EMSとは何か?建築・土木業界で注目される環境マネジメントシステムを徹底解説
EMSとは
EMS(Environmental Management System:環境マネジメントシステム)とは、企業や組織が環境に配慮した活動を計画的・継続的に行うための仕組みや管理体系のことです。
建築・土木業界では、工事現場の環境負荷低減や省エネ対策、廃棄物管理、騒音・振動対策などに直結するため、非常に重要な概念となっています。
ISO 14001を基準としたEMSの構築は、多くの建設会社が取り組んでおり、公共工事の総合評価方式でも評価対象となることがあります。
なぜ建設業にEMSが必要なのか?
1. 工事現場の環境負荷が大きい
建設工事は、以下のような環境負荷を伴います。
- 騒音・振動
- 粉じん
- 建設廃棄物
- CO₂排出
- 化学物質の管理
- 工事車両の排ガス
EMSを導入することで、これらを体系的に管理し、環境影響を最小限に抑えることができます。
2. 地域住民・発注者への信頼性向上
環境対応がしっかり行われている企業は、住民・行政・元請からの信頼度が高まります。
3. 入札で有利になる
公共工事では「企業の環境配慮型経営」が評価され、EMS認証(ISO14001取得)は加点対象になることがあります。
4. 企業価値・ブランド力の向上
環境配慮は時代の要請であり、サステナビリティ経営として企業価値向上につながります。
EMSの基本構成
1. 環境方針
経営者が示す「環境保全」に関する基本方針。
例:CO₂削減・廃棄物削減・省エネ推進など。
2. 環境側面の特定
工事や業務の中で「環境に影響を与える要因」を洗い出す作業。
粉じん、廃棄物、化学物質など。
3. 計画(Plan)
環境目標を設定し、具体的な実施計画を作成。
4. 実施(Do)
計画に基づいて現場・社内で取り組みを実施。
例:散水による粉じん対策、エコ機材の使用、廃棄物の適正分別。
5. 点検(Check)
環境監査・内部監査を行い、計画通り実施されているかを確認。
6. 改善(Act)
見つかった課題を改善し、次の年度の計画に反映する。
この「PDCAサイクル」がEMSの中核となります。
EMSとISO14001の関係
ISO14001は「環境マネジメントシステム」に関する国際規格で、EMSが適切に構築・運用されているかを認証する制度です。
ISO14001を取得するメリット
- 発注者・元請からの信頼性向上
- 環境リスク管理能力の証明
- 総合評価方式の入札で加点
- 企業のイメージアップ
- コンプライアンス違反のリスク低減
建設業界では、ISO9001(品質)とISO14001(環境)をセットで取得している企業が多く見られます。
建築・土木でのEMS実践例
1. 粉じん・騒音対策
- 防音シートの設置
- 道路清掃・散水
- 粉じん発生作業の時間管理
2. 建設廃棄物の適正管理
- 現場での分別強化
- マニフェストの適正運用
- リサイクル率の向上
3. 省エネ・CO₂削減
- アイドリングストップ
- LED照明の使用
- 高効率建設機械の導入
4. 化学物質・油類の管理
- 漏えい防止トレイの使用
- 保管場所の明確化
- SDS(安全データシート)の整備
5. 周辺住民への配慮
- 工事に伴う説明会
- 苦情対応の記録
- 作業時間帯の遵守
これらの活動を体系的に管理するのがEMSです。
EMS導入のメリット
企業のリスク低減
環境事故・法令違反・近隣クレームなどを予防できます。
作業者の意識向上
環境方針や目標の共有により、現場全体の意識が向上します。
文書管理・記録の整備
環境管理が「見える化」されるため、発注者の評価も高くなります。
コスト削減
- 廃棄物減量
- 省エネ
- 資源の再利用
EMSの運用がそのまま経費削減につながる場合も多くあります。
まとめ
EMSとは、企業が環境への責任を果たしながら持続的に事業を行うための「環境マネジメントの仕組み」です。
建築・土木業界では、騒音・粉じん・廃棄物・省エネ・住民配慮など、現場の課題に直結しており、企業価値向上や入札評価にも影響します。
ISO14001を活用したEMSの構築は、これからの建設業において必須の取り組みと言えるでしょう。
参考文献
- 国土交通省|建設業の環境配慮に関する資料
https://www.mlit.go.jp - ISO14001 国際規格(環境マネジメントシステム)
https://www.iso.org - 日本建築学会|環境工学・環境配慮に関する資料
https://www.aij.or.jp - 環境省|環境マネジメント関連資料
https://www.env.go.jp


