Everything But The Girl(EBTG)徹底解説:結成から現在までの音楽性の変遷と名曲・影響力
Everything But The Girl(エヴリシング・バット・ザ・ガール) — プロフィール
Everything But The Girl(以下 EBTG)は、ヴォーカリストのトレイシー・ソーン(Tracey Thorn)とマルチ奏者/プロデューサーのベン・ワット(Ben Watt)によるイギリスのデュオ。1982年にロンドンで結成され、フォーク、ジャズ、ポップを基軸にした初期作から、1990年代中盤以降のダンス/エレクトロニカ志向へと大きく音楽性を変化させながら、独自の繊細な歌世界を築いてきました。
結成とキャリアの概略
- 結成:1982年、トレイシー・ソーンとベン・ワットがパートナーとして活動を開始。
- 初期の活動:1980年代はアコースティック寄りのサウンド、知的で洗練されたポップ(いわゆるソフィスティポップ/ジャズ的要素)を展開。歌詞は個人的で内省的なものが多い。
- 転機:1994年発表のアルバム『Amplified Heart』に収録された「Missing」は、トッド・テリー(Todd Terry)によるリミックスが世界的ヒットとなり(1995年)、以降ダンス/クラブ・ミュージックの影響を本格的に取り入れる。
- ダンス路線の深化:1996年の『Walking Wounded』でブレイクビーツ/ドラムンベース/トリップホップ的要素を融合したサウンドを確立。1999年の『Temperamental』でもその延長線上の実験を継続。
- 再始動:長い活動休止期間の後、2023年に新作『Fuse』をリリースし、復帰を果たす。
音楽的魅力を深掘りする(ポイント別解説)
1. トレイシー・ソーンの声と歌唱表現
トレイシーの声は、温かく落ち着いたトーンと抑制の効いた表現が特徴です。感情を過度に押し出すのではなく、淡々とした語り口で胸の奥に残る余韻を作るため、聴き手の想像力を刺激します。この「控えめだが説得力のある」歌声が、歌詞の率直さや繊細な感情を際立たせます。
2. リリシズム(歌詞)の誠実さと普遍性
EBTGの歌詞は、恋愛や喪失、孤独や日常の微妙な心情を丁寧に描写します。個人的な体験に根ざしつつ、普遍的な感情を扱うため多くのリスナーが共感しやすい。言葉選びは決して派手ではないが、リアリティと透明感があります。
3. サウンド・プロダクションの変化と柔軟性
初期はアコースティック楽器やストリングスを活かした温かなアレンジが中心でしたが、1990年代以降はベン・ワットのプロダクション志向と外部リミキサーの影響で電子的な質感を取り入れます。「Missing」のヒット以降はクラブミュージックの手法(サンプル、ループ、ブレイクビーツ、低音処理)を洗練させ、ポップなメロディとエレクトロニカ的なサウンドを両立させました。
4. コラボレーションとシーンへの影響
トレイシーは他アーティスト(例:Massive Attackの楽曲での参加など)とも共演し、トリップホップ/ブリストル系やクラブシーンとの接点を作りました。また、EBTGが示した「エモーショナルな歌とクラブ・プロダクションの融合」は、その後の多くのアーティストに影響を与えています。
5. 表現としての一貫性と変化への勇気
EBTGの魅力は、常に本質的な部分(内省的で誠実な歌)を守りながら、音楽的なチャレンジを続けてきた点にあります。ジャンルを変える際も「ポップな歌心」が失われないため、コアなファンと新しいリスナー双方を惹きつけてきました。
代表曲・名盤の紹介(初心者向けに抑えるべき作品)
- Eden(1984):初期のフォーク/ジャズ色が残るデビュー作。彼らの基礎となる繊細な歌世界が垣間見える。
- Amplified Heart(1994):アコースティックで親密な作風のアルバム。オリジナルの「Missing」はここに収録されており、後の転機となる作品。
- Walking Wounded(1996):EBTGの転換点。エレクトロニカ、ドラムンベース、ハウスの要素を取り入れ、商業的にも批評的にも高く評価されたアルバム。
- Temperamental(1999):さらに電子色を強めた実験作。冷たさと情感が同居する、クラブ寄りの作品。
- Fuse(2023):長期の休止後に発表された復帰作。成熟した視点で現代のサウンドと対話する内容として注目を集めた。
- シングル/関連曲:「Missing」(特にトッド・テリーによるリミックス)は彼らを国際的に押し上げた代表曲。またトレイシーが参加したコラボレーション(例:Massive Attackとの共演)は、彼女の存在感を別角度で示しました。
なぜ今も支持され続けるのか
EBTGの音楽は情緒的な真実味、歌の説得力、そして変化を受け入れる柔軟性を併せ持っています。人間関係や孤独を描く歌詞は時代を超えて響き、トレイシーの声はあらゆる編成に馴染む。加えて、電子音楽とポップ・ソングを自然に結びつけた点は、その後の多くのアーティスト/プロデューサーに影響を与えました。長期的なキャリアの中で新しい音に挑戦し続ける姿勢も、再評価と新規リスナー獲得の原動力になっています。
聴きどころ・楽しみ方の提案
- 初めて聴くなら『Amplified Heart』→『Walking Wounded』の順で、アコースティックからエレクトロニカへの変化を体感するのがおすすめ。
- 歌詞に注目して聴くと、日常の細部や人間関係の揺らぎがより豊かに感じられる。
- リミックスやコラボ曲も含めて聴くことで、EBTGの音楽的幅とクラブ文化との接点が理解しやすくなる。
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