ジャコモ・ラウリ=ヴォルピ徹底解説:名テノールの声質・代表録音・聴きどころ
はじめに — 声の黄金期を彩った名テノール
ジャコモ・ラウリ=ヴォルピ(Giacomo Lauri-Volpi)は20世紀前半のイタリア・テノールを代表する歌手の一人です。輝かしい高音、安定したテクニック、そして表現の集中力によって聴衆を魅了し、数多くの録音を残しました。本コラムでは彼の生涯、声質と唱法、代表的なレパートリーと録音、そして今日に残る魅力と影響を深掘りして解説します。
生涯概略
ジャコモ・ラウリ=ヴォルピはイタリア出身のテノールで、20世紀のオペラ黄金期に活躍しました。地方での修練を経てオペラ舞台に登場し、イタリア国内はもちろん欧米や南米の主要劇場でも歌唱を行いました。舞台活動と並行して多くのスタジオ録音やコンサート録音を残し、戦間期から戦後にかけての歴史的記録として現代に伝わっています。晩年は教育や著述活動にも携わり、後進への影響を与え続けました。
声質とテクニック — 聴覚に残る「光る」高音
- 音色:明るくて鋭い金属的な輝き(スキュロ)を持つ声で、高音域に独特の艶と遠達性があるのが特徴です。舞台で遠くまで届く「切れ」の良さが際立ちます。
- 高音の安定性:高いC(C5)やそれ以上の音まで明確に出せたことで知られ、聴衆に強い印象を残しました。高音での張りと支え(ブレスコントロール)が優れていました。
- 呼吸とフレージング:長いフレーズを支えるための良好な呼吸法と集中したフレージングがあり、ヴェルディやプッチーニの大アリアでの持続力が光ります。
- 唱法(様式):ベルカントの伝統を基盤にしつつ、20世紀的な迫力と表現力を融合させた歌唱を得意としました。装飾やアジリタ(華やかな装飾的要素)を効果的に使用することもありました。
レパートリーと代表役柄
ラウリ=ヴォルピのレパートリーは主にイタリアン・レパートリー中心で、ヴェルディやプッチーニ、ヴェリズモ(リアリズム)系の作品を得意としました。代表的な役柄には次のようなものがあります。
- マヌリコ(「イル・トロヴァトーレ」) — 劇的な高音と情熱的な表現がマッチする役。
- ラダメス(「アイーダ」) — 英雄的なテノールを要求する役柄。
- カヴァラドッシ(「トスカ」)やピンカートン(「蝶々夫人」) — プッチーニのリリカルかつ劇的な側面を表現。
- その他、ヴェルディやプッチーニの主要テノール役を幅広くレパートリーとしていました。
録音と名盤 — 歴史的記録としての価値
ラウリ=ヴォルピは多くのスタジオ録音やライヴ録音を残しており、当時の録音技術の制約はあってもその声の魅力は十分に伝わってきます。録音は、彼の高音の輝き、フレージング、情感のこもったアゴーギクス(テンポの揺れ)を現代に伝える重要な資料です。
おすすめの聴きどころ(アリア)例:
- 「Di quella pira」(イル・トロヴァトーレ) — 高音の強さと英雄的表現が分かりやすい。
- 「Celeste Aida」(アイーダ) — 美しいソロと劇的表現の両立を確認できる。
- プッチーニやヴェルディの主要アリア集 — ラウリ=ヴォルピのスタイルを通して当時のイタリア系テノールの歌い回しが学べます。
近年は歴史的音源を復刻した編集盤や選集が複数のレーベルから出ており、彼のキャリア全体を通覧できるコンピレーション盤も入手しやすくなっています。
演技・解釈の魅力 — 声で語るドラマ性
ラウリ=ヴォルピの魅力は単に「美声」だけではありません。彼は歌詞の意味とドラマの内的必然性を声で表現する力を持っていました。以下がその特徴です。
- 集中した表現力:フレーズの始まりと終わりに明確な意図があり、感情のピークで声が自然に盛り上がります。
- ダイナミクスのコントロール:フォルテの迫力だけでなく、微妙なピアニッシモや中間のニュアンスも表現し、ドラマの起伏を描く力を持っていました。
- スタイルの多様性:ベルカント的な美しさと、ヴェリズモ的なドラマ性の両方を使い分けられる柔軟性がありました。
評価と影響 — 後進への遺産
当時の批評家や同時代の歌手たちからは高く評価され、録音を通じて20世紀のテノール理想像のひとつとして後世に影響を与えました。教育・著述活動を通じて声楽理論や実践について後進に語り継いだ点も重要です。現代の歌手や研究者にとって、ラウリ=ヴォルピの録音は歴史的唱法の理解に欠かせない資料になっています。
聴きどころ・聴取のコツ
- 録音は古いため、音質に起因する「ざらつき」や周波数の限界があります。声自体のニュアンスやフレージング、呼吸法を聴き取る視点で聴いてみてください。
- 同時代の他テノール(例:カルーソーやフランコ・コレッリなど)との比較で、時代ごとの発声技術の違いや解釈の傾向を味わうと面白いです。
- ライブ録音とスタジオ録音で表現の差が出ることがあるため、複数ソースを聴き比べることをおすすめします。
まとめ — なぜ今聴くべきか
ジャコモ・ラウリ=ヴォルピは、20世紀初頭から中盤にかけてのイタリアン・テノール像を象徴する存在です。技術的な堅実さとドラマ性豊かな表現、そして歴史的録音を通じて伝わる「声の輝き」は、オペラ史や声楽研究にとって貴重な素材です。現代の耳で聴くことで、当時の舞台表現や唱法の変遷を実感でき、歌唱スタイルの多様性を再認識する良い機会となるでしょう。
参考文献
- Giacomo Lauri-Volpi — Wikipedia (English)
- Giacomo Lauri-Volpi — Wikipedia (Italiano)
- Giacomo Lauri-Volpi — AllMusic
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