This Mortal Coilとは何か?4ADの美学を体現する名盤と聴き方ガイド

This Mortal Coilとは

This Mortal Coil(ディス・モータル・コイル)は、イギリスの名門レーベル4ADのレーベル主宰者イヴォ・ワッツ=ラッセル(Ivo Watts‑Russell)が主導したプロジェクト/コレクティヴです。1980年代中盤に活動し、レーベル所属アーティストやゲストを招いて、既存楽曲のカヴァーやオリジナルをひとつの統一された美学で再構築した作品群で知られます。

音楽的特徴と聴きどころ

  • カヴァーを通した再解釈:フォーク、ポップ、インダストリアルなど異なる源泉の楽曲を、浮遊感のあるアレンジとアンビエント寄りのプロダクションで“一枚の世界”にまとめ上げるのが特色です。

  • ボーカルの重層表現:Cocteau Twins のエリザベス・フレイザー(Elizabeth Fraser)をはじめ、4AD所属や関係者の歌手が曲ごとに起用され、ボーカルの色合いが曲の世界を決定付けます。

  • プロデュースとサウンドデザイン:イヴォのキュレーションと、当時の4ADサウンドに共通する残響やフェイズ感、精緻なアレンジで、原曲の輪郭を保ちながら新しい感情面を引き出します。

  • アルバム単位の構成美:シングル的なヒット狙いではなく、アルバム全体を通してのムード作りや流れを重視している点も大きな魅力です。

おすすめレコード(名盤)

  • It'll End in Tears(1984年)
    This Mortal Coil のデビュー作品とも言えるアルバム。代表曲「Song to the Siren」(ティム・バックリーのカヴァー)を含み、静謐でドラマティックなアレンジが詰まっています。4ADらしい夢幻的サウンドを初めて体験するのに最適な一枚です。

  • Filigree & Shadow(1986年)
    大判の2枚組アルバムで、より実験的かつ多層的なアプローチが取られています。音のテクスチャーや楽曲の広がりにより、より深い没入感を得られる作品です。コレクティヴとしての懐の深さがよく出ています。

  • コンピレーション/編集盤(入門向け)
    ベストやアンソロジー的な編集盤も存在し、初めてThis Mortal Coilに触れる人には代表曲を効率よく聴ける入口として有用です(所収曲や音源の出典を確認して好みの編集盤を選びましょう)。

代表曲ピックアップと聴き方のヒント

  • Song to the Siren
    ティム・バックリーの楽曲を切り詰め、透き通ったボーカルと浮遊するアレンジで新たな表情を与えた一曲。This Mortal Coil を象徴するトラックです。

  • アルバム全体の流れを味わうことをおすすめします。曲ごとの起伏や静寂の扱いが巧みなので、プレイリスト再生よりアルバム頭から順に聴くことで、制作側が意図したドラマを感じ取りやすくなります。

コレクター向けの選び方ポイント(音源・エディション)

  • 初期プレスとリイシューの違い:オリジナルLPは当時のマスタリング感がありコレクター価値が高い一方、近年のリマスター/再発(公式リイシュー)は音像のバランスが現代の機器で聴きやすく調整されている場合があります。どちらを重視するかで選び分けてください。

  • パッケージとライナーノーツ:4ADの初期プレスはジャケットや内袋、インサートの仕様が異なることがあり、ビジュアルや言葉の補足を重視するコレクターには重要です。

  • CDやデジタルでしか聴けないボーナストラックや編集バージョンが存在する場合もあるので、楽曲のヴァリエーションを楽しみたいなら複数フォーマットの確認を。

周辺アクトとの関係性(楽しみ方を深めるために)

  • Cocteau Twins、Dead Can Dance、Colourbox といった4AD周辺アーティストとの音楽的接点を追うと、当時の美意識や制作背景がより理解できます。各アーティストのオリジナル曲と This Mortal Coil のカヴァーを聴き比べるのも面白い発見があります。

  • 当時の4ADのデザイン哲学(パッケージやアートワーク)も、本作群の世界観を補強する重要な要素です。ジャケットを含めた“作品体験”として楽しんでください。

楽しみを広げるための聞き比べアイデア

  • オリジナル曲とThis Mortal Coil版を並べて聴き、編曲・テンポ・音色・ボーカル表現がどのように変化したかに注目する。

  • 同時代の4AD作品と比較して、プロダクション上の共通点(残響処理、コーラスの扱い、空間の作り方)を探す。

  • ボーカリスト別に聴き比べ、声質が楽曲に与える印象の違いを楽しむ(エリザベス・フレイザーが参加している曲などは比較的見つけやすいです)。

エバープレイの中古レコード通販ショップ

エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

エバープレイオンラインショップのバナー

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery

参考文献