Steve Gadd入門 — 代表曲・ドラミングの特徴とセッションで愛される理由

Steve Gadd — プロフィールと魅力を深掘り

Steve Gadd(スティーヴ・ガッド)は、現代の音楽シーンにおいて最も尊敬されるドラマーの一人です。ジャズ、ロック、ポップ、フュージョン、R&B と幅広いジャンルで活躍し、レコーディング/ツアー双方で数多くの名演を残してきました。本コラムでは彼の経歴、演奏スタイル、セッションワークでの立ち回り、代表作と聴きどころ、そして多くのミュージシャンやリスナーを惹きつける魅力を丁寧に解説します。

プロフィール(概略)

  • 本名:Steve Gadd
  • 出身:アメリカ、ニューヨーク州ロチェスター(1945年生まれ)
  • 学歴・出自:音楽教育を受け、クラシックやジャズの基礎をしっかり築いたバックグラウンドを持つ(Eastman School 系の音楽教育圏出身という経歴が知られています)。
  • 主な活動:セッションミュージシャンとしての膨大な録音歴、自己名義のバンドや共演プロジェクト、数多くのツアー参加。

キャリアのハイライト

ガッドは1970年代以降、ニューヨークを拠点にセッション活動を本格化させ、多くの大物アーティストのレコーディングに参加しました。特にポール・サイモンやスティーリー・ダンといったアーティストとの仕事で、その名とドラミングが広く知られるようになりました。さらに、ジャズ/フュージョン系のプレイヤーやポップ/ロックのアーティストと幅広く共演し、ジャンルを超えた“信頼されるドラマー”としての地位を確立しました。

代表曲・名盤(聴きどころ)

  • Paul Simon — "Still Crazy After All These Years"(収録曲:"50 Ways to Leave Your Lover")
    50 Ways のシンプルかつ強烈なグルーヴはガッドの代名詞のひとつ。リムショット/クラヴィング風の鳴りや、間の取り方、どこまでも落ち着いた“ポケット”は、楽曲全体の印象を決定づけています。
  • Steely Dan — "Aja"(タイトル曲 "Aja")
    タイトル曲での複雑で緻密なビートと、パラディドルを応用した独特のフィルは、ドラマーの教科書的な名場面。楽曲の中でのタイム感とダイナミクスのコントロールは一聴の価値があります。
  • Stuff(バンド)/各種セッション作品
    ガッドは有能なセッションメンバーたちと結成したバンドでも活躍。ファンキーでグルーヴ感あふれる演奏は、彼の多面的な魅力を示しています。また、ジョン・メイヤーやエリック・クラプトン、チック・コリア等の多様なアーティストの録音にも名演が残っています。

ドラミングの特徴とテクニック

Steve Gadd のドラミングは「テクニックの華やかさ」だけでなく、「楽曲への貢献度」を何より重視する点で特に評価されています。具体的な特徴は次の通りです。

  • 絶対的なポケット(タイム感):常に「歌」に寄り添うタイミングで、グルーヴを崩さない。テンポを安定させながらも微妙な遅れ・前乗りで人間味を出す技術に長けています。
  • ゴーストノートとダイナミクスの巧みさ:スネアのゴーストノートを用いた細やかなレイヤー作りで、リズムが“呼吸”するような揺らぎを生み出します。
  • パラディドルやリズムの分散(リニアなアプローチ):両手の交差やパラディドルから派生する複雑なパターンを自然に楽曲内に落とし込むことで、単純にならないグルーヴを構築します(Aja のような名演で顕著)。
  • 用途に応じた音色選択とスティック/ブラシの使い分け:ブラシ、マレット、スティックを状況に応じて使い分け、サウンドのテクスチャーを豊かにします。
  • 「引き算」の美学:派手なフィルを連発するのではなく、必要な場面だけに的確な一打を入れることで、楽曲の印象を強くします。

セッションワークでの立ち回り(なぜオファーが絶えないのか)

多数のトップアーティストがガッドを起用する理由は、単なる“うまさ”以外にあります。

  • 楽曲の核心を理解する耳:アレンジや歌メロの意図を素早く把握し、最適なリズムパートを提案・実行できること。
  • 柔軟性:ジャズ寄りの複雑なフレーズからシンプルなポップのグルーヴまで、ジャンルの要求に即応する力。
  • 安定した現場対応力:リハーサルや本番での落ち着き、ミュージシャン間のコミュニケーション力が高い。
  • 音色と楽曲への配慮:ドラムの音量やタッチを曲に合わせてコントロールする能力。録音エンジニアやプロデューサーからも信頼される理由です。

Steve Gadd の魅力 — 聴き手に伝わる部分

ガッドの演奏は「技術を見せつける」タイプではなく、耳に残る“グルーヴ”を作ることに徹しているため、ミュージシャン以外の一般リスナーにも直感的に訴えます。以下が主な魅力です。

  • 人間味のあるリズム感:完璧すぎない微妙な揺らぎが楽曲に温度を与えます。
  • 楽曲第一の姿勢:ドラムが前へ出すぎず、しかし必要な存在感を放つバランス感覚。
  • 多彩な色彩感:ブラシやマレット、スネアの叩き分けなどで楽曲に異なるテクスチャーを付与。
  • 「フレーズとしてのドラム」:単なるリズムの繰り返しではなく、メロディやハーモニーと対話するドラムラインを作る点。

Steve Gadd を聴くための入門ポイント(おすすめトラック)

  • "50 Ways to Leave Your Lover"(Paul Simon) — リムショット主体の洗練されたグルーヴ。ポップスにおけるドラムの在り方が学べます。
  • "Aja"(Steely Dan) — 高度なフレーズと楽曲への貢献が同居する名演。細部まで聴き込む価値があります。
  • Stuff の録音群 — ファンク/ジャズ・ロックにおけるタイトで豊かなグルーヴを体感できます。

後進への影響と評価

スティーヴ・ガッドは多くのドラマーにとって「手本」とされる存在です。モダンドラミングにおけるゴーストノートの扱い方、パラディドルの応用、そして何より「楽曲を第一に考える姿勢」は、教育的にも影響力が大きく、ドラマー志望者からセッション・ミュージシャンまで広く尊敬されています。

まとめ

Steve Gadd は、技巧だけでなく「音楽にどう貢献するか」を最優先にするドラマーです。派手なショーマンシップではなく、楽曲の中で確実に機能するグルーヴを生み出す能力が、彼を長年にわたってトップレベルの座に置いています。ドラミングの細かなテクニックを学ぶだけでなく、楽曲への“寄り添い方”を知るためにも、彼の演奏は何度も繰り返し聴く価値があります。

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参考文献