Venetian Snaresのレコード完全ガイド:定番から掘り出し盤までアナログ聴取のポイントと特徴

はじめに

Venetian Snares(本名 Aaron Funk)はカナダはウィニペグ出身のプロデューサー/作曲家で、ハードコアなブレイクコアからクラシック音楽的アプローチまで幅広い音楽性をレコード上で展開してきました。本稿では「レコード(アナログ盤)で聴くことを前提」に、初めて買うべき定番盤からコアなファン向けの掘り出し物まで、おすすめのヴァイナルを深掘りして解説します。各作品の音楽的特徴、レコードでの魅力、買うときのチェックポイント(盤の版や収録差異など)を中心に紹介します。

おすすめレコード一覧(先に結論)

  • Rossz Csillag Alatt Született(2005) — クラシック+ブレイクコアの名盤
  • My Downfall (Original Soundtrack)(2007) — 暗く美しいピアノ/ダークアンビエント路線
  • Cavalcade of Glee and Dadaist Happy Hardcore Pom Poms(2006) — 実験精神とバラエティに富む一枚
  • Songs About My Cats(2001) — 早期のブレイクコア/カルト的名作(コレクター向け)
  • Traditional Synthesizer Music(2016)※タイトル系譜に注意 — シンセ主体の近年作(アナログ向きの音像)

選び方の基準(レコード購入前に考えること)

  • 音楽的な「入口」:クラシック寄りか、ブレイクコア寄りかで選ぶ。初めてなら「Rossz Csillag」がおすすめ。
  • パッケージ/プレス:初回プレスや限定色盤は高価だが、音質・価値の面で魅力がある場合が多い。再発はノイズ処理やマスタリング差があることがあるので、レビューを確認する。
  • 収録差異:EPやシングルにしか収録されていないトラックがある場合があるため、ディスコグラフィをチェックする。
  • 曲の成り立ち(サンプリング等):クラシック楽器のサンプルやライブ録音が多用されている作品はアナログでの再生で独特の厚みを得やすい。

Rossz Csillag Alatt Született(必聴)

Venetian Snares の代表作であり、ブレイクコアという枠を超えて広く評価されているアルバムです。ハンガリー民謡やクラシック(チェロ、ヴァイオリン)風の旋律素材をブレイクビート/ハードなリズムと融合させた構成が特徴で、エモーショナルなメロディと破壊的なビートの対比が強烈です。

  • 音楽的特徴:ストリングス風のサンプルを中心にメロディックかつ情緒的。高密度なブレイクビートが絡み、ドラマ性が強い。
  • レコードで聴く価値:アナログ再生では低域の厚みと中高域のストリングスの「空気感」が出やすく、曲の劇性がより伝わる。ダイナミクスの変化がはっきりするため、盤質の良いプレスを選ぶと効果的。
  • チェックポイント:Planet Mu からのオリジナル/再発の盤や、近年のリイシューのマスタリング差を確認。限定カラー盤が出回ることがあるのでコレクターは表記を注意。
  • 代表トラック:アルバム本編の流れ全体が完成度高いが、特にメロディックで入りやすい曲を中心に聴くと良い。

My Downfall (Original Soundtrack)(異色の美学)

2000年代中盤以降、Aaron Funk はブレイクコア以外の音楽性も深めていきます。本作は「サウンドトラック風」と銘打たれたピアノ主体の暗い作品で、従来の激しいリズムは控えめ。陰鬱で繊細、叙情的な側面が前面に出ています。

  • 音楽的特徴:ソロピアノやアンビエント的な音世界。破壊的なビートは希薄で、作曲家としての側面が強調される。
  • レコードで聴く価値:ピアノの残響や空間の描写がアナログで生きる。静かなパートのノイズや針の感覚を気にしない音質環境でこそ真価を発揮するタイプ。
  • チェックポイント:静かな作品のため、背景ノイズが少ない良好な盤状態を選ぶと没入感が損なわれません。

Cavalcade of Glee and Dadaist Happy Hardcore Pom Poms(実験性と遊び心)

タイトルからも分かるように、遊び心と実験性に満ちた作品。ヴェネチアン・スネアーズの多面性が露わになる一枚で、テンポやジャンルの振幅が大きく、聴くたびに新たな発見があります。

  • 音楽的特徴:ハードコア、ノイズ、メロディー、奇抜なサンプリングが混在。曲ごとのカラーバリエーションが豊富。
  • レコードで聴く価値:アナログならではの質感が、曲の多様性をよりダイレクトに伝える。盤を替えながら聴くことでアルバムの異形性が際立つ。
  • チェックポイント:複数の曲調が混在するため、ジャケット・クレジットやトラックリストの表記ミス/差異がないかを確認するのがおすすめ。

Songs About My Cats(コアファン向け・初期作)

初期のブレイクコア/ノイズ寄りの傾向が色濃い作品群を含むタイトルで、コレクターズアイテム的な価値もあります。荒々しく前衛的なビートメイクとサンプル処理は、彼のルーツを知るうえで重要です。

  • 音楽的特徴:変速する拍子、破綻寸前のリズム、残響処理やノイズが多用される。
  • レコードで聴く価値:初期の衝動や粗さをそのままの質感で味わえるため、ブレイクコアの「生々しさ」を体感したい人向け。
  • チェックポイント:初回プレスは枚数が少ない場合が多く、盤の状態と真贋(インサート有無など)を要確認。リイシューと音源差がある場合あり。

近年作・電子音主体のレコード(選ぶ理由)

近年 Aaron Funk はシンセ主体やモジュラー的アプローチの作品も発表しており、クリーンな電子音で構成された盤はアナログの暖かさとシンセの粒立ちが相性良く、DJやホームリスニング双方で使いやすいです。タイトルやリリース形態は流動的なので、Bandcamp やレーベルのリリースページをこまめにチェックするとよいでしょう。

レコードを買うときの具体的チェックポイント(売買前)

  • マトリクス/カタログ番号:オリジナル盤とリイシューの差を確認するため、カタログ番号や刻印をチェック。
  • プレス情報:限定色やダイレクトカット等の特別仕様は値が張るが音楽的価値が高いとは限らない。自分の聴き方に合った盤を選ぶ。
  • 収録フォーマット:一部作品はLPに編集版しか入っていない場合がある。フルアルバムを望むなら12"/2LP フォーマットの有無を確認。
  • 帯域と音圧:ブレイクコアは音圧や高密度の中低域が重要。試聴できる店なら必ずチェックし、歪みや割れがないか確認する。

聴きどころの案内(初めて聴く人へ)

  • エモーショナルな入口:メロディ重視なら「Rossz Csillag」を先に。
  • サウンドデザインを楽しむ:ノイズや極端なリズムに興味があるなら初期EP群や「Songs About My Cats」的作品を。
  • 作曲家としての側面:ピアノ/アンビエント系の作品で彼の別の顔を知ると深い理解につながる。

コレクションの楽しみ方(運用面のヒント)

  • 複数プレス比較:可能なら同作のオリジナル盤と再発盤を聴き比べると、マスタリングやプレスの違いが楽しめる。
  • ジャケットとブックレット:Venetian Snares の作品はビジュアルも個性的な場合が多い。限定アートワークやインサートの有無もコレクションポイント。
  • リミックス/EP群:アルバムの外で発表されたリミックスやEPに未収録の傑作トラックが存在することがあるので、ディスコグラフィを追う価値あり。

まとめ

Venetian Snares はジャンルを横断する稀有な作曲者で、アナログ盤で聴くことで曲の物理的な「重み」や空間表現がより明確になります。まずは「Rossz Csillag Alatt Született」を軸に据え、興味に応じて初期の破壊的作品やピアノ主体の静謐な作品へと広げていくのがおすすめです。レコード購入時はプレスや収録差異をチェックして、自分の聴き方に合った一枚を選んでください。

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参考文献