720pとは何か?基本定義・技術仕様・他解像度との比較・ストリーミング・制作の実務ガイド
720pとは — 基本定義
720p(セブン・トゥウェンティー・ピー)とは、映像の解像度を示す表記の一つで、ピクセル数が横1280×縦720ピクセル、アスペクト比は16:9(1.78:1)、かつプログレッシブ走査(progressive scan)であることを指します。横×縦のピクセル数で表すと 1280×720 = 921,600 ピクセル、約0.92メガピクセル相当です。一般に「HD(ハイビジョン)」の一カテゴリに入り、俗に「HD Ready」と表記されることがあります。
技術的な仕様と背景
720pはHD規格の一つで、放送・制作規格や標準化団体で扱われてきました。代表的にはSMPTE(米国映画テレビ技術者協会)が規定したSMPTE 296Mなど、ITUや各国の地上デジタル放送規格(ATSC、DVBなど)でサポートされています。720pはプログレッシブ方式であるため、1フレームあたりの情報が一度に送られ、動きの速い映像での「コーミング(走査線のズレ)」が生じにくいという利点があります。
表記とフレームレート
「720p30」「720p60」などのように、末尾にフレームレート(fps)を付けて表記することが一般的です。テレビ放送やスポーツ中継では動きの滑らかさを確保するため60fps(または50fps)が使われることが多く、これが720pがスポーツ番組等で好まれる理由の一つです。
720pと他解像度との比較
- 720p(1280×720):約0.92MP
- 1080p(1920×1080):約2.07MP(約2.25倍のピクセル数)
- 4K UHD(3840×2160):約8.29MP(720pの約9倍)
ピクセル数だけを見ると1080pや4Kに比べて解像度は低いですが、実際の視認品質は画面サイズ、視聴距離、映像圧縮方式やビットレートなど複数要素で決まります。小型ディスプレイ(スマートフォンやタブレット)や比較的遠距離から見るテレビでは、720pでも十分に高精細に見える場合が多いです。
プログレッシブ(p)とインターレース(i)の違い
「p」はプログレッシブ走査を意味し、各フレームが全ラインを一度に表示します。一方「i」はインターレースで、1フレームを2つのフィールド(奇数ラインと偶数ライン)に分けて送る方式です。1080i(1920×1080i)のようなインターレースは帯域効率の面で有利な反面、動きの速いシーンでジッターやコーミングが目立つことがあります。これに対して720pは動きの滑らかさと速い被写体追従に強い点が特徴です。
ストリーミング配信とビットレートの目安
動画配信における品質は解像度だけでなくビットレートとコーデック(圧縮方式)で大きく左右されます。例えばYouTubeの推奨エンコード設定では、720p30ならおおむね2.5 Mbps前後、720p60では4.5 Mbps前後を目安にする指針が示されてきました(コーデックはH.264/AVCやVP9などにより差があります)。Netflixや主要ストリーミングサービスは「HD(720p/1080p)視聴には数Mbpsの帯域が必要」と案内しており、ネットワーク帯域や視聴環境に応じて選択されます。
コーデックの影響
同じ720pでも、H.264(AVC)、H.265(HEVC)、VP9、AV1などのコーデックによって必要ビットレートと画質は変わります。新しいコーデックほど同じ画質をより低いビットレートで再現できるため、帯域が限られるモバイル配信やオンデマンド配信では有利です。つまり「720p=画質が劣る」という単純な図式は成り立たず、コーデックとビットレートが重要になります。
視聴距離と画質の体感
視聴者が「粗さ」を感じるかどうかは、解像度だけではなく画面サイズと視聴距離に依存します。一般論として、画面が小さければピクセル密度(PPI)が高く見え、720pでも十分に見栄えが良いことが多いです。一方、テレビのサイズが大きい場合や視聴距離が近い場合は1080pや4Kのメリットが明確になります。リビングルームでの一般的な視聴(2〜3m程度)では、32〜40インチ程度までは720pでも視認上満足できるケースが多い、という実務的な目安があります。
制作とポスプロ(編集)の観点
制作サイドでは、撮影を720pで行うかどうかは用途と最終メディアによります。SNSやモバイル向けの短尺動画、帯域制約のあるライブ配信では720p撮影がコスト・データ量面で有利です。しかし、将来的な再利用(クロップやトランスコード、ポストでの安定した色調補正)を考えると、余裕があるなら高解像度で撮影してダウンスケールするワークフローが推奨されます。また編集作業やエフェクト処理を行うときは素材解像度が低いと劣化が顕著になるため、用途に合わせた判断が必要です。
720pがよく使われる場面
- モバイル端末や低帯域のストリーミング配信
- スポーツ中継など、動きの多いコンテンツ(高フレームレートと相性が良い)
- 古いテレビや「HD Ready」と表示されるディスプレイ向けコンテンツ
- ライブ配信で遅延や回線不安定さを抑えたい場合
720pの将来性と実務的な判断
近年は4Kや8Kへの移行が進んでいますが、ネットワーク帯域やストレージコスト、再生デバイスの対応状況を考えると、720pは依然として有用な解像度です。特にモバイルファーストやライブ配信、ニュース速報など「即時性や低遅延」が重要な用途では、720pのバランスの良さが評価されます。一方、映画や高品位なVOD(ビデオ・オン・デマンド)、広告などでは1080p以上が主流となっています。
まとめ
720pは「1280×720ピクセル、プログレッシブ、16:9」という仕様を持つHD解像度の一つで、動きの速い映像に強く、帯域や処理負荷が比較的抑えられる点が利点です。画質の印象は画面サイズ、視聴距離、ビットレート、使用するコーデックによって大きく左右されるため、「720pは十分か」を判断する際は視聴環境や配信条件、将来の再利用性を考慮して選択するのが良いでしょう。
参考文献
- 720p - Wikipedia
- High-definition television - Wikipedia
- YouTube: 推奨アップロード設定(Recommended upload encoding settings)
- Netflix ヘルプセンター:ネットワークの速度に関する推奨
- ITU-R BT.709(Rec.709) - Wikipedia
- ATSC - Wikipedia


