ジョン・マクラフリン入門:必聴アルバム10選と聴きどころガイド

はじめに — ジョン・マクラフリンという稀有なギタリスト

ジョン・マクラフリン(John McLaughlin)は、ジャズ、ロック、インド音楽を自在に横断したギタリスト/作曲家です。1960年代後半から現在に至るまで、彼はエレクトリック・ギターの技術革新と音楽的探求を続け、ソロ作/グループ作ともに多様な名盤を残してきました。本稿では「聴くべきレコード(アルバム)」を中心に、各作品の背景、聴きどころ、代表曲や編成を深掘りして紹介します。これからマクラフリン入門をする方、既にファンの方の再発見にも役立つ視点を目指しています。

1. Extrapolation(1969) — ソロ・デビューの驚き

概要:マクラフリンのリーダー作としての出発点。まだ“フュージョン”という言葉が一般化する前に、ジャズ寄りのコンセプトで録音された作品です。

  • 編成:エレキギターを中心に、ピアノ、ベース、ドラムなどの小編成(曲によって変化)
  • 聴きどころ:ハーモニーの扱い、モーダル進行を基盤にしたギターソロの自由度。後のエレクトリックな探求の萌芽が聞き取れます。
  • 代表曲(アルバムのハイライト):タイトル曲「Extrapolation」など。伸びやかなフレージングとアドリブ・ロジックに注目。
  • おすすめポイント:マクラフリンの“若き日の言語”を知ることができる歴史的な1枚。アコースティック寄りの音色も聴け、後の大編成やフュージョンと比較して新鮮に響きます。

2. My Goal's Beyond(1971) — スピリチュアルなアコースティック志向

概要:宗教的・精神的テーマが濃い作品で、アコースティック編成や東洋的要素が色濃い1枚。マクラフリンの内面的な側面が反映されています。

  • 編成:主にアコースティック楽器、瞑想的なテンポやリズム感を重視
  • 聴きどころ:メロディの美しさ、静と動のコントラスト。エレクトリック全盛期のタイミングに敢えて内省的な作風を取った点が興味深いです。
  • 代表曲:アルバム全体が通して聴く価値あり。個々のフレーズや空間の扱いを楽しんでください。
  • おすすめポイント:マクラフリンの“精神的”側面を理解するうえで不可欠。後のインド音楽融合の端緒とも言えます。

3. The Inner Mounting Flame(1971) — Mahavishnu Orchestraの衝撃

概要:マクラフリンが結成したMahavishnu Orchestraのデビュー作。ロックのエネルギーとジャズの即興性、クラシック的対位法を融合させた強烈なアルバムです。1970年代初頭のロック/ジャズ新世代に大きな影響を与えました。

  • 編成:エレクトリック・ギター(マクラフリン)、ヴィオラ/ヴィオリン、キーボード、ベース、ドラムの変則的な編成
  • 聴きどころ:「Meeting of the Spirits」「Awakening」などの曲で見られる高速のユニゾン、複雑なリズム、強烈なギター・トーン。テクニックだけでなく作曲の構築力も突出しています。
  • 代表曲:特に「Meeting of the Spirits」は名演で、バンドのダイナミクスとソロの鋭さが際立ちます。
  • おすすめポイント:ロックとジャズの境界を打ち破った歴史的名盤。エネルギーに満ちた演奏は初めて聴く人にも衝撃を与えるはずです。

4. Birds of Fire(1973) — 更なる進化と拡張

概要:Mahavishnu Orchestraの2作目。テクニカルな側面は維持しつつ、より複雑なアレンジと幅広い音色を取り入れています。

  • 編成:第1作に比べてキーボードや管楽器的な扱いが拡張。作曲のバリエーションが豊か。
  • 聴きどころ:タイトル曲「Birds of Fire」を筆頭に、疾走感と精緻なアンサンブルが交錯する。即興の密度と構成力の高さが光ります。
  • 代表曲:「Birds of Fire」「Celestial Terrestrial Commuters」等
  • おすすめポイント:バンドの創造力が頂点に近づいた時期の記録。マクラフリンのリフ作法とフレーズ展開を学ぶ教材としても有用です。

5. Between Nothingness & Eternity(1973) — ライブで見るMahavishnuの実像

概要:Mahavishnu Orchestraのライブアルバム。スタジオ録音の緻密さとは異なる、生々しいテンションと即興の危うさが魅力です。

  • 編成:ライブならではの爆発力。メンバー間の呼吸やテンポの揺らぎが聴きもの。
  • 聴きどころ:ライブ・バンドとしてのエネルギー、変拍子の切り替え、マクラフリンのソロの“勝負感”。スタジオ版とは別の魅力があります。
  • おすすめポイント:Mahavishnuの“現場感”を味わいたい人に必携。ライヴのダイナミックさは録音技術を超えた説得力を持ちます。

6. Shakti(1975) & A Handful of Beauty(1976) — インド古典との真摯な融合

概要:Shaktiはマクラフリンがインド古典音楽の名手たちと結成したグループ。東洋のリズム感とジャズの即興が高度に融合した作品群です。

  • 編成:アコースティック・ギター、タブラ、ヴァイオリン(またはヴァディヤム)、その他インド楽器
  • 聴きどころ:リズム(タラ)の複雑さ、モード的な旋律、即興の“会話”。エレクトリック期の轟音とは対極にある繊細さと密度が魅力です。
  • 代表曲:Shaktiのセルフタイトル作全般や「A Handful of Beauty」の楽曲は、ギターが東洋のスケール感に溶け込む瞬間を多数含みます。
  • おすすめポイント:インド音楽とジャズの“真正面からの融合”を体感できる。マクラフリンのメロディメイキングが新たな文脈で光ります。

7. Friday Night in San Francisco(1981) — アコースティック・ギター三重奏の奇跡

概要:パコ・デ・ルシア、アル・ディ・メオラと共演したライブ盤。アコースティック・ギターの技巧と表現力を最大限に引き出した一夜の記録で、ギター愛好家にとっての“必聴盤”です。

  • 編成:ジョン・マクラフリン(アコースティック)、パコ・デ・ルシア、アル・ディ・メオラのトリオ
  • 聴きどころ:超絶テクニックのやりとり、アンサンブルのスリリングな瞬間。テンポの速さや強弱だけでなく、間(ま)や音色の違いによる表現も豊かです。
  • 代表曲:「Mediterranean Sundance」「Friendship」など、各奏者の個性が際立つ名演が多数収録されています。
  • おすすめポイント:アコースティック・ギターによる即興の美学とショーマンシップを堪能できる一枚。マクラフリンの別の側面を知るのに最適です。

8. Electric Guitarist(1978) — エレクトリック側の探求

概要:マクラフリンの“電気”ギターに立ち返ったアルバム。ロック色とジャズ技術のバランスがとれた作品で、ソロの表現の幅を示しています。

  • 編成:エレクトリック・ギター主体、フュージョン的編成
  • 聴きどころ:ギターのトーン、フレージングの鋭さ、リズムセクションとのインタープレイ。
  • おすすめポイント:Mahavishnuの激しさとは異なる、落ち着いたけれど濃密なエレクトリック表現を楽しめます。

9. The Promise(1995) — 師弟・同時代ミュージシャンとの対話

概要:多数のゲストと共演した作品。マクラフリンのキャリア中後期における作曲力と柔軟なコラボレーション能力が示されたアルバムです。

  • 編成:曲ごとに異なるゲストや編成が登場。ストリングスや管楽器を含むものも。
  • 聴きどころ:作曲の質、落ち着いた音作り、表情豊かなソロ。キャリアの集大成的な側面もあります。
  • おすすめポイント:様々な音楽的文脈でのマクラフリンを一度に味わえる便利な入門盤の一つ。

10. Floating Point(2008) — 近年の成熟した語り口

概要:近年の作品で、伝統的な要素とモダンなサウンドが高い次元で統合されています。リズム感、音色の選択、作曲の緻密さが際立ちます。

  • 編成:曲によって異なるが、打楽器やインド音楽の要素を取り入れた編成も含む
  • 聴きどころ:成熟した演奏。過度な速弾きに頼らない“語るギター”が印象的です。
  • おすすめポイント:マクラフリンのキャリア全体を知った上で聴くと、彼の“現在地”を感じ取れる1枚です。

聴き方のヒント(簡潔に)

・時代順に聴くことで、マクラフリンの音楽的変遷(ジャズ→ロック/フュージョン→インド古典→成熟した折衷)を追えます。
・Mahavishnu期は「アンサンブルの緊張感」を、Shakti期は「リズムと旋法の新しさ」を味わうと理解が深まります。
・ライブ盤(Between Nothingness & Eternity、Friday Night in San Francisco)はスタジオ録音では味わえない“即興の危うさ”と“瞬発力”が魅力です。

最後に

ジョン・マクラフリンは単なる“速弾きのギタリスト”ではなく、常に音楽言語を拡張してきた音楽家です。本稿で挙げたアルバム群は、その多面的な魅力を概観するのに適しています。まずは気になる一枚を選び、繰り返し耳を傾けることで、新たな発見が必ずあるはずです。

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