スティーヴ・ジャンセンの音響美学とリズム設計—Japan時代からNine Horsesまで徹底解説
スティーヴ・ジャンセン(Steve Jansen)とは
スティーヴ・ジャンセンはイギリス出身のドラマー/パーカッショニスト、作曲家で、バンド「Japan」のメンバーとして知られると同時に、デヴィッド・シルヴィアンらとのコラボレーションやソロ作品で独自の音響美学を築いてきました。ドラムやパーカッションの伝統的役割を超えて、エレクトロニクスや空間を活かしたテクスチャー作りを得意とし、ポストパンク/アートポップ~アンビエント方面に強い影響を残しています。
おすすめレコード:概観
ここでは、ジャンセンのキャリアを追いつつ「彼の音」がよく現れているレコードを厳選して紹介します。バンド期の名盤から再結成プロジェクト、本人名義や主要コラボ作まで、聴きどころとジャンセンの関わり方に注目して解説します。
Japan — Gentlemen Take Polaroids (1980)
おすすめポイント:Japan がアートポップ/ニューウェイヴ路線を確立した重要作。リズムは派手さよりも精緻さと間の取り方で楽曲のエレガンスを支えています。
- 代表曲:Gentlemen Take Polaroids、Swing
- ジャンセンの役割:伝統的なロック・ドラミングに留まらず、ブラッシングや細やかなパーカッションワークで曲のテクスチャーを作る。
- 聴きどころ:楽曲全体の空気感と細部のリズム表現。シンセやベースと絶妙に噛み合うグルーヴ感を味わってほしい。
Japan — Tin Drum (1981)
おすすめポイント:東洋的なモチーフやミニマルなリズム・アプローチを大胆に取り入れた、バンドの頂点とも言える一枚。ポリリズム的要素やループ感が特徴です。
- 代表曲:Ghosts、Visions Of China
- ジャンセンの役割:ミニマルな打楽器配置と繊細なビート作りで、楽曲の反復的美学を支える。
- 聴きどころ:シンプルながら計算されたリズムが楽曲に与える緊張と解放。音の抜き差しで生まれる情緒に注目を。
Rain Tree Crow — Rain Tree Crow (1991)
おすすめポイント:Japan のメンバーが名義を変えて制作した一枚。従来のポップ性を離れ、実験的で深遠なサウンドスケープに踏み込んだ作品です。
- 代表曲:Blackwater、A Thousand Years
- ジャンセンの役割:生の打楽器とエレクトロニクスを融合させた多層的なリズム・アレンジを提示。空間を作ることに長けています。
- 聴きどころ:静寂と音の重なりが生むドラマ。ジャンセンの「間」の使い方とサウンドデザイン性を感じ取ってください。
Nine Horses — Snow Borne Sorrow (2005)
おすすめポイント:デヴィッド・シルヴィアン、スティーヴ・ジャンセン、Burnt Friedman によるプロジェクト。ジャズ、アンビエント、電子音楽が交差するモダンな聴き物です。
- 代表曲:Wonderful World、Darkest Birds
- ジャンセンの役割:ドラム/パーカッションだけでなく、プロダクション面でも作品のムード形成に関与。生楽器とプログラミングの橋渡しを行う。
- 聴きどころ:有機的な演奏と電子的処理のバランス。ジャンセンのリズムが曲の色合いを決定づけている場面が多い。
Steve Jansen — Slope (2007)
おすすめポイント:ジャンセン名義の初期ソロ作。インスト/アンビエント寄りの音響作品で、彼のサウンド・デザインや繊細なビートの美学がストレートに出ています。
- 代表曲:A Quiet Life風の要素を含むトラック群(アルバム全体がコンセプチュアル)
- ジャンセンの役割:作曲者・演奏者として、自身の音楽的指向性を明確に示した作品。パーカッションをテクスチャー的に用いる手法が目立ちます。
- 聴きどころ:個々の音の配置や空間演出。歌モノ中心のキャリアと比べ、楽器の「鳴り」を味わうのに最適。
David Sylvian — Brilliant Trees (1984) (参加作)
おすすめポイント:デヴィッド・シルヴィアンのソロ初期を代表するアルバムで、ジャンセンは支援的な役割を通じて独特のリズム感と空気作りに寄与しています。
- 代表曲:Red Guitar、Brilliant Trees
- ジャンセンの役割:バックビートの補強やパーカッションで、シルヴィアンの叙情的世界を下支え。
- 聴きどころ:アンサンブルでの小さな工夫が楽曲の表情を変える点。ジャンセンのプレイは楽曲に深みを与えています。
聴き方・注目ポイント(音楽的観点)
- 「間」と「テクスチャー」に注目する:ジャンセンの魅力は速さや派手さではなく、音と音の隙間や質感で情緒を作る点にあります。
- 生楽器と電子音の融合:アコースティックな打音を加工・反復させて、リズムだけでなく「色」を作る手法をよく使います。
- コラボレーションでの役割:多くの場合リーダーには立たず、楽曲全体の調和を重視するコンダクター的な立ち位置で貢献しています。
聴く際のリリース選びについて(簡潔に)
オリジナル盤の音像が好まれる作品もありますが、近年はリマスターや再発でノイズ低減や音場の改善が図られているものも多いです。作品ごとにジャケットやリマスターの有無を確認して、自分の好みに合わせて選ぶと良いでしょう。
最後に
スティーヴ・ジャンセンの魅力は「目立たないが忘れがたい」サウンドメイクにあります。ドラマー/パーカッショニストという枠を超えて、音の空間をデザインする作家としての側面を持つ彼の作品群は、繰り返し聴くほどに新しい発見を与えてくれます。まずは上記のアルバムを通して、彼のリズム感覚と音響的な美意識に触れてみてください。
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参考文献
- Steve Jansen — Wikipedia
- Japan (band) — Wikipedia
- Gentlemen Take Polaroids — Wikipedia
- Tin Drum — Wikipedia
- Rain Tree Crow — Wikipedia
- Nine Horses — Wikipedia
- Brilliant Trees — Wikipedia
- Steve Jansen — Discogs


