ポール・デスモンド入門:アルト・サックスの名手が残した必聴アルバムと聴き比べガイド
Paul Desmond — ひとこと紹介
Paul Desmond(ポール・デスモンド、1924–1977)は、クール・ジャズを代表するアルト・サックス奏者。乾いた輝きのある柔らかなトーンと、メロディを“歌う”ようなフレージングで知られます。特にデイブ・ブルーベック四重奏団(Dave Brubeck Quartet)での活動と、自作の「Take Five」で広く知られていますが、リーダー作やデュオ/コラボレーション作にも名盤が多数あります。
音楽的な特徴 — 何を聴けばデスモンドだとわかるか
- 音色:金属的に硬くならず、丸みと透明感のある“薄絹”のような音色。
- フレージング:ジャズ・スケールの外側に出すことは少なく、シンプルなモチーフを緻密に展開していく。
- タイム感:拍節の中でゆったり“歌う”余裕、リズム・セクションとの呼吸の取り方が巧み。
- ユーモアと知性:メロディに遊び心やウィットを忍ばせる表現が多い。
おすすめレコード(代表盤を深掘り)
Time Out — Dave Brubeck Quartet
なぜ聴くか:ジャズ史に残る名盤。5/4拍子の「Take Five」(作曲:Paul Desmond)をはじめ、非4拍子への挑戦とメロディの魅力が詰まっています。デスモンドの歌うようなアルトがもっとも多くの人に届いた作品です。
聴きどころ:デスモンドの語り口(ソロ)を中心に、ポールの音色の温度感、フレーズの呼吸を追うと良い。スタンダードの改編(拍子の転換)で彼がどのようにメロディを保持するかも注目。
Take Ten — Paul Desmond(リーダー作)
なぜ聴くか:リーダー作としての魅力が詰まったアルバムで、ブルーベック作品とは一線を画す“デスモンド節”が堪能できます。アレンジや編成の工夫により、彼の音楽的な幅がわかります。
聴きどころ:フレーズの端正さ、メロディの緩急、ギターやリズムとの対話(相互応答)に耳を傾けてください。デスモンドの歌心がリーダー作で一層露わになります。
Two of a Mind — Paul Desmond & Gerry Mulligan
なぜ聴くか:バリトン(Mulligan)との対話形式の傑作。異なる音域・キャラクター同士がぶつからずに融合する“会話”が聴きどころです。デスモンドの柔らかさが牽引力となり、対位法的な即興が美しい。
聴きどころ:デュエットの瞬発力、コントラスト(アルトの軽さ vs バリトンの骨太さ)を楽しんでください。楽器間でのフレーズ交換に注目すると彼のセンスがよく分かります。
Bossa Antigua — Paul Desmond
なぜ聴くか:ボサ・ノヴァ/ブラジリアンな要素を取り入れたサウンドで、デスモンドのリリシズムが柔らかく香ります。ラフでなく洗練された“ゆるさ”が魅力。
聴きどころ:リズムの微妙なスウィング感と、メロディの柔らかい発声が生む“黄昏的”な情緒に注目。歌うようなアーティキュレーションを聴き分けてください。
From the Hot Afternoon — Paul Desmond
なぜ聴くか:プロデューサーや編曲者の色彩も濃い、やや都会的で南米風味の強い作品。デスモンドのメロディ・センスがポップ寄りに現れ、アレンジの小技も楽しめます。
聴きどころ:編曲(管弦の扱い、ギターやパーカッションの配合)とデスモンドのソロのバランス。アレンジャーの仕事と奏者の個性が噛み合う好例です。
Pure Desmond(代表的ライヴ/スタジオ集を含む)
なぜ聴くか:晩年に近い録音群には、より“円熟”した歌い回しと穏やかなユーモアが見え隠れします。スタンダードを独特の色で染め上げる職人技が光ります。
聴きどころ:シンプルな題材をどのように“色付け”するか。イントロの選び方、句読点の置き方など、フレージングの微細な差が楽しめます。
聴き比べの楽しみ方(少し踏み込んだポイント)
- ブルーベック時代の録音(Time Out など)とリーダー作を比較すると、即興のアプローチ/役割意識の違いがわかります。バンドの一員としての“語り”と、リーダーとして自由に歌う場面の差を探してみてください。
- デュオや少人数編成(Mulligan との共演など)では、余白の使い方が際立ちます。音数が減った瞬間にデスモンドが何を残すかに注目。
- ボサ系の作品ではリズム・ニュアンス(裏拍の扱い、パーカッションの粒)に耳を傾けると、彼のフレージングの柔軟性がよくわかります。
- 同じ曲の異なるバージョンを聴き比べる:たとえば「Take Five」以外にもスタンダードの複数ヴァージョンを比較すると、モチーフの変形やタイミングの置き方が楽しめます。
リスナーへの一言アドバイス
デスモンドは“速弾き”や過剰な技巧で聴かせるタイプではなく、1フレーズの選び方・置き方で巧みに心を掴みます。じっくりと“呼吸”を数えるように聴くほど、彼の美点が見えてきます。ヘッド(テーマ)〜ソロ〜テーマに戻るまでの“物語”を追うように聴くと、より深く楽しめます。
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