Mel Tormé(メル・トーメ)おすすめレコード厳選ガイド:名盤の聴きどころと年代別おすすめ盤

Mel Tormé — おすすめレコード深掘りコラム

“The Velvet Fog” の愛称で親しまれたMel Tormé(メル・トーメ)は、ジャズ・ヴォーカルの名手であると同時にソングライター、アレンジャーとの化学反応を活かしたレコーディングで知られます。本コラムでは、代表的な名盤や聴きどころを深掘りして紹介します。収録曲や編曲、歌唱表現に注目して選んでください(再生・保管・メンテナンスの技術的解説は含みません)。

おすすめレコード(注目盤と聴きどころ)

  • 「Marty Paich デクテットとのセッション」(Marty Paich Dek-Tette sessions)

    概要:1950〜60年代にメル・トーメがマーティ・ペイチ(Marty Paich)率いる小編成オーケストレーション(いわゆる“dek-tette”)と共演したセッション群は、ジャズ的な即興感ときめ細かなアレンジが絶妙に融合しています。

    • 聴きどころ:ブラスや木管が小編成で緻密に動くアレンジと、トーメのスウィング感あるタイム処理。スキャットや声のニュアンス変化が際立ちます。
    • 代表曲例:アップテンポのスウィング曲とバラードがバランスよく収録されることが多いので、アレンジの細部(イントロのリフ、バックのリズム・アクセント)に注目。
  • 「Mel Tormé Sings Fred Astaire」系のトリビュート盤

    概要:トーメは映画音楽・ブロードウェイ系のスタンダードを独自のジャズ語法で歌い替えるのが得意です。フレッド・アステア曲を扱ったようなトリビュート盤は、典雅な選曲と洒脱な解釈が魅力。

    • 聴きどころ:原曲の雰囲気を壊さずに“ジャズ的解釈”を加えるさじ加減。フレージングの余白、語尾の処理に注目するとトーメの職人技がわかります。
    • 代表曲例:映画やダンス系のナンバーをジャジーに再構築した曲が中心。歌詞を活かした語り口にも耳を傾けてください。
  • 「Comin' Home Baby!」関連のシングル/アルバム

    概要:メル・トーメのキャリアにおける代表的なヒットのひとつで、R&Bやソウル寄りのグルーヴをジャズ・ヴォーカルに持ち込んだ例です。商業的成功とジャズ表現の折衷が興味深い一枚。

    • 聴きどころ:ベース/リズムセクションの刻みとトーメの語り口のリズム感。節回しの“間”やイントネーションでモダンな魅力を出しています。
    • 代表曲:「Comin' Home Baby!」は必聴。ジャズ・ヴォーカルがポップ寄りのアレンジでどう表情を変えるか観察してください。
  • クリスマス関連録音(特に「The Christmas Song」関連のコンピレーション)

    概要:メル・トーメは「The Christmas Song(Chestnuts Roasting on an Open Fire)」の共作者として知られ、自らの録音も名高い。クリスマス曲を集めた編集盤や年代別コンピはトーメの歌唱美を再確認するのに最適です。

    • 聴きどころ:温かみのある中低音の使い方、語りの柔らかさ。曲によってアレンジやテンポを微妙に変え、同じナンバーの別テイク比較も楽しめます。
    • 代表曲:「The Christmas Song」各年代のテイクを比較すると、トーメの呼吸やビブラートの使い方の変化が見えて面白いです。
  • ジョージ・シアリング(George Shearing)などピアノ伴奏と二重奏した晩年のライヴ/スタジオ録音

    概要:晩年のコンコード(Concord)期にはピアノ伴奏や小編成でのデュオ/トリオ作品が多く、歌と楽器との対話により歌唱の“会話性”が引き立ちます。ピアニストとのデュオ録音は特におすすめです。

    • 聴きどころ:伴奏者との間合い、応答の仕方。フレージングの小さな変化や即興的な間(ま)を楽しめます。
    • 代表曲例:スタンダード集を歌い回すレパートリーが中心。ライブ録音だとアドリブやMCも楽しめ、トーメのステージ・パーソナリティが伝わります。
  • 初期の「Mel-Tones」時代のセッション(ヴォーカル・グループ時代の録音)

    概要:1940年代のMel-Tones時代の録音には、トーメのハーモニー感覚と若き日の歌唱の原点が詰まっています。ヴォーカル・アンサンブルの確かなセンスは後年のソロ歌唱にも連なります。

    • 聴きどころ:コーラスワーク、ハーモニーの構築、リズムの取り方。ソロでの歌い回しとの比較でトーメの成長がわかります。
    • 代表曲例:当時のポピュラー/スタンダードの小曲が中心。アンサンブルのアレンジや録音の趣を楽しんでください。

聴きどころを深掘りするポイント

  • フレージングとブリージング:トーメは語るように歌うタイプで、歌詞の句切りや呼吸の位置が非常に音楽的です。フレーズの開始・終了の「間」を意識して聴くと、詞解釈の妙がつかめます。

  • リズム感とタイミング:スウィングの微妙な遅れ・先行、バックのリズムとの呼吸の合わせ方に注目。アップテンポではラフな軽み、バラードでは柔らかなテンポ感が特徴です。

  • アレンジと対話するヴォーカル:マーティ・ペイチら名アレンジャーとの仕事では、歌がアレンジに埋没せず“対等に会話”している点が魅力。ブラスや木管のリフに対するレスポンスを聴いてください。

  • 別テイク比較の楽しさ:スタジオ録音やライヴでの別テイク比較は、トーメの即興的な選択(メロディの変化、ヴィブラートの有無、フレーズの長さ)を味わうのに最適です。

レコードを選ぶときの視点(音質・編成・年代)

同じ曲でも年代や録音環境により表情が変わります。1950年代のデクテット録音は編曲の妙を、1960年代のR&B寄り録音はグルーヴを、晩年のデュオ/ライヴは会話的表現と成熟した音色をそれぞれ楽しめます。CDやストリーミングで予習してからレコード購入を決めるのも賢い方法です。

最後に:Mel Tormé の魅力をどう味わうか

Mel Tormé の魅力は“完璧な美声”だけではなく、言葉の伝え方、リズムの捉え方、アレンジとの呼吸にあります。おすすめ盤を何枚か聴き比べることで、ヴォーカル・ジャズの表現の幅とトーメの独自性がより深く理解できるはずです。

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参考文献