ウィレム・メンゲルベルク入門:コンセルトヘボウの名盤・マーラー解釈と戦時中の論争まで

プロフィール — Willem (ウィレム) Mengelbergとは

Willem Mengelberg(1871–1951)はオランダ出身の指揮者で、アムステルダムのコンセルトヘボウ管弦楽団(Concertgebouw Orchestra)の音楽監督として長年にわたり同楽団の音楽的基盤を築いた人物です。1895年に同楽団の首席指揮者に就任して以降、約50年にわたり同楽団を指揮し、19世紀末から20世紀前半のヨーロッパ音楽界に大きな影響を残しました。

音楽家としての核となる魅力

  • 豊かな音色と弦楽の長い歌いまわし:メンゲルベルクは弦楽のレガートや豊潤な音色作りを重視し、コンセルトヘボウ管に「暖かく伸びのある」響きを定着させました。
  • 柔軟なテンポ感(ルバート)と表現力:スコアに厳密に固定されない、歌うようなテンポの揺らぎを用いて表情を付けることを好みました。このアプローチは特にロマン派・後期ロマン派作品で効果を発揮します。
  • レパートリーの幅と新作への理解:ベートーヴェン、ブラームス、マーラー、R.シュトラウスなどの大作に精通するとともに、当時の新作や近代作品にも興味を示し、積極的に取り上げました。
  • ライヴ感を重視した演奏づくり:リハーサルでの綿密な作業と、演奏会での即興的な表現の組み合わせにより、聴衆に強い印象を残す演奏を生み出しました。

活動のハイライトと代表的なレパートリー

メンゲルベルクはコンセルトヘボウ管の長期的指導の中で、オーケストラの音楽性を育て、オランダのコンサート文化を形成しました。とくに以下の作曲家・作品との結びつきが強く評価されています。

  • グustav Mahler(マーラー):メンゲルベルクはマーラー作品の熱心な指揮者で、同時代にマーラーの音楽を積極的に紹介しました。彼のマーラー演奏は、当時としては先駆的であり、後世に大きな影響を与えています。
  • Richard Strauss(R.シュトラウス):交響的詩や大規模管弦楽作品でも高い評価を受けました。
  • 古典派・ロマン派の主要作品:ベートーヴェンやブラームスなどの交響曲・協奏曲もレパートリーの中心でした。

録音と名盤について(聴きどころ)

メンゲルベルクの評価を今日に伝える主要な財産はアーカイヴに残された録音群です。戦前・戦間期から残るライヴ録音やスタジオ録音は、当時の演奏慣行や音色感覚を知るうえで貴重です。特にマーラーやR.シュトラウスの演奏は、彼の柔軟なテンポ処理や色彩感覚をよく示しています。

おすすめの聴きどころ:

  • マーラーの交響曲(特に交響曲第1番や他の交響曲断章)— 歌わせる弦と表情豊かなフレージングに注目。
  • R.シュトラウスの管弦楽詩 — 色彩感と管楽器のブレンドが光る。
  • ベートーヴェン、ブラームスなどの古典的作品 — ダイナミクスの対比や構築感と、同時に柔らかさを併せ持つ解釈。
  • アーカイヴ集やボックスセット(各レーベルによる再発) — 当時の演奏を体系的に聴くのに便利。

再発レーベルとしては、Philips、Testament、Brilliant Classics、Music & Artsなどからアーカイヴ音源が出ていますので、コンピレーションや複数枚組のセットを探すとよいでしょう。

評価と論争(歴史的文脈)

メンゲルベルクはその音楽的業績と同時に、第二次世界大戦中の行動をめぐる論争でも知られています。戦時中の言動や占領下での活動が問題視され、戦後はオランダ国内での活動停止処分を受けました。このため、音楽家としての芸術的評価と政治的・道徳的評価が分かれるのが現実です。

研究者や聴衆は、歴史的事実と音楽的遺産を分けて評価することの重要性を繰り返し指摘しています。今日では、客観的史料や録音を通じて演奏の価値を再評価すると同時に、当時の政治的背景や責任を検証し続ける姿勢が一般的です。

現代のリスナーに向けた聴き方の提案

  • まずは短めの録音(交響曲の一楽章や管弦楽曲の抜粋)でメンゲルベルクの「音色」と「テンポ感」を掴む。
  • マーラーやR.シュトラウスなど、表現の幅が広い作曲家の比較試聴を行う。例えば同じ曲を別指揮者(例えばトスカニーニ、カラヤン、バーンスタインなど)の演奏と比べると、メンゲルベルクの特色が明瞭になります。
  • 録音が古いことによる音質差に注意しつつ、演奏の「考え方」や「解釈」を聴くことに焦点を当てると、当時の演奏慣行や解釈の多様性を楽しめます。

研究・資料を読むための入口

メンゲルベルクについて深く学ぶには、伝記・論文・当時の批評やアーカイヴ録音を総合的に参照するのが有効です。戦時中の行動に関する研究は歴史学・音楽学の両面から行われており、音楽的影響を扱う研究と倫理的評価を扱う研究が並行しています。

参考文献

Willem Mengelberg — Wikipedia

Willem Mengelberg | Encyclopedia Britannica

Concertgebouw — Mengelberg(コンセルトヘボウ公式/メンゲルベルク関連資料)

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