パット・マルティーノ入門:名盤でたどる再起の軌跡とジャズ・ギター聴き方ガイド
イントロダクション
Pat Martino(パット・マルティーノ)は、モダン・ジャズギターを代表する存在の一人です。高度なテクニックと強靱なハーモニー感覚、そしてメロディを大切にする姿勢で多くのミュージシャンとリスナーに影響を与えました。本コラムでは彼の生涯的背景、音楽的な魅力、代表作・名盤、そして聴く際のポイントまでを深掘りして解説します。
生涯と主要な出来事(概略)
- 生誕と出身:1944年に米国フィラデルフィアで生まれ、若くしてギターに没頭しました。
- 初期のキャリア:1960年代からプロとして活動を始め、オルガン・トリオをはじめとする現場で経験を積み、ジャズ界で頭角を現しました。
- レコーディング活動:60年代後半から数多くのリーダー作・参加作を発表。モダンジャズ寄りのアプローチで注目を集めました。
- 重篤な病と再起:1970年代後半〜1980年代始めにかけて脳のトラブルで一時的に演奏や記憶を失いましたが、自分の過去の録音を頼りにギターを再習得し、見事にカムバックしました。この実話は多くの人の心を打ちました。
- 晩年と評価:その後も精力的に演奏・録音を続け、教則本やマスタークラスでも後進を導き、ジャズ・ギター史に残る存在として評価されています。2021年に亡くなりましたが、その音楽は現在も多くのギタリストやリスナーに影響を与え続けています。
音楽的な魅力と特徴
- シングルラインの流麗さ:ソロにおいてはホーン奏者のような一貫した「歌う」ラインを作り上げます。長いフレーズの中でも旋律性を維持し、聴き手を引き込む力があります。
- ハーモニーの深さ:コードの音構成やテンションの扱いに優れており、複雑なハーモニーの上でも明瞭なフレーズを組み立てます。モード、三度・七度の動き、アルペジオを巧みに組み合わせます。
- ビバップ的な語法とモダンな語彙の融合:チャーリー・パーカー的なビバップ・リンガージュを基盤に持ちつつ、モーダルな発想や現代的なフレージングも取り入れて、古典と革新を両立させました。
- 卓越したリズム感とフレージング:タイミングやアクセントの付け方が巧みで、同じテーマでも多様なニュアンスを生み出します。スウィング感のあるフレーズからファンク/ジャズ・ロック寄りのグルーヴまで対応します。
- 音色(トーン)へのこだわり:暖かくクリアなトーンで、音の輪郭がはっきりしているため、複雑なラインでも聞き取りやすく、演奏の説得力を高めています。
代表曲・名盤(入門と深掘りのための推奨盤)
以下は彼のキャリアを理解するうえで特におすすめのアルバムです。各作は時代背景や音楽性が異なるため、順に聴くことで変遷が見えてきます。
- El Hombre(1967):若き日の勢いと技巧が詰まったリーダー作。初期の名演が聴ける入門盤として有効です。
- Consciousness(1974):よりモダンで深いハーモニック志向が強い作品。マルティーノの理論的深みと即興の質を堪能できます。
- The Return(1987):病後の再起を象徴するアルバム。技術的な復活だけでなく、音楽に対する新たな成熟が感じられます。
- その他の注目作:本人作やライブ録音には珠玉の演奏が多数あります。ライブの緊張感や相互作用を楽しみたい方はライヴ盤もおすすめです。
なぜPat Martinoを聴くべきか — その意義と魅力
- テクニックと音楽性の両立:単なる技巧主義ではなく、常に「歌」を忘れない演奏が学べます。ギターの技術と音楽的表現の理想的なバランスを示してくれます。
- ハーモニー教育としての価値:彼のソロはハーモニー進行をいかに単旋律で表現できるかの教科書的側面があり、理論を実践的に学びたいギタリストや作曲家にとって貴重です。
- 人生ドラマとしての感動:病による挫折と復活の物語は、音楽以上に人間的な感銘を与えます。技術だけでは語れない“強さ”と“誠実さ”が音楽に刻まれています。
- 幅広い応用性:ビバップ〜モダン・ジャズ〜フュージョン寄りのサウンドまで自在に渡るため、ジャンルを横断して新しい発見があります。
聴き方のポイント(初心者〜中級者向け)
- まずは代表曲で「フレーズの歌い方」を聴き取り、メロディの処理方法に注目する。
- 次にソロの中で使われるアルペジオやスケールの動きを追い、和音との関係(どのコードのどの音を強調しているか)を確認する。
- ライブ演奏ではリズムの変化や即興の応酬が顕著なので、繰り返し聴いて微妙なニュアンスをつかむと理解が深まる。
- ギタリストであれば短いフレーズを抜き出して耳コピし、フレージングとピッキングのニュアンスを手で確認するのがおすすめです。
影響と継承
Pat Martinoのアプローチは、現代の多くのギタリストやミュージシャンに受け継がれています。テクニカルな側面だけでなく、音楽の組み立て方や演奏における哲学(音楽の“語る力”を重視する姿勢)は次世代にとって重要な財産です。
まとめ
Pat Martinoは技巧と深い音楽理解を兼ね備えた稀有なギタリストであり、その人生と演奏は多くの教訓と感動を与えてくれます。初めて聴く人は代表作から入り、ソロのフレーズやハーモニー処理に注目して繰り返し聴くことで、彼の真価をより深く味わえるでしょう。
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