Lyle Mays入門 — Pat Metheny Group&ソロで聴くべき7枚と聴きどころガイド

イントロダクション — Lyle Maysという存在

Lyle Mays(ライル・メイズ、1953–2020)は、ジャズ・フュージョン/コンテンポラリー・ジャズ界における最も重要な鍵盤奏者・作曲家の一人です。Pat Metheny(パット・メセニー)とのパートナーシップを通じて生み出された音世界は、ピアノとシンセサイザーを駆使した独特の和声感、テクスチャー作り、そして大編成にも匹敵するアレンジ志向が特徴です。本コラムでは、Lyle Maysの魅力を深掘りするために「聴くべきレコード」を厳選して紹介し、それぞれのアルバムにおけるMaysの役割や聴きどころを解説します。

推薦アルバム一覧(概観)

  • Pat Metheny Group — Offramp
  • Pat Metheny Group — First Circle
  • Pat Metheny Group — Still Life (Talking)
  • Pat Metheny Group — Travels(ライブ)
  • Pat Metheny Group — The Way Up
  • Lyle Mays — Lyle Mays(ソロ・アルバム)
  • Pat Metheny Group — Letter from Home

深掘り解説:各アルバムの聴きどころ

Pat Metheny Group — Offramp

なぜ重要か:Offrampは、Maysがシンセサイザーで作り上げる“空間的で歌うパッド”と、パット・メセニーのギターが対話する、グループのサウンド・アイデンティティを確立した作品です。Maysのテクスチャー作りと即興の感覚が前面に出た代表作の一つ。

  • 代表曲と聴きどころ:”Are You Going With Me?” — Maysのシンセ・ソロと持続音的な和声の使い方が圧巻。メロディはシンプルでも、背景の和声進行とサウンドデザインが独特の情緒を生む。
  • 注目ポイント:リズムとハーモニーの間で生まれる“浮遊感”。Maysは単に伴奏するだけでなく、音の層を増幅させ、曲の情景を作ります。

Pat Metheny Group — First Circle

なぜ重要か:リズミックな鋭さと複合拍子を活かした作曲性が光る一枚。Maysは和声面だけでなく、複合リズムの編曲・展開にも深くかかわっています。

  • 代表曲と聴きどころ:タイトル曲”First Circle”は、ポリリズム/複合拍子の美しい例。Maysの和声がリズムの推進力と結びつくことで、高揚感のある大曲になっています。
  • 注目ポイント:バンドのアンサンブル感が増し、Maysのピアノ/キーボードがより作曲的・編曲的役割を担っている点。

Pat Metheny Group — Still Life (Talking)

なぜ重要か:ブラジリアンなリズム感と洗練されたアレンジが混ざった作品。Maysの和声と色彩感覚がブラジル音楽の律動と極めてうまく融合しています。

  • 代表曲と聴きどころ:”Minuano (Six Eight)”(邦題では“ミヌアーノ”)は6/8拍子を用いた代表曲で、Maysの和声進行が曲の“空気感”を作り出します。
  • 注目ポイント:民族的リズムを都市的な和声で包むMaysのセンス。アコースティック・ピアノと電子音の使い分けも秀逸です。

Pat Metheny Group — Travels(ライブ盤)

なぜ重要か:ライブ録音はMaysの即興力とアンサンブルでの役割を最もストレートに示してくれます。スタジオ盤で緻密に作られたアレンジが、ライブではどう変化し拡張されるかを聴く好機。

  • 代表曲と聴きどころ:スタジオ曲の即興的解釈、テンポ・ダイナミクスの変化、Maysのソロやイントロの展開に注目。
  • 注目ポイント:Maysはライブでもサウンドスケープを自在に作り、曲のドラマを支えます。グループの“呼吸”を見るには最適です。

Pat Metheny Group — The Way Up

なぜ重要か:MethenyとMaysが共同で書いた長大な組曲(1曲が一連の部に分かれたロングフォーム)。Maysの構成力、テーマの展開力、長尺作品での緊張と解放の作り方が堪能できます。

  • 代表曲と聴きどころ:68分以上に渡る連続音楽として聴くことで、Maysの作曲的手腕(モチーフの変奏、音色の累積、ドラマティックな組み立て)がはっきり見えてきます。
  • 注目ポイント:組曲形式ならではの“再帰するテーマ”と“音響的クライマックス”。Maysのシンセ/ピアノの配置が全曲を通しての色彩を決めます。

Lyle Mays — Lyle Mays(ソロ・アルバム)

なぜ重要か:ソロ作はMays個人の作曲観と音色選択が最も直接的に表れる場です。ピアノとシンセを軸にした静かな叙情性と、映画的な進行が特徴。

  • 代表曲と聴きどころ:アルバムごとに雰囲気は変わりますが、Maysらしい和声の美しさと、空間を作るアレンジの技巧が詰まっています。
  • 注目ポイント:グループ作品では聴きにくい“内省的”な側面、ソロ曲ならではの音色実験に注目してください。

Pat Metheny Group — Letter from Home

なぜ重要か:よりメロディックでポップな要素と、映画音楽的な拡がりが混在する作品。Maysのメロディ構築力と色彩感覚が、親しみやすさの中に深みを与えています。

  • 代表曲と聴きどころ:アルバム全体のバランス感。Maysのサウンド作りが曲ごとに違った“場面”を作り出すのを楽しめます。
  • 注目ポイント:作曲家としてのMaysの幅広さ、バンドのポップセンスとの折り合いのつけ方に注目。

Lyle Maysを聴く際の視点と聴き分けるポイント

  • 和声(ボイシング)を見る:Maysの特徴の一つは「密で豊かなピアノ/シンセのボイシング」。コードの色味が感情を決める場面が多いです。
  • 音色と空間づくりを聴く:Maysは音色そのものを作曲素材として扱います。鍵盤の音色変化が曲のドラマを作ります。
  • 即興と構成のバランス:即興が出ても、そこには明確なモチーフの反復・展開があり、楽曲構造が崩れません。この“即興の中の設計”を味わってください。
  • 楽曲の「風景」を想像する:Maysの音はしばしば風景描写的です。音色や和声が描く情景に身をゆだねると、新たな発見があります。

具体的な聴き方(入門→深堀シーケンス)

  • まずは代表的な一曲で入口:”Are You Going With Me?”(Offramp)でMaysのサウンドとメロディ感を掴む。
  • 次にリズム/編曲力を体感:”First Circle”で複合拍子と和声の絡みを確認。
  • ライブでダイナミクスを見る:Travelsを聴いて、スタジオとライブでの解釈差を比較。
  • 最後に大作で総合力を体感:The Way Upを通しで聴いて、Maysの構成力と音響設計を見る。

まとめ — Lyle Maysの音楽が残したもの

Lyle Maysの音楽は「和声の豊かさ」「音色の設計」「大きな構成感」の三つが核です。Pat Metheny Groupのサウンドは彼の存在なしには考えにくく、Maysは単なるキーボーディストを越えた“サウンドメーカー”でした。今回挙げたアルバムは、Maysの多面性(即興家・作曲家・サウンドデザイナー)を感じられる代表例です。初めて触る人はシングル曲から入り、徐々に長尺作品へと踏み込む聴き方をおすすめします。

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