
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セキュリティ・アイデンティティ:AWS IAM(アクセス管理)、AWS KMS(鍵管理)、AWS WAF、Shield(DDoS保護)など。
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運用・監視:Amazon CloudWatch(監視・アラーム)、AWS CloudTrail(操作ログ)、AWS Config(構成管理)、Trusted Advisor(最適化助言)など。
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アプリケーションサービス・分析・AI:Amazon SNS/SQS(メッセージング)、AWS Glue/Redshift(データ分析)、SageMaker(機械学習)など。
グローバルインフラと可用性
AWSは世界各地にリージョン(地域)とアベイラビリティゾーン(AZ)を展開しています。リージョンは地理的に分かれた大規模な配置単位で、AZは同リージョン内の独立した電源・ネットワークを持つデータセンター群です。高可用性やディザスタリカバリを実現するために、アプリケーションは複数AZ、そして必要に応じて複数リージョンにまたがって配置することが推奨されます。
料金体系と課金モデル
AWSは多様な料金モデルを提供し、利用形態に応じてコスト最適化できるようになっています。主なモデルは次の通りです。
- オンデマンド:使った分だけ課金。短期・変動ワークロードに向く。
- リザーブドインスタンス / Savings Plans:一定期間(1年/3年)コミットする代わりに割引を受けられる。継続的な負荷に有効。
- スポットインスタンス:余剰キャパシティを大幅割引で利用。ただし中断リスクがあるためバッチ処理や可復旧なワークロード向け。
- 無料利用枠(Free Tier):一定のサービスを試験的に無料で利用可能(期間や容量制限あり)。
セキュリティと共有責任モデル
AWSでは「共有責任モデル」が基本です。物理的なインフラやホストのセキュリティはAWSが責任を負い、顧客はOSやアプリケーション、データ、アクセス管理、暗号化設定などのセキュリティを管理します。具体的には、IAMポリシーでの最小権限設定、多要素認証(MFA)、リソースの暗号化、ネットワーク分離(VPC)などを組み合わせるのが一般的です。また、AWSは多くの国際的なコンプライアンス認証(ISO、SOC、PCI、HIPAAなど)を取得しており、法規制対応の基盤を提供しています。
運用・モニタリング・ログ管理
稼働中のシステムを安定運用するために、CloudWatch(メトリクス/ログ/アラーム)やCloudTrail(API操作ログ)、AWS Config(設定変更の追跡)を組み合わせます。これらを活用することで異常検知、監査対応、インシデント対応の自動化が可能になります。さらに、ログの長期保管や分析にはS3やFirehose、Athenaを使うパターンが一般的です。
インフラ自動化とIaC(Infrastructure as Code)
インフラの再現性と変更管理のためにIaCを導入することが推奨されます。AWS公式のCloudFormationやAWS CDK(コードでリソース定義)に加え、マルチクラウド対応のTerraformも広く使われています。これによりCI/CDパイプライン内でインフラ変更をレビュー・テスト・デプロイできるようになります。
典型的なユースケースとアーキテクチャ
- Webアプリケーション:ELB + Auto Scaling + RDS/DynamoDB + S3(静的コンテンツ)でスケーラブルに構築。
- バッチ処理・データ分析:スポットインスタンスやEMR、Glue、Redshiftを組み合わせる。
- マイクロサービス/コンテナ:EKS/ECS + Fargateで運用負荷を下げつつスケール可能。
- サーバーレス:Lambda + API Gateway + DynamoDB/S3で低運用コストのアプリを構築。
- ハイブリッド環境:Direct ConnectやVPNでオンプレミスと接続し、段階的にクラウド移行する。
移行戦略とベストプラクティス
移行には「Rehost(リフト&シフト)」、「Replatform(少し最適化)」、「Refactor(アーキテクチャの再設計)」などの選択肢があります。初期はリフト&シフトで短期間に移行し、その後クラウドネイティブ化していく手法が現実的です。移行時のポイントは、TCO試算、データ転送量(コスト)、セキュリティ要件、運用体制、テスト計画を明確にすることです。
コスト最適化と運用上の注意点
- リソースの無駄(未使用のボリュームやIP、過剰なスペック)を定期的にチェックする。
- 自動スケーリングとスケジュールベースの停止でコストを下げる。
- S3のライフサイクルやGlacierを使い、データ保管コストを段階的に削減する。
- モニタリングで発生パターンを把握し、リザーブドやSavings Plansの適用を検討する。
ベンダーロックインとマルチクラウド戦略
AWS固有のサービス(例えばLambda固有機能やDynamoDBの深い機能)を多用するとベンダーロックインが強まります。完全なポータビリティが必要な場合は、コンテナや標準API中心の設計、Terraformなどマルチクラウド対応のツール採用を検討します。一方で、クラウド特有の高生産性サービスを活用することで開発速度や運用効率が向上する利点もあります。
Well-Architected Framework と運用成熟度
AWSは「Well-Architected Framework」を提示しており、運用面(Operational Excellence)、セキュリティ、信頼性(Reliability)、性能効率(Performance Efficiency)、コスト最適化、持続可能性の観点からアーキテクチャ設計を評価・改善するためのベストプラクティスを提供しています。定期的なレビューが推奨されます。
まとめと今後の展望
AWSは豊富なサービス群と成熟したエコシステムにより、スタートアップから大企業まで幅広く採用されています。導入に際しては、目的に合わせたサービス選定、セキュリティ対策、コスト管理、運用自動化が重要です。近年はサーバーレスや機械学習、フルマネージドデータサービスが拡張しており、企業はより高レベルな価値提供(ビジネスロジックやデータ活用)に注力できるようになっています。
参考文献
- AWS - What is AWS?
- AWS Global Infrastructure
- Amazon EC2
- Amazon S3
- AWS Lambda
- Amazon RDS
- Amazon DynamoDB
- AWS Identity and Access Management (IAM)
- Amazon CloudWatch
- AWS CloudTrail
- AWS CloudFormation
- AWS Cloud Development Kit (CDK)
- Amazon EKS
- AWS Fargate
- AWS Pricing
- AWS Shared Responsibility Model
- AWS Well-Architected Framework
- Terraform (HashiCorp)


