ジョン・ハッセル入門:Fourth Worldの真髄とおすすめ名盤5選+聴きどころガイド

導入 — ジョン・ハッセルとは何者か

ジョン・ハッセル(Jon Hassell, 1937–2021)は、トランペット奏者であり作曲家。エレクトロニクスやフィールドレコーディング、非西洋音楽の要素を大胆に取り入れ、自ら「Fourth World(第四の世界)」と呼んだ独自の音響美学を打ち立てました。従来のジャズや現代音楽の枠組みを超え、アンビエント、エスニック、ミニマル、エレクトロニクスが溶け合うサウンドは、多くのミュージシャンに影響を与え続けています。

「Fourth World」の概念と聴きどころ

ハッセルの音楽でまず押さえておきたいのが「Fourth World」という概念です。ここでの「世界」は地理的意味ではなく、異なる音響文化(アコースティックとエレクトロニクス、伝統音楽と都市的即興など)が混ざり合って生まれる新しい“仮想的な音の風土”を指します。特徴としては次の点が挙げられます。

  • トランペットの信号処理(ディレイ、リヴァーブ、ピッチ処理)による声のような旋律線
  • 反復されるモチーフと微妙な変化によるテクスチャ重視の構成
  • 西洋の調性にとらわれないリズム感やスケールの導入
  • プロデュースやコラボレーションにより、エレクトロニクスとアコースティックが融合した空間性

おすすめレコード(名盤と聴きどころ)

Fourth World, Vol. 1: Possible Musics(1980)

ハッセルの代表作のひとつで、彼の「Fourth World」思想を世に知らしめたアルバム。ブライアン・イーノとの関係性も深く、アンビエント的な空間演出とハッセルの加工されたトランペットが融和しています。

  • 聴きどころ:イントロ〜中盤にかけて見られる、トランペットの反復フレーズと背景テクスチャの微細な交替。曲間のつながりを意識すると作品全体が一つの風景として立ち上がります。
  • 代表的に注目したいポイント:タイトル曲やアルバム冒頭のトラック(空間描写の手法)が、ハッセルの核心をよく示します。
  • こんな人におすすめ:アンビエント、ワールド・ミュージック、ブライアン・イーノの作品が好きな人。

Power Spot(1986)

イーノとの結びつきが明確に感じられる作品で、より鮮明なプロダクションと夢幻的なサウンドスケープが特長。エレクトロニクスと生楽器のバランスがさらに洗練され、深い瞑想的な時間を作り出します。

  • 聴きどころ:タイトル曲を含む長めのトラック群。レイヤーごとの音量や残響の差異を聴き分けると、新しい要素が微妙に浮かび上がります。
  • 代表曲:アルバムタイトル曲(Power Spot)など、空間を支配するような楽曲が鍵。
  • こんな人におすすめ:ミニマル寄りのアンビエントや、精密な音響設計に興味があるリスナー。

Flash of the Spirit(1988) — ハッセル & Farafina

西アフリカのパーカッション・グループ(Farafina)とのコラボレーションで、伝統的なリズム要素とハッセルの電子化したトランペットが直接的に接触する作品。Fourth Worldの「異文化混淆」が、よりダイナミックに提示されます。

  • 聴きどころ:パーカッションの生々しいグルーヴと、そこに重なるハッセルの加工音。リズム/テクスチャの対話を楽しんでください。
  • 代表曲:アルバムタイトル曲や、パーカッションとトランペットが絡む場面。
  • こんな人におすすめ:ワールド・ミュージック好きや、グルーヴ感とテクスチャの融合を求める人。

Last Night the Moon Came Dropping Its Clothes in the Street(2009)

キャリア後期の作品の一つで、過去作のエッセンスを引き継ぎつつ、より内省的で現代的なプロダクションが加わっています。アンビエントな手触りと即興性の両立が印象的です。

  • 聴きどころ:静寂と間(ま)の使い方、そしてトランペットの“人声化”が際立つパート。曲ごとのムードがはっきりしており、アルバムを通しての起伏を楽しめます。
  • こんな人におすすめ:ハッセルの音楽をキャリア全体で追い、最新の音響感覚にも触れたい人。

Listening to Pictures (Pentimento Volume One)(2018)

晩年の作品でありながら新鮮さを保ったアルバム。サウンドコラージュ的手法や抽象化された旋律が現代的にアップデートされており、画を見るように音を“聴く”体験を与えます。

  • 聴きどころ:音の“層”に注目。短い断片が重層的に積まれ、絵画のような印象を生み出します。
  • こんな人におすすめ:現代音楽的要素やサウンドアートに興味を持つリスナー。

聴き方のヒント(アルバムごとの楽しみ方)

  • アルバムを曲ごとに切り離して聴くより、通して一気に聴くと「風景」が見えてきます。
  • ヘッドフォンでのリスニングは空間表現を克明に捉えられるのでおすすめです。スピーカーでも低音や残響の再現が良い環境であれば十分楽しめます。
  • バックグラウンド音楽としてではなく、集中して音の変化を追うと、新しい発見が多いです。
  • ハッセル作品は、トランペットそのものの“音色”の変化が作曲の中心になっているので、同じフレーズでも加工の違いを意識して聴いてみてください。

推薦盤を買う際の選び方(編集盤・リマスターなど)

ジョン・ハッセルの作品はリイシューや編集盤が複数存在します。オリジナルのアナログ盤も魅力的ですが、音の明瞭さを重視するなら公式リマスター盤や信頼できるCD/デジタル版も選択肢として有効です。アルバム解説やクレジットを確認して、プロデューサー(例:ブライアン・イーノ)や参加ミュージシャンが気になる作品から聴くのも良いでしょう。

最後に:ハッセルの影響と現在への接続

ジョン・ハッセルの音楽は、ジャズ/ワールド/アンビエント/エレクトロの境界を曖昧にし、以降の多くのアーティストに影響を与えました。彼の作品を聴くことで、音楽が「国境やジャンルを超えて繋がる」可能性を改めて感じられるはずです。まずはここで挙げた数枚から入り、テクスチャや空間表現に注目しながら聴き進めてみてください。

参考文献

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