ナナ・ヴァスコンセロス完全ガイド:ベルンバウと声で語る生涯・代表作・聴きどころ

序章:ナナ・ヴァスコンセロスとは

ナナ・ヴァスコンセロス(Naná Vasconcelos)は、ブラジル出身の打楽器奏者・声の表現者として国際的に高く評価されたアーティストです。伝統的なアフロ・ブラジルの打楽器やベルンバウ(berimbau)といった民族楽器を独自に解釈・拡張し、声、即興、電子音響を交えた豊かな音世界を築きました。ワールドミュージックやジャズ、現代音楽のフィールドで多くのミュージシャンと共演し、その影響力はジャンルを越えて広がっています。2016年に逝去しましたが、残した録音や表現は現在も新しい聴き手を惹きつけ続けています。

略歴(概要)

  • ブラジル北東部の伝統的な音楽環境で育ち、幼少期から打楽器や民俗音楽に親しんだ。

  • 若い時期からプロの演奏活動を開始し、ブラジル国内外のミュージシャンと共演。後に世界的な舞台で活躍するようになる。

  • 打楽器奏者としてだけでなく、即興的な声の使い手、音響処理を駆使するソロ・アーティストとしても評価を獲得。

  • ジャズやワールド・ミュージックの巨匠たち(多くのギタリスト、管楽器奏者、作曲家)とコラボレーションを行い、ジャンル横断的なキャリアを築いた。

音楽的魅力—何が彼を特別にしたのか

  • 楽器を超えた「声」としての打楽器表現
    ナナの打楽器は単なるリズム保持の道具ではなく、歌うようにフレーズを描くメロディ的な役割を担います。特にベルンバウやボンゴ類のフレージングは、メロディとリズムの境界を曖昧にします。

  • 声の多様な利用
    即興的な歌唱、言葉にならないヴォーカライズ、口や身体を使ったパーカッシブな発声など、声を打楽器と同等あるいはそれ以上に楽曲構成に組み込む手法を多用しました。

  • サウンド・スケープの構築
    マイクやエフェクト、サンプリング等を用いて、伝統楽器の音を拡張。繊細な空間表現や電子的なテクスチャーと有機的な打楽器音を溶け合わせることで、聴く者を別世界へと誘います。

  • 即興と対話
    ナナは共演者との“会話”を重視しました。即興の瞬間に生まれる間(ま)や沈黙の使い方、他者のフレーズに応える柔軟さが、彼の演奏の魅力です。

  • 文化的ルーツの尊重と再解釈
    アフロ・ブラジルのリズムや宗教的儀礼からの影響を常に意識しつつ、それを単なる再現にとどめず現代的に再構築しました。

主要な楽器とサウンドの特徴

  • ベルンバウ(berimbau):弦楽器的な単音のサウンドを持ち、歌うようなフレーズを刻む。メロディ的・儀礼的な要素を演奏に導入する主要楽器。

  • コンガ/パンデイロ等の打楽器:複雑なポリリズムやテクスチャを生むために用いられる。手の使い分けや指先のタッチにより色彩を変える。

  • 身体・声のパーカッション:拍手、足踏み、咳払いのような身体音や、ヴォイスを打楽器的に使うことで独特のリズム感を表現。

  • 電子処理・エフェクト:リバーブ、ディレイ、ループ等を駆使して生音を拡張し、空間的な奥行きを作る。

代表的な作品・おすすめの聴きどころ

以下はナナの多面性を感じられる代表的なソロ作品とコラボレーション(いずれも正確なリリース情報や参加クレジットは各参照先で確認してください)。初めて聴く方はソロの即興性とコラボでの対話性の両方を比べてみると、ナナの幅広さがよくわかります。

  • ソロ作品(即興・サウンド・スケープ)
    ベルンバウや声、打楽器を中心に展開する作品群。サウンドスケープ的なトラックや儀礼性を感じさせるトーンが特徴です。

  • コラボレーション(ジャズ/ワールド)
    国際的なジャズ・ミュージシャンやブラジルの歌手・作曲家との共演では、ナナのリズム感と即興力が他楽器と絶妙に溶け合います。共演作品では彼の“応答(call-and-response)”的な演奏が光ります。

  • ライブ録音
    ナナの即興性はライブで最も鮮やかに燃えます。レコーディング盤では拾いきれない息遣いや場の空気を感じ取れます。

主なコラボレーションと影響

ナナはブラジル国内の重要なミュージシャンだけでなく、欧米のジャズ・シーンにも深く関わりました。こうしたコラボレーションを通じて、ブラジルのリズムや声の表現を国際舞台に広める橋渡しをしました。ただし彼のアプローチは単なる“ブラジル色の提供”にとどまらず、参加する音楽そのものを変容させる力を持っていました。

聴き方の提案—より深く楽しむポイント

  • 声と楽器の境界を意識して聴く
    ナナは声を打楽器のように、打楽器を歌うように扱います。どの瞬間が“歌”でどの瞬間が“リズム”か、意識して聴き分けてみてください。

  • 静寂と余白に注目する
    派手なフレーズだけでなく、間や小さな余韻が表現の鍵になっていることが多いです。呼吸や静けさの扱いにも耳を傾けてください。

  • コラボ相手との対話を追う
    他の楽器が出したフレーズにどのように反応しているか、瞬間ごとの“会話”を見るように聴くと、即興の面白さがより明確になります。

遺したものと現在への影響

ナナ・ヴァスコンセロスの音楽は、単に打楽器奏法の革新というだけでなく「声・身体・楽器を一体化して音楽をつくる」表現のあり方を提示しました。現代の多くのパーカッショニストや即興演奏家、エレクトロニクスを取り入れるアーティストが、彼のアプローチから影響を受けています。また、ブラジル音楽を世界へ伝えるうえで彼が果たした役割は大きく、ジャンルの垣根を越えた共鳴を今も生んでいます。

まとめ

ナナ・ヴァスコンセロスは、伝統と革新を結びつけ、声と打楽器を縦横無尽に用いて独自の表現を追求した稀有なアーティストです。静かな瞬間の美しさ、躍動するリズムの躍動感、そして他者との即興的な対話——これらすべてが彼の音楽の核です。初めて聴く人はまず短めのトラックやライブ録音で即興の空気感を体験し、その後ソロ作品や多様なコラボレーションを順に辿ると、彼の全体像が見えてくるでしょう。

参考文献

エバープレイの中古レコード通販ショップ

エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っておりますので是非一度ご覧ください。
https://everplay.base.shop/

また、CDやレコードなど様々な商品の宅配買取も行っております。
ダンボールにCDやレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単に売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery