Shirley Verrettの録音ガイド:メゾソプラノからソプラノへ、聴きどころとおすすめ盤の選び方
導入 — Shirley Verrettとは何者か
Shirley Verrett(シャーリー・ヴェレッ、1931–2010)は、アメリカ出身の劇的な表現力をもつ歌手で、当初はメゾソプラノとしてキャリアを築き、のちにソプラノ領域のレパートリーにも進出した稀有な存在です。深い音色と確かな発声、強烈なドラマ性を兼ね備え、ヴェルディやビゼー、マスネといったレパートリーで名演を残しました。本稿では「レコード蒐集の観点」から彼女のおすすめ録音を取り上げ、各録音の聴きどころや選び方の指針を詳しく解説します。
聴きどころを整理する:ヴェレッを味わうためのポイント
声の変遷を追う:初期のメゾ期(低域の厚み、暗い色彩)から、後年のソプラノ的な上行域の拡張とドラマティックな表現へと変化した過程を聴き分けると、歌手としての成熟がよく分かります。
ドラマ性と語りの力:単に美声を楽しむだけでなく、役の心理を言葉とフレージングで描き出す表現力を評価すると、ヴェレッの真価が見えてきます。
ライブ録音とスタジオ録音の対比:スタジオ録音は音色と均整が聴けますが、ライブ録音では即興的な色付けや観客の反応、役への没入が際立ちます。両方を聴き比べることをおすすめします。
必携のおすすめ録音(入門〜コレクター向け)
以下は、彼女の芸術性を多角的に理解するのに役立つ録音群です。入手時は「スタジオ録音/ライブ」「録音年」「レーベル情報」を確認すると違いがわかりやすくなります。
1) 「Carmen」(ビゼー) — ヴェレッの代表的役どころとして
ヴェレッのカルメンは、声のダークさと鋭い表現力が融合した演技歌唱が魅力です。ハバネラやセギディーリャのような名場面で、彼女の語り口とリズム感が光ります。複数の録音(スタジオ/ライブ)が存在するので、演出や共演者の違いで聴き比べると楽しいです。
2) ヴェルディの要役(例:Amneris/Eboli/Azucena)を集めた録音
ヴェレッはヴェルディのドラマティックなメゾロールを得意としました。アムネリス(アイーダ)、エボリ(ドン・カルロ)、アズチェーナ(イル・トロヴァトーレ)など、重心のある中低域と強い表現力を活かした場面は必聴です。これらを含むオペラ全曲録音やアリア集は、ヴェレッの“ヴェルディ読解”が分かる資料になります。
3) リサイタル/アリア集(ヴェルディ&フランス物中心)
短めのアリアを集めたアルバムは、音楽性の広がりを手早く知るのに最適です。ヴェルディのアリア集、マスネやビゼーなどフランス作品の抜粋集は、彼女の語法・フレージング・発音の確かさがよくわかります。
4) メトロポリタンや重要なライヴ録音(舞台の迫力を体感)
ライブ録音では、役に没入した即興的な色づけや観客との一体感が際立ちます。例えば彼女のメト公演やヨーロッパの主要劇場でのライヴ音源は、演技的な強度と瞬発力を知るうえで貴重です。スタジオ録音とは異なる“生の熱”を重視するならライヴ中心のコレクションを。
5) 晩年のソプラノ的役の録音(変化と成熟を聴く)
キャリア後半にかけて一部ソプラノ役に取り組んだ録音は、声の色彩がどう変化したか/技術的にどう工夫したかを示す好資料です。声域を広げた挑戦の過程を追跡する意味でも重要です。
どの盤から買うべきか:優先順位と選び方
まずは代表役の全曲録音(Carmenや主要なヴェルディ作品):役そのものの解釈が凝縮されており、ヴェレッの演技・表現の全体像が掴めます。
次にリサイタル/アリア集:短めの楽曲で彼女の声質やフレージングの多様性を確認できます。入門盤としても最適です。
最後にライブ録音や珍しい共演盤:余裕が出てきたら、異なる年のライブや異なる指揮者・共演者との化学反応を聴いて幅を出しましょう。
聴取時の注目ポイント(トラック別/場面別)
低域の厚みとフォルテの安定性:メゾ時代の持ち味で、役の“底力”を感じさせます。
語尾の処理と英仏伊語ごとのアクセント:言語表現に注意を払うと、彼女の俳優的解釈が見えてきます。
ダイナミクスの幅と瞬間的な色彩変化:ピアノでの細かな表情やフォルテでの鋭さの対比に注目してください。
コレクター向けの小技(購入・比較)
複数の盤(スタジオとライブ)を揃えて、同じアリアや場面の解釈の違いを比較すること。録音年の違いで声の変化が分かります。
リマスター盤やボックスセット(編集盤)には未発表トラックやライナーノーツが豊富なことがあるので、情報収集として有用です。
ライヴ盤は音質がまちまちなので、音質よりも演出や演技性を取るか、音質重視でスタジオ盤を選ぶか明確にして購入しましょう。
最後に:ヴェレッの録音で得られる楽しみ
Shirley Verrettの録音を聴くことは、単に「美声を聴く」体験を超え、役という人物を声で生き生きと描き出す瞬間に立ち会うことです。メゾソプラノとしての重厚さ、ソプラノ的な上行域の拡張、そして何より舞台上での俳優性——これらが交差する録音は、オペラという総合芸術の魅力を濃縮して伝えてくれます。
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参考文献
- Shirley Verrett — Wikipedia
- Shirley Verrett — AllMusic
- Shirley Verrett — Discogs(ディスコグラフィ)
- Metropolitan Opera Archives — Search: Shirley Verrett


