Shakti(シャクティ)— ジャズとインド古典音楽の融合を切り開いた伝説のグループとその影響

イントロダクション

Shakti(シャクティ)は、インド古典音楽とジャズ/フュージョンの境界を自在に往来した伝説的なグループです。西洋の即興演奏(ジャズ)的発想と、インド古典のリズム感・旋法(ラーガ/ターラ)を高い水準で融合させ、1970年代の世界音楽シーンに強烈な痕跡を残しました。本コラムではメンバー紹介から音楽的な特徴、聴きどころ、代表作、そして彼らがもたらした影響までを深掘りして解説します。

プロフィール(結成とメンバー)

  • 結成の背景

    1970年代中頃、ジャズ・ギタリストのジョン・マクラフリン(John McLaughlin)がインド古典音楽の演奏家たちと協働することで生まれたプロジェクトです。単なる「融合」ではなく、双方の伝統を尊重しつつ新しい即興様式を構築した点が特徴です。

  • 代表的メンバー
    • ジョン・マクラフリン(ギター) — 西洋の即興技術と和声感覚を持ち込みつつ、アコースティック中心の繊細なアプローチでグループを牽引。
    • ラー・シャンカール(L. Shankar/ヴァイオリン) — インド古典のメロディを担い、声に近い滑らかなフレージングが特徴。
    • ザキール・フセイン(Zakir Hussain/タブラ) — インド古典のリズム体系(ターラ)を体現する名手で、複雑なリズムを自在に操る。
    • ヴィック・ク・ヴィナーヤクラム(Vikku Vinayakram/ガタムなどのパーカッション) — 土着的な打楽器の色彩で全体のテクスチャを豊かにする。
  • 復活とその後

    初期活動後もメンバー各自のソロ活動や協演を経て、後に「Remember Shakti」名義で復活・継続的に活動を行い、オリジナル・アイディアを現代に延長しました。

音楽的特徴と魅力

  • 即興のしかたが異文化融合を生む

    西洋ジャズのコード進行的発想に頼らず、ラーガ(旋法)を根に持つモーダルな枠組みで即興が展開されます。結果としてメロディの自由度が高く、リスナーは「旋律の進化」を追う楽しさを得られます。

  • 複雑かつ身体性のあるリズム

    タブラを中心としたターラ(拍子サイクル)と、ガタム等の口当たりの良い打楽器が絡み合い、単なるビート感を超えた多層的なリズム空間を作ります。ポリリズムや拍子の分割・合流がしばしば起こり、聴くたびに新たな発見があります。

  • 音色とダイナミクスの幅

    アコースティック楽器中心の編成により、静寂〜熱狂までの振れ幅が大きい。繊細なヴァイオリンの音色、パーカッションの土着的な響き、ギターの鋭いフレーズが層をなして動きます。

  • 対話(コール&レスポンス)の妙

    各楽器が“話す”ように応答するインタープレイが見どころ。リード楽器の旋律提示→展開→カデンツァ的な解放、そしてパーカッションによる応答といった会話劇は彼らの演奏の肝です。

  • 伝統への敬意と創造性の両立

    単なる西洋流の消費や表面的な“民族味付け”ではなく、各メンバーが持つ伝統的技術を十分に尊重した上で新しい音楽を作り上げている点が文化的な深みを生んでいます。

代表曲・名盤の紹介(聴きどころつき)

  • 『Shakti』(セルフタイトル作)

    バンドの初期を代表する録音で、シンプルな主題提示から濃密な即興へと発展していく構造が分かりやすく示されています。ギターとヴァイオリンの対話、タブラとガタムのリズムコンビネーションを注目して聴いてください。

  • 『A Handful of Beauty』

    演奏の流麗さと熱気がより際立つ作品で、メロディの歌い回しやリズムの緻密さが冴えます。曲ごとに違うターラ感を味わえるので、リズムの変化に耳を傾けると楽しさが増します。

  • 『Remember Shakti』(復活プロジェクトの録音)

    オリジナル期の精神を継承しつつ、新たなメンバーとのケミストリーで更新されたサウンドが聴けます。長尺のライブ演奏ではテーマの反復から次第に解放される展開を堪能してください。

ライブにおける魅力

Shaktiはスタジオ録音以上にライブで本領を発揮します。演奏時間が長くなることで即興の蓄積が起こり、微細なテンポ操作や間(ま)の使い方、ソロ同士の呼応がより深まります。観客との空気感が音楽に直接影響する点も大きな魅力です。

聴きどころガイド(初めて聴く人へ)

  • 最初は「メロディのフレーズ」と「それに対するパーカッションの応答」を意識すると、曲の構造を掴みやすい。
  • ターラ(拍子サイクル)に馴染みがなくても、アクセントやサイクルの変化を身体で感じると理解が深まる。
  • ギターやヴァイオリンのスライド(微分音的な処理)や、打楽器の微妙な音色差に注目すると文化的背景が見えてくる。
  • 長尺のライブ演奏は「場の呼吸」を味わうことが重要。単なるソロの羅列ではなく、蓄積→解放というドラマ性を楽しんでください。

影響とレガシー

Shaktiはワールドミュージックとジャズの境界を押し広げ、多くのミュージシャンにインド音楽のリズムと旋法の可能性を提示しました。また、異文化間の尊重に基づくコラボレーションのモデルケースとして現在でも参照されます。個々のメンバー(特にザキール・フセインやラー・シャンカール)は、以後の国際的な音楽シーンで影響力を持ち続けています。

まとめ

Shaktiの魅力は、高度な技術に裏打ちされた即興性と、文化的な深さが同居している点にあります。耳で聴くだけでなく身体でリズムを感じ、旋律の動きに身を任せることで初めて、その真価が分かる音楽です。初めて聴くなら、上で触れた代表作を通してスタジオ録音とライブ演奏の両方を体験することをおすすめします。

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参考文献