Altキー完全ガイド:歴史・仕組み・AltGrとAltコードの使い方とトラブル対処
Altキーとは — 基本定義
Altキーはキーボード上の修飾キー(modifier key)の一つで、英語では「Alt key」「Alternate key」と呼ばれます。名称の通り「代替(alternate)」の意味をもち、単独で文字を打つためのキーではなく、他のキーと組み合わせて別の機能や文字を入力するために使われます。一般的に左側に「Left Alt(左Alt)」、右側に「Right Alt(右Alt、国際配列ではAltGrとして扱われることがある)」の2つが配置されます。
歴史と起源
Altキーは個々のコンピュータ・キーボードにおける標準的な修飾キーとして1980年代に広く普及しました。IBM PCおよびその互換機向けのキーボード(1980年代初頭のモデルを含む)で標準化され、以降のパソコン用キーボード設計に引き継がれています。名称は「Alternate」の略で、もともとはキーに別の意味を与える手段として導入されました。
技術的な仕組み(スキャンコード/USB HID/OS処理)
ハードウェアレベルでは、キーボードはキーの押下をスキャンコードとして送ります。PCの標準規格(PS/2やUSB)ではこれらスキャンコードやHID使用IDを通じて修飾キーを識別します。
USB HID仕様におけるキーボード使用(Usage ID)では、Left Altは0xE2、Right Altは0xE6に対応します(HID Usage Tables)。これはOSやドライバがどちらのAltが押されたかを区別するために使われます。
OSはこれらの信号を受け取り、ウィンドウシステムやアプリケーションに「修飾されたキー入力」として渡します。多くの環境ではAltはメニュー活性化やアクセラレータ(ショートカット)に使われます。
端末エミュレータやUNIX系環境では、Alt(またはMeta)キーはしばしば「ESCプレフィックス」を送る(Alt+X → ESC + X)か、8ビット目を立てて送る(古い実装)という形で扱われ、キーシーケンスとしてアプリに伝わります。
Left Alt と Right Alt(AltGr)の違い
外見上は単に左右に2つあるキーですが、用途やOSでの扱いは異なることが多いです。
- Left Alt:一般的なメニュー操作やショートカットに使われます(例:Alt+Fで「ファイル」メニューを開くなど)。
- Right Alt / AltGr:国際配列や多言語入力で第3レベルの文字(例:@, €, | など)を入力するために使われることが多いです。WindowsではAltGrが実装されていない環境ではRight AltがCtrl+Altと同等に動作する場合がある(つまりCtrl+Altと同じ修飾ビットを立てる)。
macOSでは同等の物理キーは「Option(オプション)」と呼ばれ、特殊文字の入力や修飾に使われますが、挙動はWindowsのAltやAltGrと完全には一致しません(キーコードやシステムショートカットの違いがある)。
代表的なショートカットと使用例
Alt+Tab:ウィンドウ切り替え(Windows)。
Alt+F4:アクティブウィンドウを閉じる(Windows)。
Alt+Enter:プロパティ表示やフルスクリーン切替など、コンテキスト依存の操作。
Alt+Space:ウィンドウのシステムメニューを開く(移動・サイズ変更・最小化等)。
Alt+数字キー(テンキー):Windowsの「Altコード」により特殊文字を入力(下記で詳述)。
メニューアクセラレータ/mnemonic:多くのアプリケーションではメニュー項目にアンダーライン付きの文字を用い、Alt+その文字でメニューを直接選べる。
Altコード(Alt+numpad)について
Windows環境で知られる「Altコード」は、Altキーを押しながらテンキーで数値を入力することで特殊文字を直接入力する方法です。運用にはいくつかの注意点があります。
歴史的に、先頭に0を付けない場合はDOSのOEMコードページ(例えばCode Page 437)のコードが使われ、先頭に0を付ける(Alt+0nnn)の場合はWindowsコードページ(通常CP1252など)が使われる、という違いが存在します。
環境やレジストリ設定により挙動が変わること、ノートPC等でテンキーがない場合は機能しないこと、リモートデスクトップ経由での挙動が異なることに注意が必要です。
Unicode入力をサポートするアプリケーションやOSには別の方法(たとえばAlt+XでのUnicode値変換や、Win10以降の「Alt+テンキー(+)」で16進入力を有効にする設定など)がある)
OS別の挙動と注意点
- Windows:Altはメニュー操作やアクセラレータ、Alt+Tab等のシステムショートカットに深く関与します。Right AltがAltGrとして振る舞う場合とCtrl+Alt同等に扱われる場合があるため、キーボード配列に依存します。
- macOS:Altに相当するのはOptionキー。特殊文字入力や一部のショートカットに用いられますが、ウィンドウメニューを直接開くのはCommandキーが主で、挙動はWindowsと異なる点が多いです。
- Linux / X Window:Altキーはウィンドウマネージャのショートカット(Alt+ドラッグでウィンドウを移動)などに頻繁に使われます。端末ではMeta(Alt)送信がESCプレフィックスになることが一般的です。
リマップ・カスタマイズとユーティリティ
業務で使うショートカットを最適化したい場合、Altキーの振る舞いを変更するツールが各OSに用意されています。
Windows:AutoHotkeyなどでAltを含む複雑なホットキーを定義可能(例:Alt+Spaceでカスタムメニューを出すなど)。
macOS:Karabiner-Elementsでキーの入れ替えや修飾キーの挙動変更が可能。
Linux:xmodmapやsetxkbmap、XKB設定でAlt/AltGrの振る舞いを調整できる。
トラブルシューティングのヒント
Altキーが効かない/誤動作する場合は、まず物理的な故障(キーキャップ、接点)を疑う。別のキーボードで試すのが手っ取り早い。
ノートPCではNumLockやFnキーの設定によってテンキー機能が割り当てられていることがあるため、Altコードが使えない場合はテンキーアクセスを確認する。
言語・キーボードレイアウトの設定が合っていないとAltGrで期待する文字が出ない。OSのキーボードレイアウト設定を確認する。
リモートデスクトップや仮想環境では、Alt関連のショートカットがホスト/ゲストのどちらで処理されるかによって挙動が異なる。接続設定やVMツールのキーボード転送設定を確認する。
アクセシビリティとセキュリティの観点
Altキーはキーボードによる操作のしやすさを高める一方、意図しないショートカット実行で操作を中断してしまうことがあります。たとえばAlt+F4やAlt+Tabでアプリが切り替わることで誤操作が起きることがあるため、キオスクアプリや専用端末ではAltキーの無効化やリマップが採用されることもあります。
まとめ
Altキーは「別の意味」を与える修飾キーとしてOSやアプリケーションの操作、特殊文字入力、ウィンドウ管理など多岐にわたる役割を持ちます。左右で機能差があり(Right Alt=AltGrなど)、OSやキー配列、設定によって挙動が変わるため、実務では自分の環境(Windows/macOS/Linux・使用言語)に合わせた理解と設定が重要です。キーが期待どおり動かない場合はハードウェア/ソフトウェア双方を確認し、必要ならリマップツールを利用すると良いでしょう。
参考文献
- Alt key — Wikipedia
- AltGr key — Wikipedia
- Alt code — Wikipedia
- IBM PC keyboard — Wikipedia
- HID Usage Tables — USB.org (HID Usage Tables ドキュメント)
- Virtual-Key Codes — Microsoft Docs
- Meta key(端末でのAlt/Metaの扱い) — Wikipedia
- AutoHotkey — 公式サイト(Windows用カスタムショートカット)
- Karabiner-Elements — macOS用キーマッピングツール
- xmodmap — X Window Systemのキーマッピング(参照)


