サジタリウスの隠れ名作を聴く:Present Tenseを核にサンシャイン・ポップとバロック・ポップの聴き方ガイド

Sagittarius — 太陽光線が生んだスタジオ・ポップの隠れた名作たち

1960年代後半、サンシャイン・ポップ/バロック・ポップの潮流の中で生まれた「Sagittarius(サジタリウス)」は、バンドというよりはスタジオ・プロジェクトとして知られています。プロデューサー/ソングライターのゲイリー・アッシャー(Gary Usher)を中心に、カート・ボーチャー(Curt Boettcher)ら当時の一流のアレンジャーやセッション・ミュージシャンが関わり、緻密なコーラス・ワークと豊かなオーケストレーションを特徴とする作品を残しました。本コラムでは、ディープリスナー/レコード・コレクター向けにおすすめのリリースと聴きどころ、作品ごとの背景を掘り下げて紹介します。

おすすめレコード(厳選)

Present Tense(1968) — 必携の出発点

Sagittarius の代表作にして入門盤。ゲイリー・アッシャーとカート・ボーチャーの関与が色濃く、スタジオで多重録音を駆使したコーラスや、弦楽・ブラスなどの凝ったアレンジが楽しめます。サンシャイン・ポップ特有の明るさと、時に覗くサイケデリックな陰影が同居する一枚です。

  • 代表曲:My World Fell Down — 印象的なメロディと、短い実験的なサウンド・コラージュ(musique concrète)的なブリッジが特徴。
  • サウンドの特徴:多層コーラス、バロック風のストリングス、時にサイケな音響処理。プロダクションの「密度」が聴きどころ。
  • 聴きどころ:アルバム全体を通して流れるアレンジの統一感。単曲ではなくアルバムとしての完成度が高い点。
  • 入手ガイド:オリジナルの1968年コロンビア盤はコレクター人気あり。音質重視ならSundazedなどの良質なリマスター/再発盤を狙うのが現実的。

The Blue Marble(1969)/関連シングル群 — 発展と実験の側面

Debutの成功後に続く一連の作品群では、プロダクションの手法をさらに広げた試みや、異なる制作陣による曲が混在します。アルバムやシングルを通じて、よりサイケデリック寄りの色彩が増した楽曲も見られ、Sagittariusの「幅」を感じさせるリリース群です。

  • 特徴:曲ごとに関わるミュージシャンやプロデューサーが異なるため、多面的な魅力がある。時にフォーク寄り、時に華やかに装飾されたポップが登場。
  • 注目曲:アルバム曲やB面にも名曲が多く、シングル中心で集めるよりアルバムやコンピレーションで一気に聴くことをおすすめします。
  • 入手ガイド:後年の編集盤/コンピにはアルバム未収録曲やシングル・バージョンをまとめたものがあるので、コレクションする際はトラックリストを確認するのが大切です。

コンピレーション/リマスター盤 — まとめて聴くならこれ

オリジナルの単体盤は希少曲や異なるバージョンが存在するため、近年の良質なリイシューや編集盤は「初めて聴く人」にとって非常に有用です。ボーナス・トラックやモノ/ステレオ違い、シングル・ミックスなどを収録したものもあります。

  • メリット:状態の良いリマスターで通して聴ける。解説や未発表トラックが付くことが多く、音楽史的な理解が深まる。
  • 注意点:コレクター視点ではオリジナル盤のアートワークやプレス情報に価値があり、投資的に探す人と聴くために買う人で選び方が変わります。

Sagittarius を深く楽しむための聴き方ガイド

表面的な「明るい60sポップ」だけでなく、細部のアレンジやコーラスの重ね方、録音の質感に注目すると面白さが増します。以下は具体的なポイントです。

  • コーラスの層:複数パートのハーモニーがどのように重なっているかを一音一音追ってみると、スタジオ技巧の巧妙さが分かります。
  • アレンジの対比:弦楽やホーンが突然現れて曲調を変える箇所があるので、その切り替えが楽曲の「仕掛け」として機能することを確かめてください。
  • シングルとアルバム・バージョンの違い:ミックスやフェード、ブリッジの有無などで印象が変わる曲が多いので、異なるバージョンを聴き比べると発見があります。
  • 周辺アーティストと比較聴取:ビーチ・ボーイズ、カート・ボーチャー関連(例えば他のプロジェクト)や同時代のサンシャイン・ポップ(The Associationなど)と並べて聴くと文脈が見えます。

コレクター向けの選び方のヒント

Sagittarius のレコードを集める際は、以下を参考にしてください。

  • オリジナル盤の価値:オリジナル1960年代のプレスは人気があり、良コンディションだと評価が高い。ただし状態と盤質で価格が大きく変わります。
  • リイシューの選択:音質重視なら信頼できるレーベル(例:Sundazed等)のリマスターを優先。解説書きやボーナス曲の有無もチェック。
  • トラックリスト確認:複数のバージョンが存在するため、欲しい曲やミックスが含まれているかを事前に確認すること。
  • 視聴のすすめ:購入前にストリーミングやCDでサウンドやミックスを確認すると失敗が少ないです(特にコレクター盤で音質が劣る場合があるため)。

Sagittarius の位置づけと遺産

Sagittarius は「隠れた名作」として後世に影響を残しました。大衆的なヒット・バンドほどの知名度はないものの、スタジオ技術やアレンジのアイデアは同 era の著名作品と肩を並べられるクオリティです。今日のリスナーやプロデューサーが参照するべき多くのサウンド・デザインを含んでおり、サンシャイン/バロック・ポップを掘る上での重要ポイントと言えるでしょう。

はじめて聴く人へのおすすめトラック順(プレイリスト案)

  • My World Fell Down(代表曲、Sagittarius のエッセンスがわかる)
  • アルバム・リード曲(Present Tense の1曲目など) — アルバム全体の雰囲気を掴む
  • シングルB面や非アルバム曲 — スタジオ実験の側面を知る
  • 複数バージョンの聴き比べ(シングル/アルバム) — プロダクションの差に注目

最後に

Sagittarius の魅力は、豪華な装飾と繊細なコーラスの「バランス」にあります。単なるレトロ・ポップの枠に収まらない実験性と高度なスタジオワークが同居しているため、レコードで聴く価値は高いです。初めて手に入れるなら良質なリイシューで全体像を掴み、その後オリジナル盤や限定プレスを探す、という順番が現実的で失敗が少ないでしょう。

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参考文献