テルエ・リプダル入門:ECM期の名盤5選と聴きどころガイド
はじめに — テルエ・リプダルという音世界
テルエ・リプダル(Terje Rypdal, 1947–)はノルウェー出身のギタリスト/作曲家で、ECMレーベルを代表するアーティストの一人です。ロック的なギター・トーン、ジャズの即興性、クラシカル/シネマティックな構築感、電子処理によるテクスチャーを組み合わせた独自のサウンドは「北欧の映画音楽的ギター」と評されることもあります。ここではレコード(アルバム)単位で彼の魅力を深掘りし、代表作と聴きどころを紹介します。
おすすめレコード(ECM期の名盤を中心に)
Terje Rypdal(1971)
ECM移籍後のデビュー作にあたるアルバム。リプダルのギターが前面に出た基本形が示されています。ロック寄りの歪みとジャズ的な即興が同居し、初期の実験的な側面がよくわかる作品です。
- 聴きどころ:ギターの音色作り(サステインとエフェクト)、メロディを長く引き伸ばす語り口、テンションの構築。
- 初心者へのおすすめ度:入門として良い。リプダルの“生のギター”感が伝わりやすい。
What Comes After(1973)
よりアンサンブル志向が強まり、楽曲の構造や間(ま)が洗練されていく過渡期の傑作。リプダルの作曲としての深みと、より静的な「空間」の扱いが目立ちます。
- 聴きどころ:抑制されたダイナミクス、メロディと和声の組み合わせ、静と動の対比。
- おすすめポイント:映画的でありながらジャズ的。ソロ中心のギターヒーロー像とは一線を画す作風。
Whenever I Seem to Be Far Away(1974)
オーケストラやストリングスを取り入れた作品で、リプダルの「叙情性」と「空間設計」が拡張されます。ギターはソロ楽器としてだけでなく、テクスチャーやオーケストレーションの一部として機能します。
- 聴きどころ:室内楽的な配置、弦楽器との対話、シネマティックな高揚感と静寂の交錯。
- おすすめポイント:リプダルの作曲家としての側面を深く味わえる一枚。
Odyssey(1975)
多くの評論家・ファンがリプダルの代表作に挙げる名盤。ダイナミックでスケール感のある演奏が連なり、エモーショナルで儀式的な高まりを持つトラックが並びます。ECMの音響美学とリプダルのギター表現が極まった一枚です。
- 聴きどころ:長尺曲での緊張と解放、ギターの旋律的な語り、リズムとハーモニーの積み重ね。
- おすすめポイント:リプダルを「深く」知りたい人に最適。夜や静かな時間に向く音像の広がりがあります。
Waves(1977)
よりドリーミーでアンビエント寄りの要素が強くなる作品。エレクトリックな色彩を残しつつも、景色描写としての音楽性が強調されています。初期のロック/ジャズの衝動からさらに成熟した「音の風景」へ移行したことが感じられます。
- 聴きどころ:流れるようなフレーズ、残響と音の層、抑えたテンポでの深い集中感。
- おすすめポイント:映画音楽的な情緒を好むリスナーに刺さる一枚。
(番外)後年の作品について
80年代以降もリプダルは録音を続け、エレクトロニクスの導入やオーケストラとの協働などで音楽性を拡張しました。初期ECM三部作〜オデッセイ期を押さえたうえで、90年代以降のアルバムへ進むと「初期のテーマを発展させた現代的な語り」が楽しめます。
聴きどころを掘り下げる:リプダルの“音”の特徴
- ギター・トーン:歪みと透明感を同居させたサステイン重視の音色。単なるロック・ギターではない、声に近い奏法。
- 空間の扱い:間(ま)を生かした展開、残響や余韻を積極的に楽曲構成に取り込む。
- 和声感覚:ミニマルでもあり、モーダルな響きやクラシカルな和声進行を取り入れる。
- ドラマ性:静寂から徐々に盛り上がるプロセスを大事にする、映画音楽的な起伏。
入門から深掘りへのおすすめの聴き順
- まずは「Terje Rypdal」で“素のギター”像を把握する。
- 次に「What Comes After」「Whenever I Seem to Be Far Away」で作曲家としての幅を感じる。
- 最終的に「Odyssey」でリプダルの世界観の到達点を味わう。
- 興味が湧いたら80〜90年代以降の作品や、オーケストラ/室内楽的な試みにも進む。
関連アーティスト/文脈(聴き比べのヒント)
- ヤン・ガルバレク(Jan Garbarek):同じ北欧ECMの空気感、サックスを中心とした「静謐さ」を比較して聴くと面白い。
- キース・ジャレット(特にソロ~ECM時代):空間把握や静と動の使い方の対比が参考になる。
- ミニマル/アンビエント系(ブライアン・イーノ等):テクスチャー重視の観点での比較。
まとめ(どんな人におすすめか)
テルエ・リプダルは「ギターヒーローの派手さ」を期待するリスナーにも、「静謐で深い音世界」を求めるリスナーにも訴えかける稀有な存在です。映画音楽的な情緒、ジャズ的な即興性、ロック的な音色志向が融合したサウンドは夜の長い時間や集中して聴く時間に特に映えます。まずは挙げた数枚を順に聴き、そこから枝葉を伸ばすようにディスコグラフィを辿るとリプダルの全体像が見えてきます。
参考文献
- Terje Rypdal — Wikipedia (English)
- Terje Rypdal — ECM Records (artist page)
- Terje Rypdal — AllMusic
- Terje Rypdal — Discogs
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