Tony Williams のドラミングを徹底解説:必聴レコードと聴き方ガイド
イントロダクション — Tony Williams を今聴く理由
Tony Williams(1945–1997)は、ジャズ史上最も影響力のあるドラマーの一人です。10代でマイルス・デイヴィスのグループに参加して以来、リズム感、タイム感、ダイナミクスの概念を大きく刷新し、モダン・ジャズからフュージョンへと音楽の地平を押し広げました。本稿では「聴くべきレコード」を中心に、各盤の位置づけ・聴きどころを深掘りします。
Tony Williams の音楽的特徴(簡潔に)
- ドラムのタイム感は「グリッドに縛られない推進力」を持つ。拍を刻むだけでなく、アクセントやポリリズムで音楽を牽引する。
- テンポやビートの固定概念を崩しつつもアンサンブルの中で強く機能する「会話するドラミング」。
- 若年期から作曲・バンドリーダーとしても活動し、サウンドの方向性(特にエレクトリック/フュージョン志向)を主導した。
おすすめレコード(必聴盤とその聴きどころ)
1) Life Time (Blue Note, 1964)
ポイント:Tony のリーダー作の出発点。アヴァンギャルド寄りの要素とモダン・ジャズの融合を試みた野心作で、作曲家・バンドリーダーとしての一面が明確に現れます。
- 聴きどころ:ドラミングのテクスチャー(タム、スネアの使い分け)、曲ごとに変化する空間処理。若き日の旺盛な探究心が音に表れている。
- 曲の例:アルバムを通しての流れを重視して聴くと、即興と構築のバランス感覚が分かる。
2) E.S.P. / Miles Davis Quintet (Columbia, 1965)
ポイント:T. Williams が在籍した「セカンド・グレート・クインテット」期の代表作。Wayne Shorter、Herbie Hancock、Ron Carter といったメンバーとの化学反応が聴けます。
- 聴きどころ:リズムの呼吸(タイムの伸縮)と、ドラムが"空間"を作る役割。Williams は単なる伴奏以上の「音楽の推進力」を担っている。
- 代表曲:アルバム全体が連続した演奏として機能するため、個々の曲よりも通して聴くことを推奨。
3) Miles Smiles / Sorcerer / Nefertiti(Miles Davis 関連作、1967–1968)
ポイント:クインテットの成熟期。即興の密度とインタープレイが高まり、Williams のドラミングはさらに抽象度を増していきます。
- 聴きどころ:Wayne Shorter の作曲と相互作用するドラミング、リズムがメロディと同等に扱われる瞬間。
- 実感ポイント:ソロのテクニックだけでなく「リズムで物語を進める」手腕を確認できる。
4) In a Silent Way / Bitches Brew(Miles Davis、1969–1970)
ポイント:電化/スタジオ・ワークを重視したマイルスの革新的作品群。Tony はアコースティック・ジャズからエレクトリックなサウンドへの橋渡しを体現しました。
- 聴きどころ:ビートのレイヤリング、スピード感とは別の「推進力」。これは後のフュージョンに直結するアプローチ。
- 注目点:編集・スタジオ・プロダクションとドラミングの相互作用。ドラムがスタジオ処理にどう馴染むかを学べる。
5) Emergency! — The Tony Williams Lifetime (Polydor/Harvest, 1969)
ポイント:ロック的なエネルギーとジャズの即興性を結びつけた歴史的名盤。John McLaughlin(ギター)とLarry Young(オルガン)とのトリオ編成で、ジャズ・ロック/フュージョンの出発点となったアルバムです。
- 聴きどころ:ハードでアグレッシブなビート、ギターとオルガンの図式に対するドラマーの応答。従来の「4ビート」の枠から外れる瞬間を多数体験できる。
- 代表曲:「Emergency!」の圧力と即興セクションは必聴。
6) Turn It Over (The Tony Williams Lifetime, 1970)
ポイント:Emergency! の続編的要素を持ちながらも、より構築的な曲作りとロック寄りのダイナミクスを追求した作品。ライヴ感とスタジオワークのバランスが特徴です。
- 聴きどころ:ドラミングのダイナミクスとテンポ・シフト、ソロよりも楽曲全体での役割に注目。
7) Believe It / Million Dollar Legs(The New Tony Williams Lifetime、1975–1976)
ポイント: Allan Holdsworth(ギター)やAlan Pasqua(キーボード)を要した新生Lifetimeによる、テクニカルかつメロディアスなフュージョン期の傑作群。
- 聴きどころ:複雑なコード進行・ギターのハーモニーに対してWilliams が開発したビートの使い方。ドラムがハーモニーの色彩に沿う様子が分かる。
8) The Joy of Flying(1978)他(ソロ作・後期)
ポイント:1970年代後半はポップ/ディスコ的要素やプロダクション志向のサウンドも取り入れ、商業的アプローチと実験性の両立を図った時期です。
- 聴きどころ:プロダクションが前に出る作品でのドラミングの立ち位置。コンテンポラリーなリズム感の適用法を学べます。
各盤の「聴き方」ガイド(実践的)
- 繰り返し聴く順序:まずはマイルス期(E.S.P.〜Miles Smiles)でバンド内の「会話」を聴き、次に Emergency!/Turn It Over でリズムの攻めを体験、最後に New Lifetime のテクニカルさを確認すると進化が分かりやすい。
- 注目するポイント:スネアのタッチ、シンコペーションの入り方、間(空白)の使い方。Williams は「叩くこと」以外に「叩かないこと」で音楽を形作るドラマーです。
- プレイと作曲の関係:彼はドラマーであると同時に作曲家なので、「リズムが作曲意図にどう貢献しているか」を考えると深まる。
初心者向けプレイリスト(入門順)
- 1. E.S.P.(全体を通して) — マイルス・クインテット期の基礎
- 2. Miles Smiles / Nefertiti(抜粋) — インタープレイの妙
- 3. Emergency!(全体を通して) — ロック的エネルギーと即興
- 4. Believe It(抜粋) — フュージョンでの技巧とサウンド造形
ディスク選びのヒント(音質・バージョン)
ここでは細かなカッティングやマスタリングの違いまで踏み込みませんが、マイルス周辺の1960年代作品はオリジナル・アナログ盤(US初回プレス)に高い価値があり、サウンドのダイナミクスが豊かです。Lifetime 関連はリイシューやリマスター盤で音像が改善されているものもあるため、レビューを確認してから購入するのが良いでしょう。
最後に — Tony Williams の聴きどころ総括
Tony Williams を深く聴くことは「ドラマーを聴く」以上に、ジャズにおけるリズムの概念そのものを学ぶことに等しいです。アンサンブルにおけるリズムの役割、即興と作曲の距離感、音楽の推進力の作り方——これらを理解することで彼の革新性がより鮮やかに見えてきます。
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参考文献
- Tony Williams (drummer) — Wikipedia
- Tony Williams — AllMusic(ディスコグラフィー&レビュー)
- Tony Williams — Discogs(盤情報・リイシュー情報)
- Miles Davis Official / 作品情報(参照用)


