Thrice(スライス)徹底解説:エモから実験サウンドへ—名盤・歌詞・ライブの魅力と聴き方ガイド

バンド概要:Thriceとは

Thrice(スライス)は、南カリフォルニア出身のロックバンドで、エモ/ポストハードコアの枠組みから出発し、実験性や叙情性を深めながら独自の音楽世界を築いてきました。1990年代後半に結成され、メロディと激しさを両立させた楽曲、知的で内省的な歌詞、そしてジャンルを横断する挑戦的なアルバム構成で根強い支持を獲得しています。

メンバー(代表)

  • Dustin Kensrue — ボーカル/リズムギター。歌詞の主要な作者で、宗教的・哲学的なテーマを含む表現で知られる。
  • Teppei Teranishi — リードギター/キーボード。サウンドの実験性やテクスチャー形成に大きく貢献。
  • Eddie Breckenridge — ベース。楽曲の低音領域での表情付けを担う。
  • Riley Breckenridge — ドラム。変拍子やダイナミクスで楽曲の骨格を作る巧者。

サウンドの変遷と特徴

Thriceの音楽は大きくいくつかのフェーズに分けて語れます。初期の激情的なポストハードコア路線から、よりメロディックで実験的なサウンドへと移行し、その過程でアコースティック、電子音、アンビエント、プログレッシヴな構造など多様な要素を取り入れていきました。

  • 初期:スピード感と攻撃性を持つポストハードコア/エモの影響が強い。
  • 中期:メロディの深化とスタジオでのサウンド探索(シンセ、エフェクト、音響的実験)が顕著に。
  • 概念作・実験作:四元素をテーマにした組曲的なアルバムなど、コンセプトに基づく大作志向。

歌詞・テーマの深さ

Dustin Kensrueの歌詞は個人の内面や信仰、倫理・社会問題、存在論的な問いを扱うことが多く、単なる「憂い」や「怒り」を超えた深さを持っています。宗教的バックグラウンドを持ちながらも、ストレートな布教ではなく、問いや葛藤、対話としての表現を選ぶため、リスナーが個々に解釈を重ねられる余地があります。

代表曲・名盤(入門におすすめの作品)

  • Identity Crisis(初期作):激情と若さが詰まったデビュー的作品。初期Thriceのエネルギーを知るのに最適。
  • The Artist in the Ambulance(メジャー以降のブレイク作):キャッチーなリフとドラマ性、プロダクション面での洗練が見える一枚。バンドの知名度を広げた代表作。
  • Vheissu(転換点):実験的なアプローチが本格化した作品。アンビエント/テクスチャーを積極的に導入し、従来の枠組みを壊した。
  • The Alchemy Index(コンセプト四部作):「火・風・水・地」といった要素をテーマに分割された野心作。ジャンルや音色の概念実験としても評価が高い。
  • Beggars(成熟期):ダイナミクスと歌詞の深さが結実した感のある作品。バンドの成熟を示す一枚。
  • To Be Everywhere Is to Be Nowhere / Palms(近年作):近年も高いクオリティで進化を続け、現代的な音響処理や社会的テーマを反映した楽曲群を発表。

音楽的な魅力(細部の技術と表現)

  • ダイナミクスの巧みさ:激しいパートと静かなパートの落差を効果的に使い、ドラマを生み出す構成力。
  • リズムの変化とテクニカルな演奏:変拍子やアクセントの置き方など、単純な4/4に頼らないことが多く、リスナーを飽きさせない。
  • 音色・テクスチャーへのこだわり:ギターやエフェクト、キーボード、非伝統的な音響処理を重ねて豊かなサウンドスケープを作る。
  • 歌詞の多層性:宗教、倫理、個人的な痛みや希望が織り交ざり、聞くたびに新たな発見がある。

ライブの魅力とバンドの姿勢

ライブでは演奏力と熱量が両立します。技術的に難しいパートを正確に演奏しながらも感情を前に出すため、スタジオ録音以上にパワフルな印象を受けることが多いです。また、ファンとの距離感を大切にする姿勢や、商業性と芸術性のバランスを自ら考える姿勢も評価されています。

聴き方ガイド:入門から深堀りまで

  • まずは代表曲(「All That’s Left」や「Stare at the Sun」、「Black Honey」などのシングル的楽曲)でメロディとエネルギーを掴む。
  • 次にアルバム単位で聴く。特に「Vheissu」や「The Alchemy Index」はアルバム構成の妙が楽しめるため、通しで聴くと理解が深まる。
  • 歌詞に注目する:Dustinの歌詞は一度読むだけでは広がりが見えにくいので、翻訳や歌詞カードを手元に置き何度か聴くことを勧める。
  • ライブ音源/映像をチェック:演奏のダイナミクスやアレンジの違いが分かりやすく、バンドの別の側面が見えてくる。

なぜ現在も支持されるのか(まとめ)

Thriceの魅力は「変化を恐れないこと」と「深い表現力」にあります。商業的なヒットを追うだけでなく、音楽的・概念的な挑戦を続け、リリースごとに新しい顔を見せる。加えて、高い演奏力と誠実なリリース姿勢(歌詞やテーマへの真摯な取り組み)がファンの信頼を築いてきました。ジャンルを横断して聴ける懐の深さと、リスナーの知的好奇心を刺激する作品群が、長年にわたる支持の理由です。

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参考文献