Nothing(ナッシング)徹底ガイド:シューゲイザー/オルタナの名盤と音像の進化|Guilty of Everything から The Great Dismal まで

Nothing — プロフィール概観

Nothing(ナッシング)はアメリカ・フィラデルフィアを拠点に活動するオルタナティヴ/シューゲイザー系ロック・バンド。中心人物はフロントマンのドメニック・パレルモ(Domenic Palermo)で、バンドは2010年代初頭に結成され、既存のシューゲイズ・リバイバルの文脈の中で独自のノイズ/メロディ感覚を打ち出して注目を集めました。ノイズとドリーミーなメロディが同居する音像、ポスト・ハードコアやグランジの要素を取り込んだダイナミクス、そして内省的かつ時に暗い歌詞世界が特徴です。

主要メンバー(代表)

  • Domenic Palermo — ボーカル/ギター(バンドの中心人物・ソングライター)
  • Nick Bassett — ベース/ギター(Whirr 出身などシューゲイズ系シーンとの関係性を象徴する存在)
  • その他、ラインナップは作品やツアーごとに変動があるため、音源ごとのクレジットを見ると人物の入れ替わりが確認できます。

サウンドの本質と魅力

Nothing の音楽は「音の密度」と「メロディの残像」を同時に感じさせることに長けています。以下がその主な要素です。

  • ギター・テクスチャ:厚く重なったリフとシュラー(歪み・リバーブ)による“ウォール・オブ・サウンド”。My Bloody Valentine や Slowdive の影響を感じさせつつ、よりロック/パンク寄りのアタック感を持つ。
  • ダイナミクス:静→爆発、クリーン→歪みといったコントラストを効果的に使い、感情の起伏を強調する。
  • ボーカル/メロディ:ドメニックの声はしばしば冷たさや陰影を帯びつつも、耳に残るメロディラインを持つ。ノイズに埋もれながらも“歌”が中心に据えられている。
  • 感情表現:喪失や孤独、自己洞察といったテーマを扱うことが多く、リスナーにカタルシスを与える。

アルバムごとの進化(代表作解説)

Nothing はリリースを重ねるごとに音像や制作アプローチを変化させ、シューゲイズ/オルタナという枠組みを拡張してきました。ここでは代表作を取り上げ、その特徴を深掘りします。

Guilty of Everything(2014) — デビュー作の衝撃

1stフルアルバムは、厚いギター・テクスチャと内省的な歌詞で高い評価を受けた作品。シューゲイズ的な音像を基盤としつつ、メロディやポップ感を併せ持つため、単なる“ノイズ”に留まらない聴きやすさがあります。荒削りながらも情緒的な強度があり、バンドの基盤を築いた作品です。

Tired of Tomorrow(2016) — 深度と幅を獲得

2ndではプロダクションのクオリティと楽曲の構築力が一段と向上。プロデュース面での工夫によりギターの層がより明瞭になり、歌メロも際立つようになりました。アルバム全体のエモーショナルな起伏が洗練され、シューゲイズの美麗さとロックの衝動を高度に両立させた一枚と言えます。

Dance on the Blacktop(2018) — ロック性の強調

3rdではより直接的で攻撃的なロックの側面が前面化。ノイズとメロディのバランスは保ちつつ、リズムやアグレッションが増し、ライブでの即効性も高い楽曲が増えました。ジャンル的な横断性が強まり、ポストハードコア/グランジのファンにもアピールする音像です。

The Great Dismal(2020) — 暗闇の深掘り

以降の作品では楽曲テーマや音色がさらにダークな方向へと深化。個人的・社会的な不安や疎外感を掘り下げつつ、サウンドはより重厚で陰影を増しています。重苦しさの中に救済を求める感情があり、バンドの表現の幅が成熟したことを示しています。

代表曲(入門向けの推奨トラック)

  • Dig(Guilty of Everything 期を代表する曲。ノイズとメロディの好例)
  • Vertigo Flowers(Tired of Tomorrow 期の人気曲。幅のあるプロダクションとフック)
  • Zero Day(Dance on the Blacktop の攻撃性を象徴するナンバー)
  • Say Less(The Great Dismal の暗さと重さを表現する楽曲)

ライブ/パフォーマンスの魅力

  • 音圧と空間演出:ステージ上でのギター・レイヤーが実際の体感として強く、スモークやライティングと相まって没入感が高い。
  • 感情のダイレクトさ:録音物よりもさらに生々しい爆発があり、観客との一体感やカタルシスを生みやすい。
  • セットリストの幅:ドリーミーな曲から直球のロックまで幅があるため、フェス向けにもクラブ向けにも対応可能。

なぜ多くのリスナーに刺さるのか(魅力の要点)

  • ノイズとポップの同居:ノイジーで激しいサウンドと、記憶に残るメロディの両立が希少でバランスが良い。
  • 感情の深さ:喪失や孤独といった普遍的なテーマを、重厚な音像で体験的に表現するため感情移入しやすい。
  • ジャンル横断性:シューゲイズ、ポスト・ハードコア、グランジ、オルタナの要素を自然に混ぜ合わせ、幅広いリスナー層に届く。
  • 成長する作家性:デビューから現在まで音楽的に変化し続けているため、追いかける楽しみがある。

どこから聴き始めるか(導入ガイド)

  • まずは「Guilty of Everything」でバンドの基盤的な世界観を掴む。
  • 次に「Tired of Tomorrow」でプロダクションと楽曲の広がりを感じる。
  • よりロック寄りの演奏を楽しみたいなら「Dance on the Blacktop」へ。
  • ダークで重厚な側面を味わいたいなら「The Great Dismal」が最適。

影響関係とシーンでの位置付け

Nothing は90年代のシューゲイズ/オルタナ世代から強い影響を受けつつ、現代のポスト・ハードコアやグランジ・リバイバルとも接続している点が特徴です。シューゲイズ・リバイバルの旗手の一つとして、同ジャンルの新規ファンを取り込む役割も果たしています。

まとめ — Nothing が提供する体験

Nothing の音楽は「音の厚み」と「メロディの揺らぎ」によって聴き手を包み込み、個人的な感情を大きな音響の中で昇華させます。ノイズの中に漂う繊細な感情、そして時に激しく突き抜ける瞬間――そのコントラストこそが彼らの最大の魅力です。バンドの作品群は、シューゲイズ好きだけでなくオルタナ/ロック好きにも強く訴えかける力を持っています。

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参考文献