Stock Aitken Waterman(SAW)とは?80年代ヒット工場のサウンド解説+代表曲とレコード購入チェックガイド
Stock Aitken Waterman(SAW)とは — 80sポップを量産した「ヒット工場」
Stock Aitken Waterman(以下SAW)は、マイク・ストック(Mike Stock)、マット・エイトケン(Matt Aitken)、ピート・ウォーターマン(Pete Waterman)の3人から成る英国のソングライター/プロデューサー・チームです。1980年代中盤から後半にかけて、ポップ/ダンス・チャートを席巻し、「ヒットを量産する工場(Hit Factory)」として知られました。Kylie Minogue、Rick Astley、Bananarama、Jason Donovan、Dead or Alive、Donna Summer、Samantha Fox、Mel & Kim など、当時の大物アーティストとのヒットを多数生み出しています。
SAWサウンドの特徴(簡潔に聴き分けるポイント)
テンポ感:ダンス寄りのアップテンポ(おおむね115〜130 BPM)の楽曲が多く、エネルギッシュで前に出るグルーヴが特徴。
リズムとドラム:プログラムされたドラム(808/909系のキック、刻みのハイハット、カッチリしたスネア)を基盤に、4つ打ちの明快さを重視。
シンセ/ベース:分厚いシンセ・ベースとキャッチーなシンセ・リフ。簡潔で耳に残るフックを何層にも重ねる編曲。
ヴォーカル処理:コーラス多用、ダブルトラック、掛け合い/呼びかけ型のサビ展開などポップ志向のボーカル・アレンジ。
ミックス感覚:クラブとラジオの両方で映える「即効性のある」ミックス。Aメロからサビへの繋ぎ方、衝撃的なイントロでの掴みが巧み。
聴くべき代表作(おすすめレコード厳選)
Rick Astley — "Never Gonna Give You Up"(シングル) / Album: Whenever You Need Somebody (1987)
SAWによる最も象徴的なヒットの一つ。完璧なフックと安定したダンス・ビート、ヴォーカルの親しみやすさが光ります。オリジナルの7"でのポップな短尺形態、12"やプロモEPでは延長ミックスやインストが楽しめます。Kylie Minogue — "I Should Be So Lucky"(シングル) / Album: Kylie (1988)
SAWとKylieの出会いを象徴する曲。プリミティブかつ直球のポップ・メロディが特徴で、彼らの"女の子向けポップ"を確立した一曲。アルバム全体もSAW一色の仕上がりで、当時のPWLサウンドを総括できます。Bananarama — "Venus"(シングル) / Album: True Confessions (1986)
オリジナルのロック曲をダンス寄りに再構築したカバーで、SAW流の大ヒットに。原曲をモダンな80sダンス・ポップに変換する手腕が分かります。Dead or Alive — "You Spin Me Round (Like a Record)"(シングル) / Album: Youthquake (1985)
エッジの効いたダンス・ナンバーで、クラブでも強い支持を持つ1曲。SAW以前の彼らの関わりもありつつ、曲のエネルギーはプロデュースの影響大です。Mel & Kim — "Respectable"(シングル)
短いフレーズとカラフルなコーラスワーク、リズムの切れ味が詰まった典型的SAWヒット。ポップでありながらダンスフロアに直結する構成が勉強になります。Jason Donovan — "Too Many Broken Hearts"(シングル) / Album: Ten Good Reasons (1989)
ティーンポップ的な仕上がりの楽曲。Kylieと並ぶPWL勢の一角で、ラジオ向けの甘くポップなサウンドが詰まっています。Donna Summer — "This Time I Know It's For Real" / Album: Another Place and Time (1989)
ディスコ女王Donna SummerがSAWと組んだ意欲作。クラシックなディスコ要素と80sのハイブリッド化されたプロダクションが聴きどころです。Samantha Fox — "Nothing's Gonna Stop Me Now"(シングル)
ポップで攻めの強いシングル。女性ソロ・ポップの場面でのSAWのアプローチが分かる一曲です。Compilation — "The Hit Factory: The Best of Stock Aitken Waterman"(各種編集盤)
SAW作品を広く俯瞰したい場合、オムニバスやベスト編集盤は入門に最適。代表ヒットを一度に聴けるため、サウンドの共通点や差異が分かりやすいです。
各レコード(シングル/アルバム)の聴きどころメモ
"Never Gonna Give You Up":イントロのフック、ブリッジからのサビへの鍵の掛け方に注目。ヴォーカルの温度感と機械的なビートの対比が魅力。
"I Should Be So Lucky":メロディの単純さと反復が“中毒性”を生む。短い曲構造でも余白を作らず盛り上げる構成技術が光ります。
"You Spin Me Round":ベースとシンセの刺さるリフ、ヴォーカルのエッジがクラブで映える。ミックスの前面に置かれたリフが印象的。
"This Time I Know It's For Real":ディスコの遺伝子を継承しつつ、80sの鮮やかなポップ感で再パッケージした例。
コレクター/購入時のチェックポイント
レーベルとカタログ番号:オリジナル・プレス(特にUKのPWL表記)かどうかは価値に関わることが多いです。商品説明や写真でラベル面・カタログNo.を確認しましょう。
フォーマット:7"はラジオ編集、12"は延長ミックスやクラブ向けリミックスが含まれることが多く、12"のオリジナル・ミックスはコレクター人気が高いです。
国別差:米国盤、欧州盤、日本盤で収録曲・リミックスが異なる場合があります。特に日本盤はボーナストラックや解説付きのことがあり、コレクターズ・アイテムになりやすいです。
コンピレーション:公式ベストや「Hit Factory」系編集盤は入門用として便利ですが、オリジナル・シングルにしか収録されていないミックスもあるため、その点は注意。
評価と影響 — 「マニファクチャード・ポップ」への賛否
SAWは「ヒットを量産する」ことに特化したプロダクション手法で多くの批評と賛辞を同時に受けました。批評側は「フォーミュラ化」「作り物めいたポップ」と評する一方、支持者は「誰もが一度聴けば忘れられないフック」「ダンスポップの完成形」として高く評価します。現代ポップ/EDMで見られる「フック重視」「ワンフックで勝負する」制作感覚は、SAWの影響を受けたとも言えます。
おすすめの聴き方(プレイリスト作りなど)
年代順に並べて聴く:1985年あたりからの流れを追うと、サウンドの洗練化が分かります。
同一アーティストで比較:Kylieのシングル群やRick Astleyのシングル/アルバムを通して、SAWのアレンジの変化を確認。
原曲とSAW版を比較:Bananaramaの"Venus"など、原曲とSAWのカバーを交互に聴くと編曲の妙がよくわかります。
参考としてのディスコグラフィ入門
まずは代表的なシングルを1枚ずつ押さえ、気に入ったらそのアーティストのSAWプロデュース作のアルバムや12"を追うと良いでしょう。コンピレーション盤やオフィシャルなベスト盤も手早い導入になります。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery


