Therionの原点と進化をLPで追う:シンフォニック/オペラティック・メタルの名盤ガイド
Therion — シンフォニック/オペラティック・メタルの原点を辿るおすすめレコード・コラム
スウェーデン出身のTherionは、デスメタル的な出発点からクラシック・オーケストレーションや合唱、オペラ歌唱を大胆に取り入れ、ジャンルの枠を押し広げてきたバンドです。本コラムでは、Therionの音楽性の転換点や代表作を「レコード(LP)で楽しむ」観点から深掘りして紹介します。各アルバムの聴きどころ、歴史的背景、レコードで手に入れる際の選び方(エディションに関する注目点)を中心に解説します。レコードの再生や保管・メンテナンスに関する説明は省きます。
選び方の前提と楽しみ方
時代ごとの転換点を意識する:初期(デスメタル路線)→中期(Theli以降のシンフォニック路線)→近年(コンセプト作・実験作)という流れで聴くと進化がよく分かります。
フォーマットで味わう差分:LPはアルバムの「空間感」やダイナミクスを強く感じさせます。特に合唱や管弦が大きく鳴るパッセージでは、そのスケール感が魅力になります。
エディションに注目:オリジナル・プレスと近年のリマスター/再発は音色やRemaster処理で差が出ます。リミテッドカラーやゲートフォールド仕様はコレクション価値が高いです。
Theli (1996) — 代表作かつ転機
聴きどころ:名実ともにTherionの「転機」とされる作品。ヘヴィなギターとシンフォニックな合唱・オペラ的ボーカルが融合した壮大な世界観は、このアルバムで一気に開花しました。
代表曲:「To Mega Therion」「The Invocation of Naamah」「Cults of the Shadow」など。
特徴:バンドのサウンドが“デス/ゴシックからオーケストラ/合唱を伴うシンフォニック・ヘヴィへ”と変貌した決定盤。宗教・神話的なテーマも強く表出しています。
レコード選びのヒント:オリジナル・プレスは入手が難しい一方、Nuclear Blastなどからの再発やアニヴァーサリー盤も出回っています。ゲートフォールドでアートワークを楽しめる盤は現物価値が高いです。
Vovin (1998) — サウンドプロダクションと歌唱表現の頂点
聴きどころ:スタジオ録音のクオリティ、合唱とソリストの使い分け、オーケストレーションの密度で高評価を受ける作品。Therionの「音の豪華さ」を最もストレートに味わえる一枚です。
代表曲:「Vovin」「The Wild Hunt」「Arrival of the Darkest Queen」など。
特徴:ポップなメロディラインがある曲もあり、シンフォニック・メタル入門としても優秀。プロダクションが洗練されているためLPでの再生で臨場感が増します。
レコード選びのヒント:リマスターやアナログ専用カッティングを謳う再発があれば、その音像の明瞭さを狙うと良いでしょう。限定カラー盤はコレクター人気が高いです。
Secret of the Runes (2001) — コンセプト作としての完成度
聴きどころ:北欧神話とルーン文字をテーマに据えたコンセプトアルバム。楽曲ごとに異なるルーンに対応する構成で、叙事詩的な流れを感じられます。
代表曲:「Ginnungagap」「Othala」「Futhark}」(※曲名はアルバムの流れを参照)。
特徴:民族風味のアコースティック要素や合唱の劇的演出が際立つため、LPでのダイナミクスと空間性が効きます。
レコード選びのヒント:コンセプト作ゆえにライナーノーツや歌詞カードの充実したエディションを選ぶと物語性の理解が深まります。
Lemuria / Sirius B (2004) — 二部作/豊穣なアイデア集
聴きどころ:2004年に同時リリースされた二枚組(地域やエディションによっては別々に出ていることも)。多様な楽曲スタイルが混在し、実験性とキャッチーさが同居します。
代表曲:「Kali Yuga Part II」「The Perennial Sophia」「Wine of Aluqah」など(アルバムにより曲調が大きく異なります)。
特徴:ヘヴィなリフと華やかな合唱を曲ごとに使い分け、バンドの表現レンジの広さがよく分かります。
レコード選びのヒント:2枚組仕様やボーナストラック入りのデラックス・エディションはコレクター向け。ジャケットやアートワークの大きさもLPの魅力です。
Gothic Kabbalah (2007) & Sitra Ahra (2010) — 晩年の充実期
聴きどころ:Gothic Kabbalahは複雑な構成と哲学的テーマを持ち、Sitra Ahraはヘヴィさとメロディのバランスが取れた作品。どちらもツアーでの再現性を考えた曲構成が魅力です。
代表曲(抜粋):「The Blood of Kingu」「Kings of Edom」「Sitra Ahra」など。
特徴:成熟した曲構築と重厚なアレンジ。LPで聴くと各楽器の位置関係や合唱の層が明瞭に聞こえ、アルバムとしての没入感が増します。
初期作品:Of Darkness / Beyond Sanctorum / Symphony Masses(1991–1993) — ルーツを知る
聴きどころ:初期はデスメタル色が濃く、後のシンフォニック路線とは異なる荒々しさがあります。コアなファンならば「進化の前夜」を味わうために必聴です。
特徴:荒削りなギター、デスボイス主体。初期のLPを持っているとアーティストの歴史的価値を強く感じられます。
レコード選びのヒント:初期プレスはコレクター価格がついていることが多いので、状態(スリーブ/盤)をよく確認することが重要です。
変化球:Les Fleurs du Mal (2012) — カヴァー集(フランス語)
聴きどころ:1960〜70年代のフランス語のポップ/ロックをTherion流にアレンジしたアルバムで、バンドの美学や音楽的嗜好を別角度で知ることができます。
特徴:通常作とは趣が異なるため、Therionの多面性を楽しみたいリスナーにおすすめです。LPのライナーや歌詞対訳があるエディションだと理解が深まります。
コレクター向けの注目ポイント
オリジナル盤 vs 再発:オリジナル盤は歴史的価値が高い反面、再発(リマスターやアナログ専用カッティング)では音質面で優れる場合があります。どちらを重視するかで選び分けてください。
限定カラー・ナンバリング:限定盤は見た目の満足度と転売価値が高いですが、通常黒盤のマスタークオリティが優れていることもあります。
封入物(ポスター、歌詞・解説冊子):コンセプト性の強いアルバムでは解説や歌詞カードが作品理解を助けます。LP購入時に封入物の有無を確認すると良いです。
ライブ盤・EP類の発掘:スタジオ盤以外にもライブ盤やEPにレア曲・別テイクが収録されることがあるため、コレクションの幅が広がります。
入門者向けおすすめの1枚
まず1枚を選ぶなら「Theli」か「Vovin」を推します。Theliはバンドのアイデンティティが確立された瞬間、Vovinはサウンドとプロダクションの完成度が高く、どちらもTherionの魅力を手早く体験できます。
まとめ:レコードでTherionを聴く意味
Therionの魅力は、音の“スケール感”と“多層的な合唱/オーケストレーション”にあります。LPはそのスケール感を最も自然に伝えてくれるフォーマットの一つです。アルバムの制作背景やテーマ性を意識しつつ、エディションや封入物にも注目して選べば、音楽的・コレクター的に満足度の高い買い物になるでしょう。
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参考文献
- Therion(日本語版ウィキペディア)
- Therion 公式サイト
- Therion - Discogs(ディスコグラフィ情報)
- Encyclopaedia Metallum — The Metal Archives: Therion
- AllMusic — Therion


