Amon Düül II 入門から深掘りまで:クラウトロックの名盤おすすめアルバムと聴き方ガイド
はじめに
Amon Düül II(アモン・デュールII)は、1968年前後に西ドイツで生まれたカルト的なサイケ/プログレッシブ・ロック/クラウトロックの代表的グループです。共同体的な背景を持つ前身Amon Düülから分派して結成され、即興性とフォーク、ブルース、アヴァンギャルドを混ぜ合わせた独自の音世界で1970年代初頭のシーンに強い影響を与えました。本稿では「入門にもコレクションにも役立つ」おすすめアルバムを深掘りして紹介します。各アルバムの位置づけ、聴きどころ、リイシューの傾向や聴き方の提案まで掘り下げます(再生や保管に関する技術的な助言は含めません)。
Amon Düül IIの簡単な背景
結成当初からコアメンバーは流動的でしたが、クリス・カレル(Chris Karrer/ヴァイオリン・ギター・サックス等)、レナーテ・ナウプ(Renate Knaup/ボーカル)、ヨハン・ヴァインツィール(John Weinzierl/ギター)らが中心となり、ロックの枠に収まらない長尺の即興曲や宗教的・民俗的モチーフを用いた作品を発表しました。初期の作風はより実験性が強く、次第にメロディやプロダクションが整えられていきます。
おすすめアルバム 1:Phallus Dei(1969)
なぜ聴くべきか:Amon Düül IIのデビュー作で、彼らの原点とも言える実験性と狂気性が詰まった作品。初期の過激な即興と民俗的な呪術感が混在し、カルト的魅力が色濃い。
聴きどころ:曲の構造よりもサウンドや空気感を堪能するアルバム。断片的なボーカル、ノイズ的なギター、反復するリズムに現れる宗教的・シャーマニックな側面が印象的です。
おすすめエディション:オリジナルの初期プレスはコレクターズ・アイテムですが、近年はEsoteric/Cherry RedやRepertoireなどによるリマスター再発が入手しやすく音質も安定しています。ボーナス曲が付いた再発も多いので、解説書きとトラック表を確認して選ぶと良いでしょう。
おすすめアルバム 2:Yeti(1970)
なぜ聴くべきか:バンドの代表作の一つ。初期の即興精神を保ちながら、作曲力やアレンジが飛躍的に向上した作品で、Amon Düül IIの“名盤”としてしばしば挙げられます。
聴きどころ:アルバム全体の起伏、短い曲と長尺の組み合わせ、そして女性ボーカルと男性の合唱的表現が染み渡る。即興的でありながらドラマ性があり、聴けばバンドの多彩さがわかります。
おすすめエディション:Esoteric/Cherry RedやRepertoireの紙ジャケ/リマスター盤に解説やボーナス音源が付くことが多く、まとまった聴取にはこれらが便利です。
おすすめアルバム 3:Tanz der Lemminge(1971)
なぜ聴くべきか:より構造化され、プログレ的な編成やスタジオ実験が進んだ作品。サイケからプログレへの橋渡し的な位置づけで、壮大な楽曲展開が魅力です。
聴きどころ:組曲形式のような長尺曲や、変拍子を用いたアレンジ、管弦楽的な瞬間もあり、作曲面での成熟を感じられます。聴き通すことでドラマ性と遊び心のバランスがわかります。
おすすめエディション:オリジナルLPの芸術的なパッケージ性も魅力ですが、まとまった解説と音質を求めるなら最近のリマスター盤(Esoteric/Cherry Red等)を検討してください。
おすすめアルバム 4:Carnival in Babylon(1972)
なぜ聴くべきか:メロディ性が強まり、ポップ性と実験性が共存するアルバム。グループがやや“曲”に重心を置き始めた時期の代表例で、幅広い聴き手に入りやすい。
聴きどころ:キャッチーなフレーズや歌ものの比率が増えた一方、随所に残るサイケ的な瞬間やエキセントリックなアレンジがアクセントになっています。
おすすめエディション:この時期の音源は複数のリイシューがあるので、トラック構成やボーナスの有無をチェックして選ぶと良いでしょう。
おすすめアルバム 5:Wolf City(1972/一部1973)
なぜ聴くべきか:バンドが国際的/商業的にも注目を浴びた時期の作品で、プロダクションが洗練されポップな要素も際立ちます。ただし実験性は完全には失われていません。
聴きどころ:プロダクション面での多彩な試み、ポップな詩世界とダークな瞬間の対比。Amon Düül IIの“もう一つの顔”を知るのに適しています。
おすすめエディション:当時のオリジナル盤は国によるプレス差があるため、リマスター盤でバランスの良い音像を確かめるのが手堅い選択です。
その後の作品と聴きどころ(簡潔に)
1973年以降もAmon Düül IIは精力的に作品を出し続けます。Vive la TranceやMade in Germanyなど、よりロック/歌モノ志向が進む時期の作品では、彼らの幅広さが際立ちます。初期の過激な即興を求めるなら前半期(~1971)が、曲作り・アレンジの妙を楽しみたいなら中期以降を追うとよいでしょう。
聴き方の提案:入門〜深掘りの順序
入門:Yeti → Phallus Dei — Yetiの「楽曲としての魅力」とPhallus Deiの「原始的な実験精神」を対比して聴くと理解が深まります。
中級:Tanz der Lemminge → Carnival in Babylon — 構成力やアレンジの変化を追うのに最適です。
深掘り:Wolf Cityおよび1973年以降のアルバム群 → ソングライティングとプロダクションの進化を確認しましょう。
コレクター向けの視点(注意点)
オリジナル盤はマニア間で人気が高く、プレスや帯の有無で評価が分かれます。初期プレスは大変高価になる場合があるため、まずは信頼できるリマスター/再発でサウンドを把握するのが効率的です。
再発はラベルや国によってトラック順やボーナス曲が異なることがあります。購入前に収録内容を確認してください。
解説やライナーノーツの翻訳/補足が付いているエディションは、背景理解を深めるのに役立ちます。
Amon Düül IIが与えた影響と聴きどころのまとめ
Amon Düül IIは、即興的・儀式的なサイケ要素と、ダイナミックなロック/プログレ的構築の両方を体現した希有な存在です。初期の過激さ、Yetiに代表される名盤群、そして中期以降の曲作りの深化――それぞれの時期に異なる魅力があるため、「どこから聴くか」で印象は大きく変わります。まずはYetiやPhallus Deiで空気感を掴み、Tanz der Lemmingeで構成力の妙を味わい、Carnival in Babylon〜Wolf Cityで彼らの多面性を確認する流れをお勧めします。
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参考文献
- Amon Düül II — Wikipedia
- Amon Düül II — AllMusic
- Amon Düül II — Discogs(ディスコグラフィ情報)
- Esoteric / Cherry Red — Amon Düül II リイシュー情報
- Bureau B — Amon Düül II(再発・カタログ)


