Julianna Barwickの音響世界を深掘り:おすすめアルバムと聴き方ガイド

Julianna Barwick — おすすめレコード深掘りコラム

Julianna Barwick(ジュリアナ・バーウィック)は、自身の声を多重録音・ループさせ、教会のような残響と合唱的なハーモニーで広がるドローン/アンビエント作品を作るアーティストです。シンプルな発声が何層にも折り重なり、音の「雲」が立ちのぼるような音世界は、瞑想的でありながら強い感情を湛えています。本稿では、彼女の代表作をアルバム単位で深掘りし、各作の特色や聴きどころを解説します。初めて聴く人がどの作品から入るべきか、ファンが再発見できる視点も織り交ぜています。

アーティスト概観 — 声を素材にする作曲法

Barwickの核は「声のテクスチャ」。マイクで収録した自分の歌声をルーパーで重ね、リバーブやイコライザで質感を整え、あたかも無数の声が同時に歌っているかのようなサウンドスケープを作ります。曲構造は伝統的な楽曲展開からは逸脱しがちですが、反復と微細な変化によって聴き手の感情を動かすドラマが生まれます。また、キャリアを通じて少しずつ外部の楽器やプロデューサー(例:アイスランドの音楽家との共演など)を取り入れ、音のレンジと表現を広げてきました。

おすすめアルバム 1 — The Magic Place(2011)

なぜ推薦するか:Barwickの「ブレイクスルー作」。シンプルなヴォーカル・ループを核に、純度の高い残響と浮遊感で一気に彼女の世界観を提示した一枚です。初期の素朴さと壮麗さが同居しており、彼女を知るうえでの基準盤になります。

  • サウンドの特徴:ほとんどが声由来のテクスチャ。露出の高いリバーブで「空間」が作品の重要な要素に。
  • 聴きどころ:単純なフレーズの反復が、時間とともにどのように色彩と深さを獲得していくかを追うと面白いです。
  • おすすめの聴き方:アルバム全体を通しての持続的な没入が価値を発揮します(曲単位で切り取るよりも通しで)。

おすすめアルバム 2 — Nepenthe(2013)

なぜ推薦するか:アイスランドでの制作や、現地のミュージシャンとの交流によって、より広がりのある音像を獲得したアルバム。The Magic Placeの精神を受け継ぎつつ、外部のテクスチャや静かなアンサンブルを取り込み、表現の幅が格段に広がっています。

  • サウンドの特徴:教会的な残響の上に、弦やアンビエントな環境音が混ざり合う。ヴォーカル・レイヤーはそのままに、より映画的な広がりがある。
  • 聴きどころ:自然や場所性(アイスランドの風景を想起させる空間感)と声が結びついた瞬間の力強さ。
  • こんな人に:ボーカル・アンビエントが好きで、よりオーガニックな寄りのアレンジも楽しみたい人。

おすすめアルバム 3 — Will(2016)

なぜ推薦するか:これまでの「声を積み重ねる」中心の作風に、シンセティックな音色やリズム的要素が取り入れられた転換点。音響的な奥行きは保ちながら、より構造化された楽曲が並び、ポップと実験の境界を行き来します。

  • サウンドの特徴:電子的なテクスチャ、パーカッシブな要素、そして従来通りの重層ヴォーカルが共存。
  • 聴きどころ:従来作の「持続する合唱感」が、より「動き」を伴って表現される点。新しいリスナーの入口になり得ます。
  • こんな人に:エクスペリメンタル寄りのポップさを求めるリスナー、サウンドの変化を追うコアファン。

おすすめアルバム 4 — Healing Is a Miracle(2020)

なぜ推薦するか:表現のさらなる拡張。エレクトロニクス、フィールド・レコーディング、外部奏者の参加などを通じて、内省的かつスケールの大きな音景を作り出しています。感情の振幅が広く、タイトルが示すように“癒し”をテーマにした深い作品です。

  • サウンドの特徴:テクスチャの多様化とダイナミクスの強化。ドローン的な持続性と瞬間的なクレッシェンドが共存します。
  • 聴きどころ:静寂と高揚の対比、声が近接してくる瞬間の温度感。
  • こんな人に:深い感情表現や音の細部をじっくり味わいたいリスナー。

その他:初期作・EP群の魅力

早期のEPや自主制作音源には、未成熟ゆえの即物性と実験精神が残っています。コアなテクスチャやアイデアの萌芽を聴くには最適で、コレクターズアイテム的価値もあります。

聴きどころの共通テーマ(全作を通して)

  • 声の“素材化”:声がメロディや歌詞的意味を超え、音色や空間そのものとして用いられること。
  • 反復と変化:同じフレーズの繰り返しが時間経過で色を変え、感情の起伏を作る点。
  • 空間の重要性:リバーブや残響処理による“場”の再現が楽曲の核になる。
  • 変化の連続性:各アルバムは前作の延長線上にありつつ、新たな要素を導入することで進化しています。

入門順(私のおすすめ)

  • まずは The Magic Place — 代表的なサウンドの基礎が分かる。
  • 次に Nepenthe — 空間表現の拡張を体感。
  • 続いて Will — 比較的構造化された曲作りを確認。
  • 最後に Healing Is a Miracle — 表現の広がりと深化を味わう。

まとめ

Julianna Barwickは、声の可能性を音楽的に極限まで探求してきたアーティストです。彼女の作品は“聴く”という行為を瞑想的にし、時間の流れを独特に感じさせてくれます。初期の美しい単純さから、後期の多彩なテクスチャまで、アルバムごとに異なる感触があるのが魅力です。まずは挙げた4作を軸に聴き進めると、彼女の音楽的旅路を体系的に追うことができます。

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参考文献